第13話 魔剣の力

〜メイベル視点〜

 私はパーティーリーダーのクズモンに足を斬られてゴブリンの囮にさせられた。薄々気付いていたけど、やっぱり入るパーティーを間違えたのかな?

 「な!味方を攻撃するなんて馬鹿なのか!…君!大丈夫?街まで戻れる?」

 それでも最初から戦っていたアーチャーさんは私を心配してくれました。私はすぐに隠し持っていたポーションを飲み干して足の怪我を治しました。

 「大丈夫です!私も、私たちも戦います!」

 私はその場に残って協力することを決意しました。

 「お願い、アリス!」

 「ギャオォ!」

 私がそう声をかけるとずっと一緒にいる家族ドラゴンがゴブリンに爪を振り下ろしました。その爪は何とかゴブリンまで届き、一匹を魔石に変えました。その隙を狙っていたもう一匹の攻撃は私が防ぎ、アーチャーさんは的確に目を射抜きました。それに怯んだゴブリンはアリスの振り回した尻尾に当たり魔石になりました。

 「よ、よかった」

 「ギャギャ」

 私が息を吐いたその瞬間、まるで嘲笑あざわらうかのようにゴブリンの声が響いてきました。しかも、それは一つや二つではありません。それと同時にさっきまでは何もなかったはずの場所に100匹近くのゴブリンが現れました。

 「な!?あれはゴブリンマジシャン!どうして!?」

 そう叫んでいたアーチャーさんの声は私には届きませんでした。

 「…う、うそ」

 私はつい座り込んでしまいました。もう戦う意志も残っていませんでした。そんな獲物を前にしたゴブリンは私に棍棒を振り下ろしました。私は身体が動かない中ゆっくりと近づいてくる棍棒を眺めるだけしかできませんでした。

 ここで死ぬのかな?そう思った私はそれほど怖いと思いませんでした。私には生きたいと思うだけの理由がなかったのです。

 そのことに気付いたとき、私は死を受け入れました。目を閉じようとした……瞬間に金色の大きくて影が私とゴブリンの間に割り込みました。

 「アリス!逃げて!」

 私はそれがアリスだとすぐに分かりました。それから逃げるように伝えました。しかし、アリスは首を振りました。それは私のお願いに対して初めての拒否でした。

 「アリスを助けて!」

 もうアリスが逃げるだけの時間は残されていませんでした。私は生まれて初めて神頼みをしました。私はどうなっても…死んでも構いません。だからアリスだけは、大切な家族だけは助けてください!

 「任せろ!」

 …そんな声は私の幻覚でしょうか?私が目を開けたとき、ゴブリンは魔石に変わっていました。その代わりに真っ黒な剣を持った黒髪の人の背中がありました。それは私にとってとても大きくて頼もしく見えました。

 …これが幻覚、走馬灯ならそれでも構わない。そう思って私は意識を手放しました。アリスは大丈夫、何故かそう確信していました。


〜イツキ視点〜

 救援依頼を受けた俺は急いで目的地へと向かっていた。男の俺はサクラとシンシアよりも少しだけ脚力があったから、先に向かうことにした。その方がパーティーリーダーのアキラさんも無事な確率が高いと思ったからだ。

 俺が目的地に到着したとき、周りには大量のゴブリンがいた。それにへたり込んでしまっている人と、その人に必死に声をかけている弓矢を持った男性。それとへたり込んだ人を守ろうとしている金色の大きな、竜?

 俺は慌てて彼らを守るために駆け出した。それでも、大量の魔物を倒す方法が思いつかなかった。素手の俺は何もできない。スラリンに変身したところで……。

 あれ?素手、スラリン、変身?

