第49話 ライバルは少ない方がいい!?
私は樹の幹にしがみついたまま、慌てて下を見る。
群れなしていた
「待って、レオポルド! コリン! 全部倒しちゃだめ!」
戦闘に集中している彼らに私の声は届かないのか、二人は一匹、また一匹と
「ストーップ! せめて一匹! 最後の一匹だけは!!」
一瞬、二人がちらりとこちらへ視線を向けた気がした。
だが、レオポルドもコリンもすぐに戦闘へと戻っていく。
(今、目が合ったよね? まさか……!)
二人は不思議なくらい私を慕ってくれている。
(これ以上ライバルとなる魔獣人を増やしたくなくて、私の声を無視してる!?)
魔獣人は私に絶対忠誠だとばかり思っていたが、実はそうでもないのかもしれない。
「こらぁ、二人とも!」
思わず身を乗り出した時だった。
枝を踏んでいた足が、ずるっと滑った。
(え……?)
重力に従い、私の体は空中へ投げ出される。
気配に気づいたのか、一匹の
(あ……)
地面に叩き付けられるか、その牙に喉を食い破られるか。
私は枝を掴み落下を防ごうと手をのばす。
一瞬、手が引っかかった。
だが落下の勢いに負け、その手はすぐに枝から離れる。
その刹那の動きが、タイミングをずらしたのだろう。
私に喰らいつくはずだった
(ひぇ!?)
「「アリス!」」
私は慌てて獣毛に覆われたその体にしがみつく。
目の前で揺れるのはレンガ色の尻尾。
私は、
グラァアアアッ!!!
後方から、
私は両足を
(よぉし)
私は尻尾の近くの毛をかき分ける。
予想過たず、そこには蜂蜜色をした
(これにキスをすれば……!)
腰のあたりに石があるなんて、「Kiss My ass」という意味じゃないだろうな、この野郎、などと苦笑しつつ唇を近づけた瞬間だった。
「んぶっ!?」
慌てて片手を口元にやる。
(あぁ……)
うっすらと血が滲んでいる。歯が折れることはなかったが、歯茎が少々傷ついたようだ。
(もう!
冷静に考えれば、歯が石に勝てるのか?と思うのだが、この瞬間の私は本気でそれを心配した。
それはさながらロデオの様相だった。
「アリス! 今すぐそいつから手を離し横へ転がり落ちろ! 即座に仕留める!」
「
駆け付けて来た二人の声が、すぐ側から聞こえて来た。
なるほど。
つまりこの状態の
(魔獣人にするチャンス!!)
二人には悪いが、ほくそ笑んだ瞬間だった。
(え?)
「まずい、アリス! そいつは逃げる気だ!」
「他の仲間と合流したら、危ないなの!」
(えっ? えっ?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます