二章②
一時間半ほど歩いたところにある
数日前に降った雨の
大きな石の上に移動したセドリックはその様子を珍しそうに見ていた。
「それはなんだ?」
「ポプラです」
「ふうん、丸い葉の方は摘まなくていいのか?」
「ええ。ポプラは若芽を使います。すりつぶして
せっせと薬草を摘むアメリアの手つきには迷いがない。
「そういう
「在学中の論文や学会発表なんかもそれがメインでしたしね」
雑用まがいの仕事や、町で薬を売っていることなど知らなかったセドリックは、アメリアを単なる研究馬鹿だと思っていたらしい。
「……聞いてもいいか?」
「どうぞ?」
「お前の母上のことなんだが……、病で
セドリックは言いにくそうに小さなお手手を動かしている。
「ええ。そうですよ。
「お前の論文は何度か読んだことがある。研究している薬のほとんどは特効薬ばかりだな。つまり……」
流行り病は初期に適切な薬を服用すれば助かることが多い。
整った環境で医者の
アメリアが力を注いでいるのは、極力安価で、早く、よく効く薬の開発。
「つまり……、お母上のような方を出さないための研究だったんだな」
アメリアは手を止めた。
エリザに習った滋養強壮剤はよく効いたし、顔色の良くなった母を見た人が「自分にも売って欲しい」と効果を広めてくれたことでちょっとした商売にもなった。
だが、流行り病に関しては──滋養強壮剤ごときではどうにもならない。
アメリアには
薬草を見分けられても、どれとどれを組み合わせれば効果が出るのか、特効薬が作れるのかまではわからなかった。当時のアメリアではどうすることもできなかったのだ。
「……そんな大層な志じゃありませんよ」
ふい、と顔を逸らしたアメリアは登れそうな木を探す。
──母亡き後、アメリアの元にパーシバル家の使いが現れ、父だという人と引き合わされた。下町に出回る「よく効く滋養強壮剤」の
そしてアメリアも──あの時、母が「誰か男の人から薬の作り方を教わったのか?」と聞いてきたのは、アメリアの父親が薬師だからだったのかと察した。父がアメリアに
だが、アメリアに薬作りを教えてくれたのは
エリーザベト・F・パーシバル。
父だと名乗った男に「今さら貴族として暮らすつもりなんてありません」と突っぱねられなかったのは、その家名に
エリザから与えられた薬草を
(せめて、あと数か月早く父が来てくれていたら良かったのに)
そうしたら、母を助けられたかもしれなかった。
(……でも、そんなことを言ったってどうしようもないわよね)
引き取られた時にアメリアは決意したのだ。めそめそと悲しむくらいなら、パーシバル家にある蔵書を
その結果、自分の
アメリアはセンチメンタルな気持ちを振り
何度も登ったことがあるので要領は心得ているのだが、慌てたリスに止められた。
「お、おいっ、まさか登るつもりか!?」
「慣れていますから平気ですよ」
「いや、危ないだろう! 俺がやる!」
そう言うなり、セドリックは幹を
「これを採ればいいのか」
「……ええ、そうです」
頷くと、枝からひげのように垂れ下がる
「これはなんだ」
「サワグルミですよ。クルミと名がついていますが、私たちが知っているあのクルミの実はなりません」
「ふうん……」
「あ、もうじゅうぶんです。ありがとうございます」
セドリックはついてきたはいいが、やることがなくて
(あれこれ昔のことを聞かれるよりは、作業を手伝ってもらおう)
高いところの作業をこなしてもらいつつ、二人は下流の方へと移動していく。
開けた場所には花畑が広がっている。薬用の花に交じって色とりどりの花が咲いている
「いいところでしょう?」
セドリックに向かって
「あ、ああ。そうだな。静かで、
「愛でる? 何言ってるんですか、引っこ抜いて帰りますよ」
白い花をつけた植物を地面から抜く。
「ほら、見てください。立派な根です。水が綺麗だから良質な材料が採れるいいところなんですよ」
「…………。お前にロマンチックさを期待した俺が馬鹿だった……」
「あ、マグワートです。これも摘んでいきましょう」
「はあ、これはなんの薬になるんだ」
「これは
「惚れ……っ、え? は?」
「あ、すみません。言葉が足りませんでした」
惚れ薬を飲ませられるのかと
「古くから
マグワートは表は
花は少し毒々しさを感じる
「『九つの薬草の呪文』、ご存じありません? マグワート、アトルラーゼ、スチューン、ウァイブラード、カミツレ、スティゼ、ウェルグル、フェンネル、タイム。大昔から伝わる魔女の秘薬に必要な材料です」
「……知らない」
「つまり、
アメリアはぽいぽいとバスケットに花を入れていく。
マグワートは匂いがきつい。すんすんと鼻を動かしたセドリックは
「本当ならもう少し足を延ばしたかったんですが、急がないと一雨きそうですね……」
天気は下り坂になってきている。
適当なところで切り上げたアメリアは雨が降り出す前に帰ることにした。しかし、帰路の
「通り雨でしょうか」
「おそらくな。どこかで雨宿りをしていった方が良くないか?」
「でも……。急げば帰れそうな気もしますし……」
ぽつぽつがパラパラに変わり、アメリアとセドリックを濡らしていく。
ここから一時間以上ある帰路を歩くのはさすがに
「あの木の下で雨宿りをしましょう。少し走りますので、落ちないように中に入っていただけますか」
薬草でいっぱいのバスケットにセドリックを入れ、アメリアは走った。
太い幹の木の下に
「セドリック様、大丈夫ですか?」
「……キュ……」
弱々しい鳴き声がバスケットの底から聞こえた。走っているうちに薬草のジャングルに
「キュウ、キュー……」
「ああ……。薬草の匂いに鼻をやられたんですね。ちょっと待ってください、今
持ち歩いているサンザシの薬を指先に付け、セドリックの口元に運んでやる。
小さなリスの舌で薬を舐めとったセドリックは
「寒いんですか?」
「……わからん。匂いに
もしも人間の姿だったら青ざめていただろうという表情で口元を押さえている。リスの飼育方法など知らないアメリアは心配になった。
「身体を冷やさない方がいいかもしれませんね。私の服の中に入りますか?」
「は?」
「服の中です。
マントは濡れてしまっているし、手で温めてやろうにも雨で濡れたアメリアの手は冷え切っているのだ。
「ばっ──馬鹿か、お前は! そんなことできるわけないだろう! お、お前には
「寒さで死んでしまっては元も子もないかと思ったので……。元気ならいいんですが」
「元気ではないが、これくらいなら
セドリックがぷんぷん
かと思うと、それはものすごい質量をもってアメリアにのしかかってきた。
地面にひっくり返ったアメリアに
「え……」
アメリアは目を見開いた。
「セ、セドリック様……?」
元の姿に戻っている。
金の髪は頰に張り付き、濡れた雨水が
「な、なんだ? はっ、アメリア!」
アメリアを
「も、戻った?」
「戻りましたね」
「っ、すまない! 大丈夫か!」
セドリックは慌ててアメリアを起こしてくれた。
たどたどしい手つきで泥を
「なぜ戻れたんでしょう? セドリック様が飲んだという毒物の効力が切れたんでしょうか」
「わからん」
「ともかく、良かったですね。これで
「あ、ああ……」
「……? セドリック様?」
なぜか浮かない顔をしている。元に戻れて
「アメリア、これまでお前につらく当たってしまってすまなかった」
「……」
「俺はお前のことをずっと誤解していた! リンジーやキースたちの言う悪口を
ぎゅうっと抱きしめられたアメリアは目を
「アメリアさえ良ければ、だが」
身体を離したセドリックは
「すぐにでも俺の元に
「……セドリック様……」
「それに、お前のことをもっとよく知りた──っくしゅん!」
「!」
くしゃみをしたらセドリックが消えた。
……いや、いた。アメリアの
つぶらな瞳で小さなお手手を見つめて
「なっ……なぜだ……」
「なぜでしょうね」
「戻れたんじゃないのか!? どうなっているんだ! おいっ!」
「私に聞かれてもわかりませんよ」
「く、くしゃみか!? くしゃみをしたのがいけなかったのか!?」
人の姿に戻れたのはほんの
もう一度くしゃみをしてもセドリックの姿が再び元に戻ることはなく、アメリアは絶望に打ちひしがれるセドリックを
──すぐにでも嫁いでこい、などと言われたがそんな日は当分先のようである。
*****
中からはごそこそと物音がした。
「……?」
立ち止まったアメリアの
「……隠れていてください」
セドリックをバスケットに押し込み、アメリアは意を決して部屋の扉を開ける。
「あ、姉さん。おかえり〜」
部屋の中にいたのはキースだった。
彼の手にはアメリアがメモ代わりにつけているノートがある。
室内は本やメモ書きが散乱しており、材料をしまってある
「キース、何をしているの?」
「ん? 研究がはかどらなくって、姉さんの部屋で調べもの〜」
愛らしく笑った弟はぺらぺらとアメリアのノートをめくり続けた。
「これ、エンザ
そしてそのままノートを持っていこうとする。
アメリアは慌ててキースに追いすがった。
これまでに似たようなことは何度もあったし、アメリアが何を言っても
「待って。返して」
その特効薬の研究にはずいぶんと時間がかかったのだ。
アメリアの中では思い入れも強く、そうやすやすと渡せるものではない。
服を引っ張って止めたアメリアの姿にキースはきょとんとしていた。
「聞き
「……言ったわ」
「生意気だよ、姉さん」
キースの瞳に
ここ一年でぐんと背が伸びた弟の身長はアメリアとほとんど変わらない。追い抜かされてしまうのはあっという間だろう。現に、
キースはアメリアを押しのけた。
「返すわけないじゃん。こーんなおいしい研究データ。学会で発表したら称賛の
「その調薬法はまだ不完全なの」
「そっか。じゃあ、続きは僕の方で研究しておくね?」
「返して」
ノートに手を伸ばしたアメリアだったが──バチッと激しい音がして、バスケットを落としてしまう。キースに頰をぶたれたのだ。落ちたバスケットから薬草がこぼれた。
「あのさあ、何回言ったらわかるの? この家の物は──全部──僕の──物なの」
一音一音に平手が乗せられる。
アメリアは思わず顔を
「生意気なんだよ、
「キース、やめ……」
キースが顔を上げて棚の方を見る。
その顔面に、いつの間にか高所に登っていたリスの
(セドリック様!?)
「いっ、たぁああっ、何するんだこのリスッ!」
キースは顔を押さえてよろめく。
だが、たかがリスの蹴り一発。
腹を立てたキースは、着地したリスの尻尾を
「セ、……ッ!」
「姉さんってばいーけないんだ。ペットは飼っちゃダメって母さまに注意されたでしょ?……次に見かけたら、毛皮を
駆け寄ったアメリアは慌てて本をどけた。セドリックはぐったりと横たわっている。
「セドリック様! しっかりなさってください!」
「……平気だ」
「ほ、骨、折れていませんか? 内臓とかっ……」
こんなに小さなリスの身体では何かあったらすぐに死んでしまいそうだ。
「俺のことはいい。お前こそあいつに
「私は平気です。慣れていますから」
別にどうということはない。しかし、起き上がったセドリックの瞳は怒りに燃えていた。
「──慣れるな!!」
「慣れるな、こんなことに! どう考えても悪いのはあいつだろう!」
「…………」
そんなことはアメリアだってわかっている。
わかっているけどどうしようもない。今に始まったことではないのだ。
ぎゅっと
「……痛みや吐き
「アメリア」
「すぐに、打ち身に効く
「俺の事なんかどうでもいい! エンザ症の特効薬は、お前が亡くなった母親のような人を出したくなくて作った薬なんじゃないのか! 今すぐ取り戻しに行くぞ!」
「無理ですよ」
「無理じゃない! そうだ、すぐに公爵家に
「こんなことで公爵にご
