003 兎のダンジョン2日目とスキルポイント

昨日は探索者の第一歩であるステータスを手に入れた。今日からはいよいよ本番とも言える探索の日々が始まることになる。


装備は昨日と同様だ。変わった点は職業が見習い狩人になったことと【索敵】のスキルを手に入れたことだ。


一般的に知られている効果については僕も知識として知っているが実際に効果を確認して何十回か検証するまでは気を緩めるつもりはない。人類がダンジョンに触れてまだ30年。世界は情報化社会であるが情報の信頼性は100%ではない。疑り深いと言われるかもしれないが性分なのだ。これから変えるつもりもない。


僕は昨日と同じように受付で手続きを行い午前10:00にダンジョンに突入した。ここから一時間探索を行い、帰還し30分の休息を取る。それを15:00までできるだけ繰り返す。


昨日の探索は、もはや探索とは言えない。今日が初めての探索をするようなものだ。今日の探索はダンジョンの慣しで本腰を入れた探索ではない。もちろん油断をするわけではない。いのちだいじに。ダンジョンは死地になり得る。油断は禁物なのだ。


一時間という時間を定めることで深追いを避ける。自分に限って馬鹿なことをしないと思ってる人間こそ馬鹿なことをする。時間制限を設けて時間が切れれば直ぐに帰還に意識を切り替えて帰還を優先する。


一人で探索する以上、僕自身が僕の命を守るのだ。リスクは極限まで減らすもの。まずは一時間、油断せずに慎重に探索をしていこう。


昨日と同じく洞窟を抜けた先に草原。今回は入り口付近にモンスターは軽く見渡した限りでは見当たらない。手前から順に探っていこうと考えた時、右斜め後ろに何かがいる気がした。そして納得する。これがスキルなのだと。


感覚に従って右斜め後ろに姿勢を向けて視線で探ると確かに一匹の【小兎スモールラビット】がそこにはいた。【索敵】はそれ以外に周囲の敵はいないと判断しているようだ。


ところで僕の目はかなりいい。探索者になると決めてから動体視力のトレーニングや隠れたものを見つけるトレーニングをしてきた。僕の目視では30メートルの範囲に三匹の兎が存在する。


やはり基本的な情報はある程度信頼することができそうだ。僕が収集した情報では【索敵】は最初の状態では15メートルの範囲の敵が把握できるそうだ。実際、今も12メートル離れた場所に一匹、25〜8メートルほど離れたところに二匹の小兎がいる。


12メートルの場所にいる兎を相手にしている時にもう二体の小兎が割り込んでくるの可能性は非常に低いだろう。


12メートル地点にいる小兎とは真逆の方向に二匹は居て12メートル地点の兎とは30メートル以上離れている。戦闘中も警戒は怠るつもりはないが一先ずは最も近い位置にいる小兎を倒してしまおう。


僕は昨日と同じく盾を構えて兎に近づいていく。昨日と同様に攻撃を仕掛けると兎は攻撃に気付き此方の攻撃を回避した。そして兎の突進をライオットシールドで受け止めタイミングよく押し込んで脳震盪を起こさせる。


兎の意識が朦朧としているうちに右手の短剣を容赦なく急所に突き刺した。昨日と同様に兎は粒子となって消えたが、昨日と違って今日は残っているものがある。


これは...小兎の魔石と小兎の毛皮かな。モンスターはステータスを保有した者が倒すと何らかの素材をドロップするようになる。宛らゲームのようだが、これがこの世界の理なのだ。


小兎の毛皮は意外と値段が高く一枚が1000円程度が現在の相場だ。魔石は最下級モンスターのもので大きさも小さいことから凡そ100円ほどで買取がされる。皮はそれなりに嵩張るものの持って帰る価値のある素材なのだ。


僕は周囲の警戒はしつつバックパックに獲得した品を詰め込んでいく。一匹であれば比較的安全に熟せることが分かったので周辺に二匹以上の兎がある場合は避けつつ、一時間の間、兎を狩り続けた。


結果、一時間で37匹の小兎を狩ることができた。途中で他に探索者をやっている人を見かけたり、明らかに小兎よりも大きな【ラビット】も確認することができた。まだ兎を相手にするつもりはないので全力でスルーさせてもらったけど。


ということで一時的に地上に帰還した。ここから30分休憩するが、その間に入手した素材の買取と軽食を摂ることにする。


流石に何処かの店に食べに行くほどの時間はないのでダンジョンの近くにあるコンビニでおにぎりを二つ購入した。味はツナマヨと鮭。定番中の定番である。因みにツナマヨとシーチキンマヨネーズは同じ味だ。僕は昔、違うものだと思ってシーチキンマヨネーズを手に取らなかったことがあった。無知は時に損をするものである。


それはさておき今、この休憩時間中にやらなければならないことがある。職業レベルが上がったのでスキルポイントが2になった。なので新しいスキルを手に入れるか既存のスキルの強化をすることができる。


職業にはレベルという概念が存在する。同じくスキルにもレベルが存在する。職業レベルはモンスターの撃破で一定量の魔素を浴びることによって上昇し個人差はあるが大抵、最下級と称されるモンスターでも10〜20匹ほど倒せば一つ上がるとされている。


最初の職業を獲得した時はレベル0として数え、最下級のモンスター10〜20匹倒して漸くレベル1となる。必要な魔素量は凡そ2倍ずつ増えるとされており見習い系の職業の上限となる10レベルまでには最下級モンスターで数えて20470〜40940匹程度必要とされている。


こう聞くと多く聞こえるかもしれないが安全マージンを取った今でさえ一時間に約40匹狩ることができている。今のペースでも500〜1000時間通えば達成できることを考えるとそう難しくない。


次にスキルについてだが見習いの職業で獲得できるスキルはほぼ間違いなく初級スキルだ。基本的に初級スキルは獲得に1SPスキルポイント必要とされておりレベルを上げるのも同様に1SP必要だ。


因みに初級スキルの最大レベルは10レベルであり1レベルのスキルに比べるといくら初級とはいえ大きな差がある。


そして結局スキルポイントとは何かという話だがスキルポイントは職業のレベルが上がる時に一定量獲得することができる。見習い職業であれば1レベルごとに2ポイント獲得することができ、5の倍数のレベルであれば3ポイント獲得することができる。


よって今、僕の元には2SP存在しスキルレベルを上げるか、はたまた新たなスキルを手に入れるかの選択肢があるということである。

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