めんどくさがり魔導士、スローライフのため時間魔法を習得する〜未来に飛んだら魔王になっていたのですが、私のスローライフはどこですか?〜
麦茶ブラスター
プロローグ
最高の夢と最悪な現実
チュンチュン、チチチ……
「お目覚めください、マキナ様」
柔らかな日差しと鳥の歌声、それから家事料理全部出来る超ハイスペ顔が良いスタイル良いメイドの美声によって私、マキナは目覚める。
「う、うーん……ああ、おはようメイド。相変わらず、声が良すぎるね。世界一だよ」
天使の羽根みたいにふわふわの、同時に80人くらいが寝られる超巨大ベッドから私は起き上がった。
「世界一なんてとんでもない。このお屋敷には私のようなメイドがあと99人、イケメンの家事が出来て仕事が出来て性格が良くてなんか全てが良い執事が99人、それからあり得ないくらいもふもふしてて人をダメにするような人なつこい巨大ワンコが999匹いるんですから」
「そうだったそうだった。全く、私は幸せだなあ。最高のスローライフだよ。あっはっは」
今日も畑で野菜を育てながらメイドやもふもふや執事と戯れる素敵な日々が始まる。
「ふふふ」
「あっはっは……」
※
「うーん…むにゃ…あっはっは……」
ギャハハ……キキィィィ……
グギャオオオオオオオオオオ……
『何がおかしいのだろう……じゃなくて、魔王様、お目覚めください!魔王様!』
柔らかな日差しと鳥の歌声……ではなく、闇の炎と魔物達の叫び声、それからひどくしゃがれた暗黒魔道士の声によって、私は半分だけ目覚める。
こっちが現実である。ふわふわベッドなどなく、私は黒いマントを羽織って玉座の上で片足を組んだ状態で寝ていた。せめてベッドで寝かせてくれよ。なんでかったいイスの上で寝なきゃいけないんだよ。
起きたくない。せめて夢の中だけでも、幸せなスローライフを送りたい。
狭い玉座の上で必死に目を瞑り、さっきの幻覚へ戻ろうとした。
『仕方ない……少々手荒な手段を使わせていただきましょう。【
「ちょまっ」
ごおっという凄まじい音と共に、私の全身が黒い炎に包まれた。
「ぅあっちぃ!!!死ぬ!死ぬ!あれ、死んでない」
誇張抜きでめちゃくちゃ熱いが、私の体と衣服は見事に耐えきってみせる。3分ほど燃やされ続け、目はすっかり覚めてしまった。
『お目覚めですか。このやり取りももう29回目ですね』
明瞭になった目の前には、めちゃくちゃ顔色が悪いガリガリの男が立っている。ガリガリ通り越して体が骨になっている。額にデコピンしたらどこまでも吹き飛んでいきそうだ。
『さて、魔王様。昨日の話、忘れたとは言わせませんよ。今こそ宣戦布告の時です!』
そう……今の私は魔王だ。人類の敵だ。本当は、夢の中のようなスローライフを送りたかったのに……
『皆が待ち望んでいます。私のような暗黒魔道士が99人、獣も魚も人も森もなんか全てを食い尽くすレッサードラゴンが99匹、それからあり得ないくらいギザギザして人を無残に串刺しにする凶暴なニードルケルベロスが999匹……』
ああ、なんでこんなことに……
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