第7話 今までで1番緊張する夜 その4

な、何て日だ! 今日は今までに1番緊張する夜だ!


ゴッゴッゴッ!!


俺は極度の緊張を誤魔化す様にグラスに注がれているビールを一気に飲み干す。 何故か今日のビールは味がしない。それといつも感じているあの喉越しも感じなかった。


「わぁ、雄二さん良い飲みっぷりです♡ ささっ、もう一杯どうぞ♡」


朋美さんは本当に嬉しそうに俺の空になったグラスにビールを注いでくれた。


「じゃ、私もっ♪」


朋美さんはコクコクと自分のグラスに入ったビールを飲んでいく。


「……ふぅ♪」


「……朋美さんはビールお好きなんですか?」


美味しそうにビールを飲む朋美さんを見て、ついそんな事を聞いてみた。すると


「実はビールを飲むの今日が初めてなんです。 お酒自体飲むのが今日初めてなんですよね。エヘッ♪」


お、おいおい!? 今日が初めての酒ですと!? だ、大丈夫なのか!? もしかして朋美さん、俺に合わせてくれた!? 朋美さんのびっくり発言に驚き、心配している俺に


「えっと~、私結構お酒飲める口かも知れませんね~♪ だって~、このビールがすっごく美味しいんですぅ♪ いくらでも飲めちゃいそうですぅ~♪」


と笑顔で……って朋美さん? 滅茶苦茶顔が赤いんですが? しかも口調がおかしい気がするんですが?


「さぁ雄二さんももっと飲みましょうよ~♪」


……あかん。これは朋美さん滅茶苦茶酔ってる。 ビールグラス半分で滅茶苦茶酔ってるわ。 絶対にこの人酒弱い。 この人に酒を飲ませたら危ない(特に外で)。悪い男にお持ち帰りされる。確実に。


「と、朋美さん、もうその辺で止め…」


俺は朋美さんからビールが入ったグラスを取り上げようとするが、朋美さんはそれを察したのかグラスをさっと隠して


「駄目~。もっと飲むの~。何故私からビールを取ろうとするんですかぁ~? ははぁん。さては雄二さんは意地悪さんなんですねぇ♪ 狡いですよぅ自分だけこんなに美味しいビールを飲もうだなんてぇ~♪ 私にも下さいよぅ~♪」


とケラケラと笑いながらそう言ってきた。 


あ、あかん! これ以上は本当にあかん!


「と、朋美さん! 本当にもう止めましょう!」


俺は無理矢理朋美さんからビールが入ったグラスを取り上げようとする。 すると朋美さんが抵抗し、思わず朋美さんを押し倒す形になってしまった。 それでも朋美さんは器用にビールが入ったグラスを離さなかった。そしてグラス内のビールは何故か零れていなかった。


「えっ、ゆ、雄二さん? えっ? えっ?」


「す、すみません!! す、直ぐに退きますので!!」


俺は慌てて朋美さんから離れようとするが、朋美さんはビールが入ったグラスを俺に押し倒された状態で器用にテーブルに置いて、俺の首に両手を回してきた。


「雄二さん……ん~♡」


そして朋美さんは目を閉じて口を少し尖らせてきた。 も、もしかしてこれは…キ、キス待ちのスタンスですか!? 


こ、これは…い、行くしかないのか!? でも、朋美さんとはお付き合いしている訳じゃないから、これで朋美さんにキスしたら犯罪になるんじゃないか!? で、でも、据え膳食わぬは男の恥とも言うし…! で、でも、酔ってる朋美さんにそんな事をするのは狡いというか……。で、でも、朋美さんのこの状態は絶対キス待ちだよなぁ!? 


自分の中に存在している天使と悪魔の争いを感じていると、朋美さんの方から


" スーッ スーッ "


と気持ち良さそうな息遣いが聞こえてきた。


あ、あれ? 朋美さん…寝てる?


見ると朋美さんは目を閉じたまま気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。


……た、助かった~。


俺は俺の首に回してあった朋美さんの腕をゆっくりと外し、朋美さんを起こさない様に朋美さんの身体を抱え上げ(世に言うお姫様抱っこという奴)ベッドに運び寝かしつけた。


……ふぅ~。 さて、俺も寝るとしようかな。


俺は押し入れから布団(お客様用。お客様なんて来ないけど、もしもの時に用意してあったのだ)を引っ張り出して、布団を敷いて寝る事にした。


……あっ、風呂……まっ、いっか。 明日の朝入れば。 今日は疲れた(精神的に)から寝てしまおう。


朋美さんは俺のベッドで気持ち良さそうにスヤスヤと寝息を立てていた。


……あっ、明日仕事だ。 どうしよう。朋美さんも仕事なのではないだろうか? でも、朋美さんを起こす訳にもいかないしなぁ。 ……明日の朝考えるか……。 お休みなさい……。






ここまで読んで頂きありがとうございますm(__)m


面白いと思われたら★評価 🖤 コメント レビュー等を頂けたら今後の励みになります。


今後とも拙作を宜しくお願い致しますm(__)m


朝が大変そう(笑)















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