天空に居座る魔神
ふにえる
最初に・・・
魔神の周囲
「なぁ、知ってるか?最近、天空領で魔神の発見がされたって」
「魔神のジンって神の方か?」
「あぁ、それもSランク冒険者が根を上げるほどらしい」
「うわぁ、そりゃ即刻国も対応しないといけないなぁ」
ある1つの国、ムギア帝国の冒険者ギルドでそんな噂が流された。
天空領・天使族によって支配されている天空の地で、無駄に人族を嫌い煙たがる。
天空領自体も危なく、ランクの高い魔物がはびこっている。
その分、冒険者ギルドなどではとても稼げる場所であり、死亡率が高い場所。
そして、この世界で最も景色が美しい場所としても有名である。
そんな場所、天空領に普通はいる訳のない魔神がいると。
魔神と魔人、両方魔族と呼ばれる種族であり地下帝国に国を広がらせている国である。
魔人よりも魔神の方が位が高く、本当に同じ種族か疑うくらいに強い。
こちらも人族を嫌い、見つけ次第殺すような場所だ。
また、天使と魔族も仲が悪く、会えば血相変えて殺し合いが始まる。
そんなことがある魔族は、よほどのことがない限り地上へと現れない。
天空領なんてもってのほかである。
しかし、今の天空領には、1人の魔族がいる。
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美しく、近くに見える太陽に、心を和ませてくれる小鳥のさえずり。
見える川は汚染の気配もなく、所々飛んでいる天使たちは仲良く話し合っている。
しかし、天空領の森の奥底。
何匹もの生物たちが逃げまわっている。
「ゴォォォォォォ!」
1匹の魔物『
鳴り響く轟音は森の木を揺らし、見た者を気絶させるほどだろう。
しかし、そこには1人の化け物が存在する。
『
迷うことなく、森の木を素早くよけながら駆けてくる。
その駆ける音は、魔神とは思えない小さな足音。
1歩1歩が丁寧に踏み込まれ、地面をける足は無駄がない。
紫色のローブを羽織り、白と黒で別れているお面。
肩から腰に掛けて背負われている全長1.6m近くの真っ黒な棒。
そして、見ただけでもわかる強者感。
それこそが、正しく見せられる魔神である。
魔神は大きく一歩踏み込み、『天空を巣食うトカゲ《バジリスク》』に向けて棒を一突き。
グシャ、とグロい音が鳴るとともに、『
しかし、その痛みのことを考える暇が無くなるくらいの速度で右側頭部に一振り。
右足に1突き、左腹1薙ぎと徐々に戦闘不能にしていく。
そして、出血と激しい痛みに耐えきれなくなった『
魔神は一息ついて、棒を収め、仮面を取った。
「はぁ、やっぱりこの領の魔物は弱いのが多いなぁ。この俺でも時間をかければ倒せるレベルだからなぁ」
独り言をつぶやく魔神、追放された人族は、汗で湿った髪の毛をかきあげた。
魔神は倒した『
魔神は洞穴のような場所に移動していき、ある一定の壁の前で止まった。
すると、手を前に出して詠唱を始めた。
「今ここにある道よ、今こそ偽りの仮面を外し、本当の道へと導きたまえ、『
すると、魔神の前に合った壁が徐々に消えていき、明るく光る道が現れ始める。
魔神がそこを通ると、その壁はまた壁と化し、道を化かした。
魔神は、奥にある空間へと歩みを止めず、空間に着いた瞬間にある言葉を放った。
「ただいま」
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」
返事を返したのは、これはまた珍しい
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ムギア帝国の城の一室。
何人もの異世界人が戦闘訓練に勤しんでいた。
騎士団を使って剣の訓練や、学者を使って国の座学を学ぶ。
とても面倒くさい作業でもあるが、異世界人は嫌な顔を1つ見せずに精を尽くしていた
「木村っち、いつまでも篠本君のことを気にしてたら埒が明かないよ」
「そうなんだけど、やっぱり気になってさ」
「転移したのもう1年前でしょ?」
「それでも、篠本君はまだ生きているって、思っちゃうの」
