俗界奇譚綴
湾野薄暗
ネックレス
20代女性、Aさんから聞いた話である。
「数年前に付き合っていた彼氏の話なんですけどね。長年付き合ってるし、優しくて気が合うし、そのまま結婚するだろうなと思ってたんです。付き合って 一年目に"結婚前提だから"と小さめの円柱型のチャームがついたネックレスくれてそのネックレスをよくつけてたんです。でもある日…」
そこで彼女が言い淀んだ。
落ち合った時より顔色も悪く見える。
私が「大丈夫ですか?」と問うと彼女は「すみません、大丈夫です。ネックレス…よくつけてたから壊れちゃったんです。 円柱型のチャームがパキッといって。そしたら中から黒い線みたいな物がぱらぱらと出てきて…。ネックレスが壊れたショックと何かが出てきたのにびっくりしたんですがそれよく見ると短く切られた髪の毛だったんです」
「えっ、髪の毛?」と反応すると「はい、1cmぐらいに切り揃えられた髪の毛でした。もう私、びっくりしちゃって彼に電話したんです。そしたら"そのネックレスが壊れたということは君とは縁がなかったんだね"と言って電話を切られました。それからいくらかけても彼に電話は繋がらなくてフラれたんだ…と思いました…」
「 そのネックレスは…?」
「そのまま捨てました。どこに持っていけばいいかわからないし…。 何より気持ち悪いじゃないですか。…これは何となくなんですけど元彼の髪の毛じゃない… 女の人の髪の毛じゃないかなと思ったんです…でも、それから何か悪いことがあるとネックレスをそのまま捨てたからって思ってしまって本当、良くないですよね」私は何も言えなかった。その彼女が首から下げているネックレスは円柱型のチャームが付いていた。
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