第18話 ポーションの練習
「実習で使うのでウィークリー・ハーブを採ってきましょう」
と言われ課外授業になった。
お、これは、ひょっとすればひょっとするのでは。
もちろん班行動で外で採取になった。
「あった」
「また見つけたのか、早いね」
「えへへ」
ゲレン君に褒めてもらいつつ、ウィークリー・ハーブを収穫する。
その辺に生えているのを毎日のように見つけていた自分にはこんなの簡単だ。
「まるでいつも集めているみたいじゃないか」
「え、げほげほげほげ」
「だだ大丈夫ですか?」
メルシーやゲレン君のメイドさんに心配されるけど、大丈夫。
これはちょっと油断してただけだから。
「ポーション作るの楽しいよ?」
「そ、そうなのか……」
なぜか引き気味のゲレン君。
そういう発想はまるでなかったという顔だ。
貴族なんだからもっとそれらしい趣味でもあると思っていたのだろう。
いいじゃん、草木を愛でてポーション作って暮らしてもさ、ぷんぷん。
いや別に怒ってないけど。
「あのね、錬金術って極めるとお金儲かるよ?」
「お金、お金のためなのか、なるほど」
今度は顎に手を当てて思案顔になった。
金は欲しいのか、金持ちの一人息子だろうに。
ちなみにゲレン君のガルメドス子爵家は騎士団の分隊長をしている。
けっこうな上級職だ。
有名人といえばまあまあ有名なはず。
だから錬金術よりは剣一筋なのだろう。
「でも騎士団だってポーション使うでしょ」
「そうだな、うむ」
「ヒーラーでもいいけど、たくさんの人が一度に怪我をすると大変だよ」
「それは、そうだな。一理ある」
ヒーラーの回復力は低級ポーションより普通は上で重宝する。
ただMP限界には勝てない。
MP回復薬もあるがそれならポーションでもいいという話だった。
実際にはリスク分散という意味でも両方必要なのだ。
さてみんなで両手いっぱい集めて学校に戻ったらびっくりされた。
「そんなに採ってきたのですか?」
「え、うん」
「足りない班もあるので、丁度いいですね。ありがとうございます」
「あ、うん」
先生にいくらか渡して分配してもらう。
貴族が遊んでいるとでも思ったのだろうか。
そんなわけはない。
錬金術は私のテリトリーだもんね。
「それではビーカーと魔道コンロですね」
「「「「はい」」」」
学校には常備されている。
お金はかなりかかっているはずだ。
贅沢品は貴族とかからの寄付なのだろう。たぶん。
自分の子供たちが十分な設備もなく学校で学べないとか醜聞が悪いもんね。
「魔導コンロの使い方からですね」
「「「はーい」」」
なるほど、一般家庭の子は知らない人もいるのか。
そっか、そういえばそうだった。
とまあぐつぐつ煮て出すだけだね。
別に難しくはない。
「できましたか?」
「「「はーい」」」
どこの班もできているが色の濃さにばらつきがあった。
お、これはこれは。検証したほうがいいのかな。
ちなみに一番色が濃いのは私たちの班だ。
先生が私たちの班のポーションを取り上げる。
「見てください。市販薬ではこれくらいのものが使われていますよ」
「「はーい」」
「何が違うんだろうね?」
「ね?」
みんな疑問みたいだ。
まずは材料が少ないとか。
切り方が粗くて十分にエキスが出きっていなかったとかか。
その辺だろう。
「グレン君どうしたの?」
「これ、お前が指導したから、この品質なんだよね?」
「あ、ああ、まあ……」
「つまり、市販薬もつくれるのか、お前」
「まあ、一応?」
「すごいな」
「あ、えへへ」
グレン君が目を丸くして私を見てくる。
ちょっとこっ恥ずかしい。
まるで今までのは何だったのか、という顔だ。
別に何も私は変わってないけど、ただ勉強ができる少女が錬金術師にでも見えているのだろう。
「でも私、中級ポーションとか作ったことないよ」
「アホか。そんなんできる幼年学校生がどこにいるんだよ」
なぜか怒られてしまった。
グレン君の顔は赤い。でもなんだかその視線は憧れでも見てるみたいでこっちが恥ずかしくなりそうだ。
「そう言われても、ね?」
私が同意を求めて周りを見るけど、味方はいない。
なんでやねん。
みんな、なんか私をすごくキラキラした目で見てくる。
ちょっと、あれ。困ったな。
「えへへ」
とりあえず照れる。
元々貴族グループなので周りの子はその視線が一段と強くなっただけだ。
グレン君もいつの間にかいつものつまらなそうな顔に戻っていた。
そうそう、それでいいんだよ。
安心した顔しててほしい。こっちが緊張してしまうからね。
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