「…………そっか」
女性寮の一室、そんな会話が繰り広げられていた。
転移して約1年、追放された篠本小路のことが気が気でならないのは木村一花。
彼と彼女は仲が良く、静かに過ごしていた篠本の生活を彩ってくれていた。
彼女がいたからこそ、篠本はクラスに馴染めたといっても過言ではない。
彼女から篠本への交流を進め、クラスメイトは篠本に負の感情を抱くことは全く持ってなかった。
しかし別れは突然訪れるものである。
クラスで話していたら突然クラスの下に魔法陣が展開されていた。
もちろん、何人も教室外への脱出を試みたが、窓も扉もびくともしなかった。
魔法陣が完全に光を放つと、気づけば王宮の部屋にいた。
そして、転移から三日目。
理由は分からない。
篠本が消えていた。
国王からは、彼は異世界の生活に慣れなかったのだ。
彼は王宮から出ていった。
我々も捜索を始めている、と。
クラスメイト全員が、追放されたことに気が付いた。
でも、篠本はどこに行ったのかすらもわからずじまい。
結局、クラスメイトは悲しむことで終わっていた。
「木村っち、篠本のこと好きだったもんねぇ」
「そ、それは違う!」
「今、みんなはこれ以上追放されないように頑張っているのに、篠本君のこと気にしてるの木村っちだけだよ」
「それは、仲が良かっただけであって」
「それにしてはいつも篠本君のこと見るときはメスの目してたよ~?」
「っ!…いじわる」
「はいはい、でもこれ以上気にしてたらまた大切なものを失っちゃうよ」
最後に、重い重い言葉が木村の心にのしかかった。
確かに篠本が死んでしまっていることが有力だが、昔っから身近な人が死ぬという経験が全くない木村は、篠本が死んだという事実を受け止められなかった。
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「今日は、あの魔神との取引だ」
「はいはーい!私行きたーい!」
「お前は駄目だ、絶対にへまをするからな」
「え~」
天使族の集まりが、取引を誰が行くと話し合いを始めた。
1人だけ、自ら行きたいと名乗りだしたが、リーダーらしき者はそれを許さなかった。
頬を膨らませながら、え~と文句を垂れる。
机に突っ伏したまま涙目になる天使の子を見ると、リーダーは「うっ」と声を挙げながら、仕方ないと声を上げた
「しょうがない、今日だけだ」
「ほんと!?」
「その代わり、絶対に向こう側に危害を加えるのな」
「私はお兄さんに危害を加えるつもりはありませーん」
当たり前だと声を上げ、手を挙げて喜びをあらわにしている天使。
背中についている真っ白い翼、小さくてかわいい翼は大きくばたつかせ、興奮をあらわにしている。
そして、頭の上にある金のリングも回っている。
「とりあえず、次の魔神との取引は私も同行する」
「え~、リーダー居るとめんどくさいじゃ~ん」
「貴様はまだあそこの森の魔物を倒せるほどの力を持ち合わせていないだろう」
「それは大型モンスターだけですぅ、獣くらいだったらワンパンですぅ」
「異議は受け付けない」
キリッとした目つきで天使を睨みつけると、シュンと体をすぼめた。
ハァとため息をつきながらも、別にリーダーのことを嫌っているわけではない。
「ともかく、善は急げだ、早速行くぞ」
「は~い」
リーダーは大きな槍を持ち、天使は大剣を担いだ。
リーダーの槍は細く、突くのに特化しており、天使の方は全く似合ってもいない。
これは、1つの国が発動した勇者召喚によって始まった。
今後を考えていない王によって起こった不祥事。
世界最強の魔神が生まれた瞬間である。
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読んでいただきありがとうございます。
新作を書くか悩んでいたんですが、書くことに決定しました。
書きだめはないので投稿は不定期ですが・・・
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