会社員がTSっ娘になって親友宅に転がり込む話

エイジアモン

1.親友宅に転がり込む

新作投稿にあたり、3話纏めて投稿しています。

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なんとか部屋に入れたので、次は話を聞いて信じてもらわないとな。

そんで俺の住む場所の確保だ。

仕事を始めて新しく住む場所が決まるまで暫く泊めて貰いたい。


俺の名前は遠山 信親(とおやま のぶちか)、端的に言うとTS症を発症して30才から16才になった。

自分で言うのもなんだがロングの黒髪巨乳美少女だと思う。

で、今は親友の羽黒 加那多(はぐろ かなた)の家に上がり込んだ所だ。


◇◆◇


少しだけ前の事。


平日の夜前、俺は加那多にメッセで今から行く事を伝えて、玄関の前にいる。

チャイムを鳴らし加那多を呼び出すと、程なく加那多は玄関を開けて出迎えてくれた。


「来たかノブ、急にどう……ん?……どちら様ですか?……うちは頼んでませんけど」


加那多の表情が一瞬困惑へと変化し、次に無表情に変わる、その表情の変化が面白くて思わず笑ってしまう。


その変化も分かる、同年代の親友が居ると思って扉を開けたら見知らぬ女子高生くらいの女が立っているのだ。俺だって怖いし不気味に思う。

加那多はパパ活もデリヘルもやってないだろうから、そういう反応にもなろう。


俺が笑っていると、それじゃ、と扉を閉めようとするので、慌てて扉を閉められないように押さえる。


「ちょっと待て!俺は信親だ、少し話を聞いてくれ!」

「──はぁ?何を言ってるんだ、どうでも良いから手を離せ。警察呼ぶぞ」


マジで言ってんのか。そんなに嫌なのか、分からんでも無いが。


「待て待て!お前、この状況で警察なんか呼んでみろ!若い女子と30のおっさん、警察はどっちの話を聞いてくれると思う?それにご近所さんがどう見るか考えろ!」


加那多は少し考えて嫌そうな顔をした。


「──何が目的だ」

「ちゃんと話を聞いてくれ、そうしたら分かるから」


「分かった、聞いてやる、話せ」

「お前なあ、此処で話したら不味いだろ、玄関先で女子とおっさんが話し込むとか、それこそ警察呼ばれるわ、冷静になれ、そんで中に入れてくれ」


「入れたら入れたでも問題になるだろうが…」

「入れてくれないとここである事ない事騒ぐぞ」


「チッ……入れ」


露骨な舌打ちと共に加那多は本当に嫌そうな表情で入れてくれた。


◇◆◇


加那多の部屋は1LDK風呂トイレ付きのようだ、まあ一人暮らしだしこんなもんだろ。

しかし俺も一緒に住むとなると少し狭いな。


と、考えながらキョロキョロしているとクッションを渡してきた、コレに座れという事だろう。

加那多はゲーミングチェアに腰掛け、俺はクッションの上にあぐらをかいて座る、スカートじゃないから問題ない。


「で、何の用だ?」


トゲトゲしいなあ、しょうがないとは思うけど。


「俺は遠山 信親だ、1ヶ月ほど前にTS症になった。心配させたくなくてメッセでは伝えてない」

「お前、何で信親を騙ってんだよ、そんな話を信用すると思うのか」

「まあ最後まで聞け」


それから俺は加那多に事情を話した。

TS症で女に、16才になって会社に居辛く自主退職した事、会社の寮住まいだったから近々出ていかなければならない事、次の仕事が見つからない事、住む場所も決まらない事、親にはまだ伝えてない事、頼れそうな友達が他に居ない事。

そして、暫く厄介になりたい事。


加那多は黙って最後まで話を聞いてくれた。しかし


「で?それを信用しろと?お前が信親である事を証明するものは?」


ニヤリ、その言葉を待っていた、証明するもの、それは俺のスマホだ。

顔認証は無理だがパスコードでロック解除は出来る、俺はスマホを取り出しロック解除をして加那多に見せた。


しかし加那多は表情一つ変えずにスマホを取り上げこう言った。


「信親のじゃなきゃ信用したかも知れないけどな、信親のなら俺でも出来る、ほらな」

「え!?なんでロック解除出来た!?俺教えてないよな?」


あっさりと俺のスマホをロック解除した、何故だ!?俺は教えてないはずだぞ!

加那多は小さいメモ用紙をヒラヒラさせながらこう言った。


「手帳タイプのスマホカバーにはカードスリットがあって、そこにメモを入れているってノブが言っててな、それはパスワードの意味ないぞって教えてやったんだが……それは兎も角、とうとう馬脚を表したな、お前が信親のスマホをどこかで拾ってメモを見つけたんだろう」


え、マジで?俺そんな事言ってた?メモの存在も完全に忘れてたんだけど!?

