凡人、ダンジョンに潜るってよ
pengin114
最下級ダンジョン編
001 凡人、ダンジョンに潜るってよ
ダンジョン。
それは30年前、突如として世界に現れ人々に恩恵と試練を与えた。
そこに入れば現世とは断たれた別世界で異界の怪物が襲ってくるだろう。
しかし、その危険と引き換えに豊富な資源と超常の力を人類に与えたのだ。
人々はそれをステータスと呼ぶ。
ダンジョンに潜る探索者になること。それはダンジョンが現れて10年が経った頃に子供だった世代にとって憧れのようなものだ。
黎明期は、ただ危険とされ死者が出る人々にとって忌避される存在だった。しかしステータスを使い豊富な資源を持ち帰る者たちが現れ出すと世間の目は変わった。
ダンジョンの資源は今まで無かったような新しい資源であり数多くの使い道があった。人類の技術を大きく進歩させることができる価値のある素材が豊富にあった。
このことからダンジョンに潜る人を探索者と呼び、それらを支える組織や規律が世に広まっていった。
その当時の子供は、探索者たちの功績を聞いて怪物を屠り人々を助ける英雄として尊敬の念を持つこととなった。
殆どの子供は大人になるにつれて憧れも消え一般的な職業に就くことになる。英雄譚を築いた探索者もいることにはいるが、やはり危険と隣り合わせな職業であることには変わりがないからだ。
とはいえ、専業で探索者をするものは少ないがダンジョンの恩恵の一つであるステータスを目的として休日だけ潜る兼業探索者は数多く存在する。
ダンジョンの外ではステータスの力が万全に発揮できるわけではないが、それでも肉体への恩恵は大きくダンジョンでステータスを得ることは一般的な行為となっていた。
僕、
そんな僕がダンジョンに潜ることを決意したのは、ひとえに探索者というものに憧れてしまったからだ。僕だって分かっている。ダンジョンには危険が伴い命の危険がある。探索者は自分の命と引き換えにお金を得る職業であることを。
それでも僕は憧れる気持ちを誤魔化すことは出来なかった。この気持ちを誤魔化して生きることの方が探索者になることよりも怖いと感じてしまったから。だから僕はダンジョンに潜るにあたって万全な準備をもって安全第一の探索をすることにした。
そうと決めた日から僕は日々できることを全てやることにした。毎日のトレーニングは勿論、探索者として必要な知識を学び、必要な物を買うのに必要なお金をバイトで貯めた。
そしてダンジョンに潜れるようになる今日までずっと準備をしてきたんだ。その過程で分かったが、きっと僕は天才ではない。憧れがあったから努力を続けることができたけど、それがなければ僕はきっとどこかで挫折してしまっただろう。
それに特筆して秀でた能力はない。僕が今、信じることができるのは頑張って努力してきた日々と、その過程で得た知識と経験だ。大丈夫。僕は万全の準備をしてきた。
今日、僕は18歳になったので成人としてダンジョンに潜ることができる。探索者の免許も既に取得しており難易度が最も低いとされる初級ダンジョンへの入場が許可されている。
今回、僕が潜るのは初級ダンジョンの「兎のダンジョン」だ。出現モンスターが兎系統のみで一階層には【
兎系統のモンスターは攻撃手段が少なく、戦闘しやすいとされている。色々なモンスターがいる中で最初に選んだのこのダンジョンであるのには理由がある。
先ほど攻撃手段が少ないと言ったが少ないどころか突進以外の攻撃手段はこのモンスターに存在しない。また基本的に好戦的なモンスターではないことも理由の一つである。
このことから突進への対策さえ行えば対処が比較的容易であることは想像に難くないだろう。なので僕はこの兎への対策としてライオットシールドと迷宮産の魔鉄製の短剣をバイトで貯めたお金を使用して購入した。
兎の突進をライオットシールドで受け止めて兎の勢いを削いだのちに短剣で刺し殺すことを想定している。また、念の為に防具として魔狼皮製の革防具を装備している。フルセットで250万円した上等な装備である。
僕はこの装備でもって全力で【
最悪の場合、中級のモンスターと遭遇してしまった場合でも逃げ切ることができるように準備をしているのだ。過剰な準備だと思う人もいるかもしれないが、用意したものを使わないのが一番いいのだ。僕の準備は初回の探索のリスクを限りなく下げるためのものだ。過剰すぎるぐらいが丁度いい。
こうしてグダグダと考えているのもきっと今からダンジョンに入ることへの不安の表れだろう。大丈夫だ、僕。準備は万全にした。あとはモンスターを一匹倒せば今日の目標は達成なんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます