蓮華さんは僕の憧れ

猫原獅乃

第1話 蓮華さんは僕の憧れ

僕は二井宿にいやど黎人れいと

市立南中学校3年A組26番。成績は…まあ3~4くらい。

若干3の割合が多いけど。一番中途半端なレベル。

僕のクラスにはある有名人がいる。いや、芸能人とかじゃなくて。

その子の名は「紅花べにばな蓮華れんげ」。

アイルランドの血が混ざっているらしく、

髪は赤茶にピンクを少し混ぜたような幻想的な色をしている。

成績はオール5、運動神経も超抜群。おまけにやはり幻のような美貌。

歌もうまいし、さらに「未来を見通している」と言われるような用意の良さ。

案の定生徒会長を務めている、絵にかいたようなパーフェクト中学生。

そんな彼女に惹かれる人は数知れず。

僕だってその一人だ。

ほら、彼女がやってきた。

「おはよーございますっ」

「おはようっ」

担任の公島先生も彼女と仲良しだ。

「蓮華、おはよう!」

「紅花さん、おはよー」

「美湖、里香、おはよーっ」

「今日も暑いねー…」

「そーだね…」

それで終わり。

別に女子が蓮華を嫌っているわけでも、蓮華が周りを避けているわけでもない。

蓮華はサバサバとした性格で、広く浅く友達を作る。

その性格も人気理由の一因だ。

今日は外部の人を招いての職員会議があるそうで、いつもより早めに下校となった。

「…蓮華ちゃん、なんであそこ行くんだろう?」

女子が呟いた。

確かに、蓮華は裏の地元の小学校低学年がたまに昆虫採集に来るだけの、整備も何もされていない、超えたところに色々あるが、学校帰りには行くことのない森へ向かっているのである。

「蓮華さんって、家あっちの方なのかもね?」

森を越えると、住宅街が立ち並ぶところに出る。

「でも、学区違くない?」

「あー、こないだ引っ越したって言ってたじゃん?

だから隣の学区に住んでてもおかしくないよ?」

「確かにっ」

蓮華の家は誰も知らない。謎に包まれている。

だが黒羽、名推理だ。

…あ。

今日は週4の塾が無く、小2の弟の淳人あつとと一緒にその森を越えたところにある大きなショッピングモールに行くことになっている。

その時に、蓮華に会うかもしれない。

僕の家は学校から5分くらい。すぐに着いた。

「ただいまー」

「おかえり。今日は早いわね。」と母さん。

「にーちゃん、早く行こうよ!」と弟。

「はいはい。ちょっと待っててね。」

「わかった。」

出かける支度を手早く済ませる。

「淳人、行こうぜ。」

「はーい!お母さん、行ってきまーすっ」

「母さん、行ってくるね。」

「いってらっしゃい。」

淳人は少し幼いところもあるが、可愛いやつだ。

森の真ん中少し手前まで着いたとき。

バサバサバサ!バサバサバサ!

「ん?何だろう…」

「あつと、鳥だと思う。」

確かに、鳥の羽音に似ている。

よく見ると無数のカラスがいた。そしてどうやら、真ん中に人がいる様だ。襲われているのだろうか。

そこで、紅く長い髪が見えた。

「あ⁉紅花さん⁉」

そう、真ん中にいた人は、なんと紅花蓮華だったのだ。

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