電脳特殊捜査隊第六課 旧バージョン
最悪な贈り物
俺らの物語
ファイル1 インターネット捜査官
2023年 7月18日
『都心にて殺人犯がいまだに逃走しております。十分にお気をつけください。強盗犯はこれまでに男女3人を殺害しており、その上持っていたナイフで銀行を強盗し、現金5000万円を持って逃走中のことです。外出には十分にお気をつけください。次のニュースです』
向かいのビルに音がぶつかり、ニュースキャスターの声が街中のビル群へと反響する。
俺はスクランブル交差点で車が行き交う信号の待ち時間にビルに貼り付けてある巨大モニターから最近の世の中のごく僅かな情報を得る。
それは朝の日課とも言えるほどに毎日のように繰り返していることだ。
信号が青に変わると同時に何人もの人が道路に飛び出る。
その中には俺も含まれる。
この俺、
「あ!ユミー氏!」
「おお!
こいつは
「お前、いつもはもっと遅いよな?」
「いや今日は、そのちょっと早く起きたんで」
こいつが敬語を使ってるのは単にそういう人。
まあ、俗に言うヲタクなだけだ。
「へー珍しッ!」
「なめないでくださいよ!!今日も推しのハルちゃんの声で起きたんですから!!」
ハルちゃんとはこいつが推しているアイドルの1人である。
ショートボブで清楚系というのが売りらしい。
ちなみに俺のタイプもそのハルちゃん(清楚系でショートボブ)とかいうアイドルと同じなのだが、あまり興味を注がれない。
もしかしたらあいつの事があってかもしれないがな。
そのことを冬馬に言うと中々めんどくさい事になるので基本的にそのアイドルの話はしないこととしている。
「あ!ユミー氏!そう言えば前にやっていたゲームなのですが、あれようやく僕一位取れました!!」
「おー!よかったじゃないか、お前の苦手なゲームの分野の中にFPSゲームとして入ってるのにな」
「これで、僕もマスターランクまではいけるでしょう!!」
「さあ、それはどうか…」
と、言う会話をして俺らはスクランブル交差点を渡り切る。
そうこうしている内に俺らは渋谷高等学校に着く。
この言い方はめんどくさいのでこれからは渋谷高と呼ぶことにする。
「では、また後でユミー氏」
「おう、また後で」
ちなみにユミー氏と言うのはあだ名のことだ。
「氏」という最後の言葉はともかく、ユミーと言うのは俺の本名の雄和の頭文字の「ゆ」にミーをつけただけのあだ名だ。たぶん。
クラス以外でも学年中で「ユミー」と言われる方が多い。というか本名よりもユミーの方が通用しやすく、「ユミーは知ってるけど、雄和って誰?」みたいなことはよくある話だ。
俺は、自分のクラスのドアを開け、教室の中に入った。
「うわ涼しッ」
これは夏になった時に俺が教室に入って一番に放つ言葉だ。
「お!ユミー」
「おは、
こいつは山田。クラスメイトの中では一番喋るかもしれない。
「てかさ!このアプリ知ってる!?」
「おお、いきなりだな。どれどれ」
俺は山田が見せつけているスマホを覗き込む。
それはネットニュースらしく、その記事にはこう書いてあった。
『伝説の捜査隊!!電脳捜査隊の秘密に迫る!!』
まさか…ここまでとはな。驚いた。
俺は少し呆けた言い方で山田に合いの手を入れる。
「電脳捜査隊?なんだそれ。名前だけは攻殻機動隊みたいな名前してるな」
「誰もわからん様なネタだすな。」
俺は続けて質問する。
「なんて書いてあるんだ?その記事には」
「ここにはか?」
山田は俺に掲げたスマホを自分の元へと戻し記事を読む。
「えーと、どうやらホワイトハッカー?みたいな物らしいよ」
「ホワイトハッカー?」
「犯罪者とかの方のハッカーから情報を守るような人の事で国単位の任務もあるとか」
「国で…」
「だがその存在には霧が掛かっている謎の存在である!!」
とナレータ風に山田は記事を読み終える。
「って!秘密の組織なんてロマン溢れすぎじゃない!?」
俺は急にテンションが高くなった山田に少し驚いて声を少し漏らす。
「そこまでなる事か?別に珍しい事でもないだろ。警察のホワイトハッカーなんて」
俺はため息を吐きながら言った。
「まあ、最初はそう思いますよね…」
何処となく冬馬に口調が似てきた。
「でも!これを見れば!!そんなこと言えなくなりますよおおお!!!」
山田は俺の目の前にスマホをサッと出し、記事の部分を指で刺しながら言った。
「ここに書いてあるんですよ!僕がロマンなんて言う理由が!!」
「お、おう」
山田はここを読め!と目で語りかけてきたので仕方なく読むことにした。
「サイバー空間に潜入し調査!!どういうことだ?」
山田は一息はあと吐く。
「要するに!!この電脳特殊捜査隊は!!サイバー空間に入れるんですよ!!」
「どういうことだ?」
「だから!生身ごと入れるんです!!」
「は?つまりあれか?自分自身がインターネットの中に入るということか!?現実的じゃなすぎるだろぉ」
どうやらどこからか情報が意外と漏れているのかもな…
