第3話(2)

 家に帰ると、母がキッチンで皿洗いをしていた。


 僕はその隣でお湯を沸かし、カップ麺を食べる準備を進める。


 沸くまでの間、暇だからについて聞いてみるか。



「…………ねえ、母さん」

「なに?」

「小学生の頃の写真って、残ってるよね?」



 一瞬、皿を洗う手が止まる。



「………あんたの部屋のタンスに入ってるはずよ。無ければ…………忘れちゃったわ。てか、いきなりどうしたのよ」


 いつもより少し、早口で饒舌だ。


「いや、なんとなく気になってね」

「そう……………」



 気まずい沈黙が走る。

 それを打破するかのように、お湯が沸く。

 僕は、それを早足で完成させて、

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 そう言い、自分の部屋に急ぐ。








 急いでカップ麺を食べ切る。

 夜中に食べるカップ麺が、いちばん美味い。

 カロリーさえなければ………………。


 気を取り直し、僕は部屋のタンスを漁ってみることにした。



 しかし、いくら漁ろうにも、小学生の頃の写真と思われるものは、なにひとつ出てこなかった。あろうことか、卒業アルバムすら、無くなっていた。


 出てきたのは、全て中学生の頃のものと思われるものばかりだ。




 おかしい。





 間違って捨てたか?いや、あんな大きなものを間違って捨てるわけがない。なにより、中学生の頃の卒業アルバムが残っているのが、なによりの証拠だ。

 となると、誰かが意図的に捨てた?でも、一体なぜ?もし、捨てたとしたら、誰が捨てた?


 考えられるのは、身内の人間、もしくは外部犯に絞られる。


 後者の可能性はほぼゼロに等しいだろう。あるとすれば、だけだが。でも、もし、アイツが俺の知らないやつだった場合、部屋に来たとするなら、余程のことがない限り誰かが気がつくはずだ。

 となると、僕の知ってる人間の犯行になる。


 それに、アイツはなぜこの事を知っていたんだ?一体、誰なんだ。




 様々な憶測が脳内を駆け巡る。しかし、どれもこれも、合理性を感じないものばかりだ。



 一気に様々なことを考えた代償なのか、頭に鈍い痛みが生じる。



 とりあえず、考えるのはやめよう。今度、アイツからメールが来た時に、根掘り葉掘り聞けばいいか。




 そう考え、眠りにつくことにした。


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