そしてこれは非常に不味い、さらに俺の信用がなくなった、何か証明出来るものは……性癖暴露とか?めちゃ恥ずかしいけどコレしか無い。


「一応言っとくけど性癖暴露とかしても無駄だからな、スマホを見たらある程度の事は分かるから」


確かに!いやしかし子供の頃の事ならいけるんじゃないか?

俺たちは小学校からの長い付き合いで昔からの親友だからな、エピソードには事欠かないぞ。


「まて!子供の頃ならスマホにも入ってないし、証明になるだろ!たしかカナが中学の時──」


加那多の恥ずかしいエピソードを披露していると──。


「分かった!その話はストップだ!」

「お、やっと分かってくれたか、まだまだ話せるぞ」

「分かった!分かったからもういい!お前はノブだ」


やっと信用して貰えたようで一安心。


「しかしノブ、TS症になったんなら証明書を持ってくれば直ぐに解決したのに、なんでそうしなかった?」

「……え?」


証明書?証明書かー……うん、すっかり忘れてた。会社に提出した時以来ずっと使ってないからな。


「……忘れてた」


加那多は呆れたような表情になり、そしていつもの表情で明るく笑った。


「ははっ、ノブらしいな、今、ノブだなって確信出来たよ」

「そりゃ良かった」

「それにしてもノブ、なんだその姿は」

「なんだってなんだよ、自分で言うのもなんだけど若くて可愛いだろ?」


以前の俺は冴えないサラリーマン、よくいる普通の風貌な男だった。

しかし今は若く16才の身体らしい、それに白くて綺麗な肌に背中まである艶々なストレートの黒髪で、なんというか大人しくしていれば何処のお嬢様?って感じだ。まあ中身が俺なんで台無しだけど。


そして服はダボッとした、サイズ大きめの身体の線が分かりにくい服を来ている。

とても可愛いと言えるような服ではないのに顔が良すぎて全体が引き上げられている。


ちなみに加那多はイケメンである、学生時代から結構モテていたけど女性不信でちゃんとした恋人というのはあまり居なかった。

今でもスラッとしてて足が長く見えるし、以前なら羨ましかった。


「顔は良いのにそれ以外がな」

「いやー、あんまり女の子然としたの着るの恥ずかしいだろ、もう30だし」

「分からんでもない」

「だろ、感覚はおっさんだしな」

「そうだな……勿体なくはあるが」


その後はTSしてからの苦労話で盛り上がった。


◇◆◇


さて、そろそろあらためてお願いをしようか。

今日の目的は、仕事が見つかって一人暮らし出来るようになるまで厄介になるお願いをする事。


「カナ、さっきも少し触れたんだけど、お願いがあるんだ」

「一緒に住みたいんだろ?良いよ、俺が面倒見てやるよ」

「良いのか、そんなあっさりと、かなりおおごとなんだけど」


「ああ、ノブなら良いよ。荷物は後日か?」

「そうなるな……それじゃ厄介になるよ」

「ああ。……あーでも、一応言っとくけど、俺は親友のノブだから協力するし面倒も見る。だけど、分かってると思うけど俺は女を信用していない、それは忘れないでくれ」

「おう、分かってるって、てかそういう関係にはならんだろ」

「いやそうなんだけど見た目が女だからどうしてもな……」


加那多は女性不信だ。俺には加那多の心の傷の深さは計り知れない。

母親が浮気を繰り返して突然いなくなり離婚、妹も浮気性で、自身も25才の時に結婚前提で付き合ってた恋人に浮気された。

それまでも女性不信だったけど、恋人の浮気は決定的だった、加那多も彼女は違うと言って付き合っていた、それなのに裏切られた。


あの時は大学の友達やら呼んで慰めたもんだ。


ちなみにそっちのけは無く、ねたは今でも女らしい、拗らせてるのか正常なのか……。


「じゃあそろそろ帰るわ、また連絡する」

「ああ、……って待て、もう暗いし駅まで送るよ、一応若い女だしな」

「良いって別に」

「そういうわけにもいかないだろ、何かあったらどうすんだ」

「わーかったよ、1人で出歩くのにも気を使わないといけないなんて、本当、女って面倒くせえな」


「お前は心まで女になるなよ」

「そのつもりはねーよ」


だけど病院で聞いた話だと、TS症患者は身体に精神が引っ張られるらしく、好みも思考も女らしくなるという、実際に元の性別の同性と普通に恋愛して結婚している、それが普通だと。

そしてそれを証明するかのように俺も女を性的に見れなくなってきている、この間生理が来て、そうなったのを実感した。

このまま行くと男を好きになるとか考えたくもない。


まあ、ずっと加那多に厄介になるわけじゃないし、大丈夫だろうと思うけど。


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