「だからこそのロマンなんですよ!!」
はあ、と俺は合いの手を入れる。
「どうせ、そんなのデモだろ」
俺は興味ないフリを取り繕う。
「そんなことない!!!!」
山田は大声で否定する。
「というか!存在するという証拠の方が多いんですから!!否定できる証拠よりも存在するという…」
「あーわかったわかった。それより席についた方がいいぞ?」
「キーンコーンカーンコーン」
学校に朝のチャイムの音が鳴り響く。
「ほらな?」
「ちぇ!」
と吐き捨てると山田は自分の席へと戻っていった。
この前も同じような話を隣のクラスの女子がコソコソと言っていた。
最近有名なのかわからないが、1ヶ月に一回は聞く話題になって来ている。
こういうことは本当に困る。
電脳特殊捜査隊の秘密が漏れるとこっちも頭を悩まされることになるからな。
放課後。
「じゃあな!ユミー氏」
「おう!それじゃ、また明日!」
俺は冬馬に別れを言うと冬馬とは違う方向へと歩く。
住宅街の奥の方へ進み、ごみ収集の銀色の箱の前に立つ。周りに人が居ないことを確認する。
「では、いっちょ仕事と行きますかねえ」
俺はスマホを取り出しあるアプリを開くと、一言呟く。
「ワールドイン・コネクト」
スマホが青い光を周りの放ち、体がドット絵のように四角くなりスマホに吸い込まれる。
俺は分かる通り普通の学生などではない。
インターネットの世界。『ソーシャルネットリアリティ』という世界に出入りすることができる。
この世界はSNSの世界らしい。
イマイチよくわからないだろう。
要するに俺はインターネットの世界のアバターとして出現することができ、文字通りインターネットの世界で生きることができる。そう言うことだ。
そして俺は俺の目の前が一瞬、真っ暗になると一つの光が前でピカリとはひかり、青いトンネルの様なものを斜め下に降りていく。
俺は体が青い火に包まれ、火が消えると制服姿からいくつもの緑色の線が引かれた未来の様な服になった。
「地面だ!!」
俺は見えてきた地面に着地する。
体感的には500メートルは落ちていた様な気がしたが、この世界では普通に痛みなど無く着地できる。
不思議なことだが、この世界は現実とは違うようだ。
周りには辺り一面に四角いサイトのページのような物が広がっており、広告などが空と思われる場所に一面びっしりと貼ってあった。
「はあ、今日も怪しいサイトばかりだな〜」
「こんなんじゃ完全にハッカーをゼロにするのは難しそうだね〜」
隣から声がした。
まつだ。
「もう来てたんだ。早いな」
「まあ、こう言うのってワクワクするからねぇ!!」
俺はいつものように仕事なのであまりワクワクはしないが…
「それよりも他のみんなはまだなのかな?」
「どうだろうか。もしかしたら俺ら以外はもう行ったんじゃないか?」
「もしかして!わ、私たち!置いてかれちゃった〜!?!?!?」
「まじ?」
『他のみんなは今は休みだよ。ユミーとまつだけで今回はできるからね』
声の主は一つの広告の様な四角いページだった。
「この声はアズキ?」
『ああ。今回はちょっとした任務だからこの2人でもいけると思うよ。』
こいつはアズキ。情報係でいつも基本的に現実から情報を伝えてくる。
そういえばアズキという名前は特に本名ではなくただの偽名らしい。(まつも同様)
「で?今回のその簡単な任務ってのは?」
『ちょっとした会社のデータバンクを漁るだけよ。』
「なら良かった。すぐに帰れそうだな」
俺は一息つく。
「うう、それだけかぁ〜」
『もっと仕事欲しいの?』
「まあね。色々な人たち救えるから…」
「いうてそれが全て世界に関わることかどうかはわからんけどな」
まつは下を向いてまた少しうめき声を上げる。
『まあそれよりも早く調査を始めるよ』
「そうだな」
「じゃ!じゃあ!いつもの奴やるよ!?」
俺は首を縦に振る。
『はは、じゃあお願い』
音が実際に聞こえてきそうなくらいまで気合を入れる様にまつは鼻で息をはいた。
「では!電脳捜査官第六課出陣!!」
そう。
まつが言ったように俺たちは今日、山田が言っていた電脳特殊捜査官なのだ。電脳特殊捜査官。それは防衛省が秘密裏に生み出した特殊組織で、戦争や争いの火種となり得るものを予め調査し戦争や争いをネットワークの力で抑えると言う物。
だがこれは、非科学的、非現実的な能力と人材なため、あまり公には晒すことができない。
なので俺たちは所謂秘密組織なわけだ。
名前からして警察官と似たような物と思われるかもしれないが、部類的には自衛隊と同じ物である。
『着いたぞ。鹿島工場のデータベースだ。』
鹿島鉄工業データベース。
データベースの世界の中にはちょっとしたファイルなどがびっしりと置いてあった。
周りにはファイルの建物が並んでおり、このファイルに触れるとデータを覗き込めることができる。
「ではとりま、全て探していきましょうかね」
「はーい」
俺たちは見えるもの全てのファイルに手を当ててデータを調べた。
