第6話 三人目
俺たちは5日かけてロガルゴ帝国の国境にたどり着いた。その間にゴブリンを6体倒し、ウルフも3体倒した。ウルフもGランクの真っ白い狼みたいな見た目で、素早い動きをしていた。それでも俺たちの方がステータスが高く、危なげなく倒すことができた。そして、ウルフは1体につき2つの魔石を落とした。さらに、真っ白な毛皮もドロップした。
「なぁ、この毛皮はなんなんだ?」
「それは
俺が毛皮について聞くとシンシアが説明してくれた。そのため毛皮を持っていくことにした。
カワラギ王国とロガルゴ帝国の国境には大きな砦があった。そこには2人の騎士が立っていた。
「そこの3人組、止まりなさい!」
俺たちが通り過ぎようとした時に騎士の1人が呼び止めてきた。
「どうしたんですか?国境は自由に移動できるはずですが…」
シンシアが驚いたように聞いた。シンシアも国を出るのは初めてでどうしたらいいか分からないみたいだった。
「はい、人間だけならいいんですが…そのブラッディースライムは?」
…どうやら俺が原因だったみたいだ。
「コイツはスラリンだ。俺がテイムしてる」
「テイマーさんでしたか。では、冒険者カードはありますか?」
「いや、これから登録してもらう予定だ」
「なるほど…では、この
そう言って騎士が持ってきたのは青い水晶のようなものだった。言われた通りに手を置いたが何も起きなかった。
「?何も起きないぞ?」
「はい、もう通っていただいて大丈夫ですよ。ようこそ、ロガルゴ帝国へ」
俺たちはそのまま国境を越えることができた。それから帝国で一番栄えている帝都に向かうことにした。
帝都への道中でスライムを15体倒し、魔石を手に入れた。スラリンをテイムした後から、俺とサクラは11個、シンシアは12個の魔石を使用した。俺の魔石ポイントは13になり、経験値も5070から5450(スライム→10×18、ゴブリン→12×10、ウルフ→20×3)になった。どうやら、俺のパーティーメンバーが倒した分の経験値も入っているようだった。俺は魔石ポイントを10使い、スキルを取得した。
【…割り振り可能魔石ポイント:3…
新スキル
・魔物強化→自分のテイムした魔物のステータスを3倍に引き上げることができる。ただし、このスキルの使用中は自分が動くことはできなくなる。】
そして、砦を出発してから2日で帝都に到着した。俺たちはすぐにシンシアの案内で冒険者ギルドに向かった。
「こちらが冒険者ギルドです。…それでは、早速行きましょうか」
そう言ってシンシアは木製の扉を開いた。外観は二階建ての立派な見た目で、周囲の建物よりも少しだけ高かった。また、盾が描かれた旗が立っていた。中には3つのカウンターがあり、その内2つに行列ができていた。しかし、真ん中のカウンターには誰も並んでいなかった。俺たちは空いているカウンターに向かった。
「すみません。冒険者の登録をしたいんですけど」
「…はい!分かりました。私が対応させていただきます!」
そう元気よく言ったのはウサ耳を持った獣人の女の子だった。まだ10歳くらいで身長が140cmほどで木箱の上に乗っていた。
「!」
俺は初めての獣人に驚いてしまった。
「…やっぱり私なんかじゃイヤですよね。右側のカウンターでも登録はできます」
獣人の女の子は落ち込んだように言った。右側を見るとヒューマン族の女性が受付をしていた。ヒューマン族は皆そちらに並んでいた。左側は筋肉隆々の男性獣人が受付をしていた。そちらにはヒューマン族以外の種族が並んでいた。
「どうして?俺は君にやってほしいな」
「…本当に私なんかでいいんですか?私は亜人ですよ。それに、弱いです…」
女の子の頭に生えているウサギの耳が垂れ下がってしまった。
「そんなの関係ないよ。ごめんね、獣人を初めて見たからビックリしちゃった。可愛いね」
