第17話 二人目の魔獣人

「レオポルド!?」

 反射的に立ち上がり、戦闘の行われていた場所へ目を向ける。と同時に、私も息を飲んだ。

(何、あれ!)

 群れなすラティブ全ての体が、金色の光に覆われていた。先ほどコリンの姿になった個体と同じように。

 やがてそれらは光の塊へと変化すると、弾丸のようにこちらを目指して飛んできた。

「えっ、えっ、何!?」

「避けろ、アリス!」

「アリス!」

 すぐ側から可愛らしい声がしたかと思うと、兎型少年が立ち上がり、私を庇うように前に立つ。両手を大きく広げ、光弾に対峙した。

「コリン! 危ない!」

「大丈夫なの!」

 光の弾丸と化した残りのラティブの群れが、コリンへ一斉に襲い掛かった。

「ふぁあああっ!?」

 コリンは驚いたような悲鳴を上げる。だがその声に苦痛は混じっていない。

 やがて全ての光は、コリンの中へと吸収されてしまった。

「だ、大丈夫?」

「うん、ボク平気なの」

 そう言うと、コリンは愛らしく笑った。

(ん゛ッ!!)

 そのいとけなくも可愛らしい表情に、思わず言葉が詰まる。

(守りたい、この笑顔! いや、今、守ってもらったばかりだけど!!)


「アリス」

 気が付けば隣にレオポルドが立っていた。

「怪我はないか?」

「うん、平気」

「良かった」

 言ったかと思うと、レオポルドは広い胸の中へ私をかき抱く。

(わっ、わっ!)

「必ず守ると言っておきながら、アリスを危険な目に遭わせてしまった。すまない」

「う、ううん」

 ゆったりと包み込む、苦痛を与えない程度に加減した力強い抱擁。大切にされてる、と感じた。若草の様な芳香に、私は思わずうっとりと瞼を閉じる。

(ん?)

 ぽふっという柔らかい感触と共に、背中が別のぬくもりに包まれる。振り返れば、むっとした表情をレオポルドに向けているコリンがいた。

「アリス、この子は?」

「えっと、さっきの兎型魔獣ラティブ?からこの姿に変わった子で、名前は」

「コリンなの!」

 私が言う前に、コリンは自ら名乗る。

「自分はレオポルドだ」

 言って、レオポルドは私を見る。

「この姿、自分と同じ存在なのだな」

「うん、そう」

「なるほど。コリン、自分たちは仲間だ」

「仲間?」

「あぁ、共にアリスを守るという宿命を得た」

(そうなの!?)

「アリスを守る……仲間!」

 コリンの目が輝く。そして、先ほど私に向けていたのと同じくらい、屈託のない笑顔をレオポルドに向けた。

「それなら仲良しなの! よろしくなの、レオポルド!」

「あぁ、こちらこそ頼む、コリン」

 笑顔を交わす二人を見て、私はほっとする。

 するとじわじわと喜びが湧きあがってきた。

(魔獣人、二人目GETぉお!! ワイルドしなやか筋肉系に続いて、ラブリィショタ系がやってまいりましたよ!)

 私は両手を広げ、コリンに向き直る。

「ようこそ、コリン! これからは私と一緒にいてくれる?」

「勿論なの、アリス!」

 コリンもその心を表すかのように、私に向かって大きく両腕を広げた。

 そこで、ふと違和感に気付く。

(あれ? コリンのこの姿……、改めて見ると……)


 全裸。


(そうだったー!! レオポルドも魔獣人化した時は、服を身に着けてなかった!!)

全身が獣毛に覆われているため、生々しさはあまりないものの。

「アリス!」

「ちょちょちょ、ストップ、コリン!!」

「大好きなの!」

「ギャアアアア、待って! 服、服、服――っっ!!」

「アリス! 自分の服をこの子に!」

「レオポルドは脱がないで! ちゃんと着てて! それより、ひとっ走りパティの所へ行って、事情を話して服もらって来てーー!!」

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