「ま、全く何もないねー!?」
「まさか、何かの勘違いか?それに下町の工場で出来ることなんてほとんど何もないだろ?」
『おかしいな。もう少し何かないか調べてみよう。あっちの方に他社とのやり取りの出来るメールボックスもあったからそこも調べてみよう。』
「りょーかい」
辺り上を見上げるとさっきいた基地より空が青かった。
広告のような物は一才見えなかった。
「にしてもこんなに広告がないと何故か清々しいな」
「まあ私たちの基地は広告を元に調べたりもするから会えてだしるんだけどねー」
『まあ足しかに清々しさはあるよね。こんなに広告がないなんて、よっぽど厚いセキリュティを使ってるんだろうね』
「そう言ってるけど、実際そのセキリュティは俺ら突破してるけどね」
『でも、こんなにまでして守るものなんて工場のデータバンクの中にあるとは思えないけど』
「あ!あれじゃない?メールボックス!」
少し先にファイルの建造物とは比にならないほど大きい建造物が現れる。
『あれだね。じゃあさっさと終わらせよう』
「そうだな」
俺はメールボックスに手を触れる。
「バチン!!」
うお!?と俺は声を漏らす。
電気の様なものが手に走る。この世界では痛みは感じないがダメージなどはあるらしい。
「セキリュティ!?」
「こんなところに使うの?普通」
『ファイルにセキリュティを掛けなかったから、ここだけにセキリュティがあるのは絶対におかしい思う』
「これは調べた方がいいな」
「それじゃあ私が」
まつは手を触れると電気が流れることはなく、建物に小さな入り口の様なものが開く。
「さすが、まつ。」
「どっとこんなもんよ!!!」
『それじゃあ中に入ろう』
メールボックスの建造物の中に入ると、外見よりも広くトラップのようにレーザーの壁が何重にも重なり広がっていて、どうにも通れそうにはなかった。
『ではここも、まつよろしく』
「ほーい」
まつは目を瞑って腕を前にだす。
まつの周りの雰囲気が変わり髪がふわりとなびく。
「止まれ」
その一言によりまつからは電気の様なものがトラップの様に広がるレーザーの壁が全て機能を停止した。
「ナイスまつ」
俺はそう言うとトラップのなくなった一本道を走る。
「あ!ちょ待ていぃ!」
『まさかのキムタク』
俺の後ろにまつが走ってくる。
俺たちは最後のメールボックスの中までくる。
「うわー」
メールボックスのなかには色々な怪しい組織からと連絡しあっているようなメッセージが残されていた。
『ここに書いてあるのって…』
「銃の注文か… 」
「国内で堂々と製造しようなんて…」
目を疑うようなほど、色々な危なそうな集団と契約を交わしているようなメッセージがメールボックスの中に入ってるのを見つけた。
『まさか8つの武力集団と繋がって銃の製造から販売までしてるなんて、ここはマシンガンとか売っていいような免許も持ってないのに!!』
アズキの声が少し荒れる。
「でもまあ、これを防衛省に出せれば警察だかなんだかが解決してくれるよ」
『それもそうだな…』
アズキは少し落ち着いた声になる。
「じゃあ早く帰ろう!基地に行って防衛省に報告しなくちゃ!」
「そうだな」
俺らは出口の方を向いて歩き始めた。その途端
「ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!」
「なんだ!?」
激しいサイレンの音が辺りに響いた。
「ウイルスを検知!!排除します!!!」
どうやら見つかったようだ。
『ちょっと爪が甘かったかな?検知されたみたいよ?』
後ろからドットが無数に生まれ形をなして、最終的には何かのロボットの様な物に形付けられた。
「あれは!!セキリュティ!!」
『逃げるよ!!!』
俺らは出口に向かって全力で走る。
だが、後ろから追って送るロボット型のセキリュティは俺らよりもずっと早く、すぐに追いつかれそうだった。
「まずい!!アズキ!!」
『はいよ!!』
アズキから現実でキーボードを無数に叩く様な音がした。
『できた!!』
俺ら電脳特殊捜査官にはちゃんとセキリュティに対抗するために能力を1人一つずつ持っている。
まつは進行を妨げるようなトラップ(セキリュティ)を無効にする能力。
ユミーにも同じような能力がある。
それは…
「ようやく、俺の出番だ。セキリュティは基本的には壊せない。くぐり抜けるだけであって壊すことはありえない。だけど!!!」
俺はアズキが瞬時に作り出した銃をデータの銃を片手に持つ。
「俺はそれが出来る!!!!」
ユミーの能力、攻撃。
壊すことの出来ないセキリュティを壊す。
「それが俺の
俺はロボットに無数の弾丸を一発残さず、撃ち込む。
ロボットはその場で倒れ、機能しなくなる。
「甘いセキリュティだな」
俺はロボットの頭を踏んづけて言った。
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