「そうやって諦めてしまうからキースがつけ上がるんだろう!」
怒り心頭のセドリックは
セドリックが
そうだ、どうせ何をやってもキースの功績にされるのに……、「返して」と追いすがってしまって叩かれ損だった。アメリアは
(先に……部屋の片付けをしようかな)
部屋もずいぶん散らかってしまった。
積んできた薬草は、キースが
「聞いているのか、アメリア!」
聞いている。
「本当は
セドリックは元気そうだ。良かった。そんなにも怒鳴れるなら大丈夫だろう。
人に戻れた姿の時は
強気で、
「いいか。このままで済ませるべきじゃない」
だが、そろそろうるさいなあ、と思った。
アメリアは慣れているのだ。
ちょっと乱暴に
こんな風に強く握ったら
アメリアは
セドリックがうるさいのだ。こっちが必死で落ち着こうと気持ちに
「お前がこれ以上不当な扱いを受けるのを、俺は見たくな──」
「──言ってどうなるっていうの!!」
気付けば
指先は怒りで震えていた。
「私がこれまで何もしなかったとお思いですか? キースから取り返そうと
セドリックの言うことは正しい。
だけどそれは、きちんと意見を通せるだけの発言力がある人の考えだ。
「キースが悪いことをしていることくらい、私だってわかっています。お父さまやお
悔しいと
だからアメリアは諦めた。
どうせ奪われるのなら、
悔しい気持ちに蓋をして、研究や仕事に没頭する。何も感じない、気付かないふりをして、
引き取ったくせにいじめを放置する父にがっかりしなかったと言えば噓になる。
でも、もう助けなんて期待しない。家族とわかり合いたいとも思わない。
それがアメリアの心と暮らしを守る方法だったのに。
「私のことを知ろうともしなかったくせに、今さら偉そうなことを言わないで!」
そこまで怒鳴ったアメリアはハッとした。
セドリックはびっくりした顔で固まっている。
「……お前も、そんなふうに怒るんだな」
激しい
「……すみません、私……」
こんなことを言うべきじゃなかった。
ただの八つ当たりだ。怒るべき
自分はこんなに我慢していたんですと
「私、私……、あ、頭を冷やしてきます」
いたたまれなくなったアメリアは小屋を飛び出した。
「アメリア! おいっ!」
アメリアは走った。
やみかけていた雨は再び降り始めていたが、すでに濡れているから気にならない。
パーシバル家の門を出たアメリアはそのまま足を進める。薬草
(飛び出してきたって、結局帰らないといけないのに……)
引き取られたばかりの頃は、パーシバル家を出て行こうかと何度か考えた。
だけど、現実は厳しい。
市井で暮らしていたアメリアは貧乏暮らしも経験していた。
お金を稼ぐのは難しいことだ。
そして、アメリアがお金を稼ぐ手段といえば薬を作ることくらいしかない。街で薬を売っていればすぐにパーシバル家の耳に入り、連れ戻されるだろう。それは
ならばと名を上げられるように勉学に力を入れた結果、父やキースに利用されることになった。名誉や謝礼金を奪われる度にアメリアは段々どうでもよくなっていったのだ。
(戦うのって、それ相応のエネルギーがいるのよ)
流されて暮らす方が楽だと気付いてしまった。
戦え、言い返せ、と高みから簡単に言ってくれるセドリックに腹を立てたが、彼に怒ったところでどうしようもない。戻って謝り、また何事もなかったかのように暮らそう。
アメリアが薬を作らない限り、セドリックだって行くところがないのだから……。
「アメリアッ!」
道の真ん中でぼけっとしていると誰かに腕を引っ張られた。
「え、セドリック、様……?」
なぜまた人の姿に戻っているんだろう。
戸惑うアメリアをセドリックはぎゅっと抱く。
「どこに行くつもりだ、こんな雨の夜に……。危ないだろう!」
どこにも行くところなんてない。
そんなことはセドリックだって知っているくせに……と皮肉を言いたくなったが、抱きしめる腕からは心配してくれている気持ちが伝わってきた。
心配してくれている?
……そんな人、亡くなった母以外にはいないと思っていた。
「悪かった。お前の言う通りだ。これまでお前のことを知ろうともしなかったくせに、一方的にああしろこうしろと言われたら……怒るよな」
「…………」
共感されて、ぐっと
「助けたいのに助けられないことがもどかしかったんだ。頼む、いなくならないでくれ」
「……私がいないと、元の姿に戻れなくて困りますもんね?」
可愛くないことを口にすると、
「ああ、困る。リスの姿ではキースをぶん
押しのけようとしたが、セドリックの身体はびくともしなかった。
アメリアのささやかな
「怒ってくれてありがとう。アメリアの気持ちが知れて良かった」
セドリックがこれまでのことを
自分の気持ちを誰かにぶつけるなんていつ以来だろう。
こんなふうに同情して、寄り添われることを本当はずっと求めていたのかもしれない。じわっと何かが目元に
「アメリア……」
ほっとしたようなセドリックの声。
と、同時に急に焦り出した。
「あ、ああ、その、すまない。思わず抱きしめてしまったが……」
何をするにも自信満々だった人間のセドリックと、
そんな様子はアメリアにとって好ましく思えた。
くすっと笑ってしまって
しかし、次の
「きゃあっ!」
「うわあっ!」
転んだアメリアの側にはリスが転がっている。
またもや一時的に元の姿に戻れただけらしかった。
「くっ、また……! アメリア、大丈夫か!?」
「ええ、だ、大丈夫です……」
転ぶほどセドリックに体重を預けていたことが恥ずかしかった。滲んでいた涙は雨がすっかり洗い流してくれている。
「……帰りましょうか」
「……そうだな」
水たまりの中、アメリアはリスに手を伸ばした。
小さな身体を抱いてやる。セドリックは
「女に抱かれるなんて格好悪いな」
「仕方ないですよ、リスなんですから」
「お前が小動物になってしまえば良かった。そうなったら誰にも手出しさせないのに」
「なに……言ってるんですか。リスのくせに」
雨でしぼんでしまった
ずぶ濡れになりながら歩いていた一人と一匹だが、たいして移動しないうちに一台の馬車が止まった。
「レディ、大丈夫ですか!?」
馬車を降りた親切な男性が声を掛けてくれたのだ。
「あ、すみません。大丈夫です」
「いや、大丈夫ではないでしょう! 送りますよ! 家はどちらです?」
自分が雨に濡れるのを
ずいぶん
「ん? きみはもしかして、アメリアさん?」
「ええ、そうですが」
「やあ、これは
フレディ・コストナー……。最近どこかで聞いた名前だ。
「セドリックの
「……ああ!」
あなたが! そういえば会ったような記憶が
セドリックと同じ金髪碧眼で顔立ちも少し似ているが、クールなセドリックとは違い、快活で
(この人が、セドリック様が『毒を盛った』と疑っている人?)
とてもそんなことをするようには思えないが……、外面のいい人間が身内にいるため、「実は裏の顔があったりするのかも?」と考えてしまう。
フレディは親切に申し出た。
「パーシバル家まで送りますよ。乗ってください!」
「え……と、いいんですか?」
「当たり前ですよ。風邪を引いてしまいますから、さあさあ」
肩を抱いて馬車へといざなってくれるフレディに、アメリアの腕の中でチチッ! と
「おや。可愛いリスですね。アメリアさんのペットですか?」
悪気なくニコニコと聞かれる。
リスは威嚇するように再び鳴いた。
人間の言葉で喋らないあたり、フレディに正体はバレたくないらしい。
「……ええ、まあ。そんなようなものです」
アメリアは曖昧に
もっとも──セドリックが敵意を向けていたのはフレディを疑っているせいではなく、
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