歌武姫 シスターズ・ハーレム・ナイン 〜転生したら9つ子の妹の兄だった〜
いくつになっても中二病
プロローグ
第1話 神様に、「兄になって」とお願いされました。
死んだ。
俺は死んだ。
あと少しで次に納品する曲のマスタリングが終わるところだったのに。
今の時代、レコーディングからミックス、マスタリングまでを、外注せずに全部一人でこなすなんてイカれてると思う。だが、仕方がない。なにせうちの会社は外注する金などないからだ。
過密スケジュールを組まれたせいもあるが、五徹は流石に無理だったらしい。
いつもなら深夜にやっている妹物のアニメを見ながら作業すれば、あんなに疲労を感じることはなかったのに。今期は妹物のアニメがなかったのが運の尽きだ。
そう、俺は妹という存在に惹かれている。もちろんエロい意味じゃない。純粋に、素敵で、純粋に、かわいい。いや、本当に。
俺は妹が好きだ。
だが、残念ながら現実に妹はいない。
妹がいた友達は「妹? うぜぇだけだって。いらねぇよ? それよか弟がよかったなぁ」なんてほざいてたな。召されてしまえ。天か宇宙か弟の楽園に。
本当の妹がいればどれだけ幸せだろうか。微笑みかけてくれるだけで徹夜の疲れなど吹き飛んだ上に十徹いける体力がみなぎることだろう。
そんな俺の妄想を、妹物のアニメは少しだけ叶えてくれた。
大多数の妹好きのメンズに向けられた言葉だとわかっている。だが、画面と俺の一対一で言われる「お兄ちゃん」は、俺だけのものだった。その瞬間だけは、俺には確かに妹がいたんだ。
でも、それももう終わり。
俺が妹に会うことは……もう、ない。
『あの……』
ほら、なんか声が聞こえてきた。死んだのに。おかしい。絶対おかしい。
それにこの声は妹の声じゃない。この声を発している存在に兄や姉はいない。
『確かにいませんけど』
ほらな。妹の声は大体280Hzあたりの成分が特徴的なんだよ。
『そうなんですか?』
いや、適当だけど。
『
………
妹ではないものに兄と呼ばれる筋合いはないっ!!
『うぅ……頑張って言ってみたのに……どうしたら話を聞いてくれますか?』
話も何も、俺は死んでるんだが。これはなんだ? 死後の世界? そんなの本当にあったの?
『普通はありません。あなたが特別ということです』
特別ねぇ。そんなものはいらなかったよ。俺が欲しいのは妹だけ。もういい? さっさと成仏して来世に期待したいんだけど。
『聞いておいて損はないと思いますが……例えば、別の世界に転生するなら妹が出来ますと言われたら、どうしますか?』
「聞こう」
『わっ! 魂の状態で声を出さないでください! 本当に特別ですね……あなたには、とある世界に転生して頂き、その世界を救って欲しいのです』
そんな話を聞きたいんじゃない。妹は!? 妹はどこに行った!?
『世界を救うよりも妹ですか……あなたは本来生まれる予定ではない子として転生していただきます。その家には5年後に女の子が生まれる予定です。ですので転生していただければ兄として妹が手に入りますよ?』
手に入るだぁ? 随分上からじゃないか。妹は誰の物でもねぇ!!
『す、すみません。それで、よろしければ検討し——』「頼む」『てくださりまっえぇっぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』
何を驚いている。早くしてくれ。
『いえ、絶対ダメなパターンだと思ってましたのでこうもあっさり承諾していただけると思ってもいませんでした……』
妹が出来るんだ。それ以外は——どうでもいいだろ?
『かっこよくはないですよ?』
鋭いじゃないか。格好なんてつけてる場合じゃないんだ! 早くしてくれ!!
『はぁ……頼んでおいてなんですが、お願いしますね?』
あぁ。妹が生まれる世界の一つや二つ、軽く救ってみせるさ。
お、転生が始まるのか? なんかポワポワしてきた。
『本当に信じていいのでしょうか……あ、言い忘れていましたが、あなたが生まれることによって妹が生まれる未来にも影響があるかもしれませんが、それはご了承くださいねぇ〜』
ん? 待て、どういうことだ!! どんな影響があるんだ!!
『もしかしたら生まれないか、弟が生まれる可能性もあるかもぉぉぉぇぁ』
声が小さくなってくぅぅぅぅぅ!! 待って! 大事なことなんだ! 妹が……生まれない可能性があるのくぁぁぁぁっぁぁぁ!?!?!?
一気に意識が遠のいた。どうやらこれが転生というものらしい。
俺は転生する。俺の妹に、出会うために。
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