 俺はそこでまだ使っていないスキルを思い出した。極限状態だったから気付いただけかもしれないけど、俺はスラリンを呼び出した。そして、まだ使っていなかったスキルを使った。即ち、魔剣化を。

 「スラリン、お願い。魔剣化!」

 俺がそう言うとスラリンの身体が光り輝いた。そして次の瞬間には真っ黒な一振りの剣に変わっていた。それを持ち上げた俺は今まで感じたことのないような力が溢れてくるのが分かった。それはスラリンからの信頼であり、スラリン自身の想いだ。俺はそれを踏みにじっちゃいけないんだ。

 俺はその魔剣を握りしめて彼らのところに駆け出した。へたり込んでいる人の横を通り抜けたとき、「アリスを助けて!」と声がした。少し高いその声に俺は力強く「任せろ!」と答えた。

 そこから竜(おそらくアリス)の元までたどり着いた俺はゴブリンに向かって魔剣を振り回した。すると、目の前のゴブリンは抵抗なく倒すことができた。それどころか、その後ろにいた100匹近いゴブリンたちも刀身が伸びた魔剣によって切り裂かれていた。

 『初めてレベルを持った魔物を倒しました。それにより鑑定(神)を獲得しました。また、自分よりもレベルが上の魔物を倒しました。それにより魔王の素質を獲得しました。また、魔物を5秒以内に100体以上倒しました。それにより吸収収納を獲得しました』

 「…えっ?」

 それは無意識に俺の口から漏れた言葉だった。魔剣の予想外の威力と聞こえてきたアナウンスの数々に驚いてしまった。

 「いっちゃん、大丈夫?」

 「イツキ、怪我してませんか?」

 「ああ、大丈夫だよ」

 俺は追いついたサクラたちにそう返した。そしてアヤたちが待っているギルドに引き返すことにした。しかし、全身を鎧で覆っているアリスの主は気を失っていた。息はあるから大丈夫だとは思うけど、このまま放っておく訳にもいかないだろうな。

 「…よし、サクラとシンシアでアキラさんをギルドに送ってくれ。俺とスラリンでこの人を見ておくから」

 俺がそう言うとサクラとシンシアは心配そうにしていた。それでも最終的には俺を信じて指示に従ってくれた。

 俺は待ってる間に自分のステータスを確認することにした。そこにはあり得ないような強さが記載されていた。

 【イツキ=ウエハラ 性別:男 年齢:17 

LV:2(next:10000)

割り振り可能経験値:13050(ゴブリンlv5→60×60 ゴブリンアーチャーlv5→100×15 ゴブリンナイトlv5→100×15 ゴブリンマジシャンlv5→100×10)

割り振り可能魔石ポイント:3

職業→テイマー(◼︎)

生命力 630→40(+275)×2

魔力  680→40(+300)×2

筋力  580→40(+255)×2

防御力 700→40(+310)×2

魔法力 530→40(+225)×2

精神力 700→40(+310)×2

速力  510→40(+215)×2

総合ランク A

スキル 

・テイミング→魔物を従えることができる。テイム可能モンスター:Eランクまでの全ての魔物

・召喚→自分がテイムした魔物を呼び出すことができる。

・魔剣化→自分がテイムした魔物を武器として使うことができる。それを装備している間はその魔物のステータスが加算され、外すと元の魔物に戻る。その後10時間のクールタイムが必要。(現在の魔剣→スラリンの魔剣:自在に姿、形を変えることができる)

・魔カード化→自分がテイムした魔物をカードにして持ち歩くことができる。カードになった魔物は徐々に生命力が回復する(一分間に最大生命力の5%ずつ)。名前を呼ぶと呼び出すことができる。

・魔物強化→自分のテイムした魔物のステータスを3倍に引き上げることができる。ただし、このスキルの使用中は自分が動くことはできなくなる。

・鑑定(神)→あらゆることを鑑定することができる。それは相手のレベルやスキルも同様で、隠蔽なども見破ることができる。

・吸収収納→自分が倒した魔物が落とした魔石やアイテムを自動的に収納していつでも取り出すことができる。(現在の収納品→魔石:700 棍棒:18 木の弓:6 木の剣:5 木の杖:3 ボロボロの腰布:34 ゴブリンの耳:53)

隠しスキル

・絆テイム→自分がテイム不可能な魔物でも友情が中以上ならテイムすることができる。

称号

・異世界人→全ての言語を理解可能

・魔物の主→自分がテイムした魔物に変化することができる。その間はその魔物が持つスキルを使用することが可能。また、魔物に変化している間はその種類の魔物と意思疎通が可能

・魔物に愛されしもの→取得経験値が減らなくなり、魔物の友情によってステータスが加算される。割合は中→10% 大→50% 超→100%

・魔王の素質→全てのステータスが2倍になり、上限もなくなる】

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