「!あうぅ。ありがとうございます」
俺が褒めると顔を真っ赤にして両手で隠してしまった。…手も小さいからほとんど隠せてないけど。
「…いいなぁ。私たちには可愛いなんて言ってくれないのに」
「そうですよ。私たちも可愛いって言ってほしいのに」
サクラとシンシアが拗ねたように言った。
「ごめんごめん。二人とも可愛いよ」
「…皆さんの関係は?」
獣人の女の子が聞いてきた。
「「彼女(だよ・です)」」
サクラたちはすぐに答えた。
「…そうですか。…では、この紙に必要事項を記入してください」
その答えを聞いた女の子は少し泣きそうな声で言った。俺は何故か読むことができる紙を書いていく中で女の子に聞くことにした。
「なぁ、君のところにはどうして誰もいないんだ?」
「それは私が亜人だからです。ヒューマン族の皆さんには嫌われています。それに、弱い獣人は亜人の中でも差別の対象なんです…」
「…そうか。じゃあ、どうして君は受付なんてやっているんだ?」
「…私の弟を助けるためにはお金がいるんです。…こんな私を受け入れてくれるのはここしかないから」
そう話す彼女はとてもカッコよく見えた。それは歳不相応なカッコよさで、本来なら無い方がいいものだった。
「そっか。君…そういえば、自己紹介もまだだったね。俺はイツキ。君は?」
「私はアヤです。イツキさん、よろしくお願いします」
「私はサクラだよ。よろしくね、アヤちゃん」
「シンシアです。こちらこそよろしくお願いします」
「はい。サクラさんとシンシアさん、よろしくお願いします。」
どうやら女子たちはすぐに仲良くなったみたいだった。
「アヤは強いんだな」
俺は無意識にそう呟いた。
「そんなことありません!私が強かったら冒険者になってもっとお金を稼げるのに…」
「だって弟のために頑張ってるんだろ?すごい立派だよ」
俺はそう言いながら無意識にアヤの頭に手を伸ばした。
「やめてください!…私に優しくしないで」
それは明確な拒絶だった。アヤは怯えているみたいだった。その声色には必死な様子があった。
「…ねぇ、アヤちゃん。アヤちゃんもいっちゃんの彼女になる?」
サクラは何かに気づいたように突然そう言った。
「…私なんかじゃ釣り合わないよ」
その答えには俺の彼女になることへの嫌悪感は無いように感じた。
「…いっちゃんは?アヤちゃんが一緒じゃイヤ?」
サクラは俺にも尋ねてきた。
「?そんなわけないだろ。アヤが望むなら俺はいいぞ。…まぁ、しっかりと支えられるようになってから、だけどな」
「私もアヤさんとなら仲良くなれると思います!」
シンシアは聞かれる前に話した。
「…私なんかも彼女でいいの?もう我慢しなくていい?」
アヤがそう聞いてきたから俺は大きく頷いた。するとアヤは目に涙を浮かべて身を乗り出した。俺はそのままアヤを抱きしめた。
「よく頑張ったね。もう無理しないでいいよ。俺が守るから」
「…うん!」
そう言って微笑んだアヤはとても可愛かった。…それにしても、小学生くらいの女の子が彼女なんて…考えるのは止めよう。
「ロ〜リコン♪」
「グハァ!」
サクラは容赦なく言ってきた。
「…私にも興奮してくれるかな」
サクラは自分の胸が小さいことを気にしているみたいだった。…そんなこと関係ないのに。俺はサクラの頭を撫でてあげた。
「…私も撫でて?」
アヤも上目遣いで言ってきた。俺はリクエスト通りに撫でてあげた。
「はわぁ〜。幸せ〜」
アヤのシッポもフリフリと揺れた。
「…」
シンシアも羨ましそうに眺めていた。俺はサクラを撫でていた手でシンシアも撫でてあげた。…みんなに我慢させないためにはどうすればいいんだろう?
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