二十一話 思い出す
僕とリュウはボスの巨人が立つ時の胸の高さまで飛んでいる。
「いつまでもじっとしてないで俺に向かって来いよ!」
「じゃあお前から来てみろ!」
「自信あるなぁ〜遠慮無くいくぜ!」
ボスの巨人はリュウに向かって右拳でパンチしたが、リュウはかわした。
「連続でいくぜ!」
巨人は連続でリュウに向かってパンチしてきた。だがリュウの素速い動きでパンチが一発も当たることは無かった。
「素速いな! ならこれでどうだ!」
壁から巨大な拳が出現して僕らを襲った。しかし僕はリュウに右回するように指示してそのパンチをよけた。
「これもかわすか!」
「ここのダンジョン道が変わったり穴空いたりしていたから……ボスが地形を変えられると思ってね」
「なら俺と壁のパンチ、ラッシュで来たらどうだ?」
巨人のボスはそう言うと、壁からいくつもの拳を出現させて僕らに向かって何度もパンチして来た。しかしそれらの攻撃は……全く当たらないんですよね〜。
「うっ……!」
壁からのパンチ一つが巨人のボスの腹にぶつかった。
「自滅したな」
「ふっ……ふっふっふっ……」
「……何が面白い」
「残念だったな! ここのダンジョンには俺を倒せる程の武器はねぇんだよ!」
「え?」
「そしてもう一つ残念なお知らせがある! 俺を殺せばダンジョンの機能も停止するのは分かるな?」
「常識じゃね」
「お前が落ちた仲間は俺が作った永久迷路に迷い込んでいる頃だ」
「永久迷路……? 迷路ならゴールくらい作れよ」
「お前が俺を殺そうとした瞬間、俺はお前の仲間を魔法で押し潰す。お前は俺にトドメを刺すことは出来ない!」
「おいおい……自分に自信無いのか?」
「うるせぇ! どっちにしろてめぇは負けるんだよ!」
遠くから近付く姫様の魔力を感じる……余裕で合流出来るだろうな。
「そうだ。お前に聞きたいことがある」
「なんだよ」
「お前……橋本王将さんって知ってる?」
「さぁ! 知らねぇな!」
ただたんに忘れている可能性があるけど……
「忘れているならしょうがない。倒すか」
*
その後数分間、リュウはボスの巨人の攻撃を全てよけて何回も炎を巨人にぶつけた。
「はぁ……はぁ……なんだお前らは……」
「良かったね配信してなくて。自滅ばかりでお前恥ずかしい思いをするだろうから」
「くっ……お前ら……そんなに強いくせに何故さっきは逃げた……!?」
「僕は……記憶喪失の魔法を受けていたから」
「記憶喪失の魔法だと!?」
「……なんか知ってるのか?」
「あれは確か……」
「ちょっと待って! 配信するから! 記憶喪失のことを話したら見逃してやるから!」
僕は姫様のスマホが置いてある場所に降り立ち、姫様のスマホを拾って配信をスタートさせた。
∀∥№":‾≮η
あ
Ζ⊇∪∪⊇Α¢
復活した!
·√↴√↴≡
生きてたか!
「記録にするから教えてくれ! 記憶喪失の魔法について!」
「ふっふっふ……」
「……え!?」
危ない……!! 壁からパンチが……!!
「かかったな!」
僕を乗せたリュウは壁からのパンチをよけようと動いたが完全にはよけられず、いくつかのパンチが体をかすめた。
「クエェェ……」
「大丈夫か! リュウ!」
「クエ!」
「大丈夫そうか……良かった」
僕はスマホをチャック有りの服のポケットに入れてチャックを閉めた。
∝∌χ∇2±±
なんだ!?
κ⊃∵ω⊃√μ√
見えない!
ς^⊗ν^ν』ρ
音声のみ!?
「その鳥……素速いな」
「お前こそ攻撃が遅いな」
∧❵❵⊕Π#⊕
なんかカッコつけてる
「うるさいな!」
僕がコメントにそう突っ込んだ瞬間、巨人が僕らに向かって右手でパンチしたが、リュウがかわしてくれた。
「ナイスリュウ……!」
「おい! その鳥から降りて俺に勝ったら今度こそ記憶喪失の魔法について話してやるぜ!」
「……そうか」
僕は光の魔法を剣に込めて鞘から抜き、巨人に向けて投げた。僕の投げた剣はボスの巨人の右目に刺さった。
「いてぇぇぇ!!」
⑸-⑸-∋φφ
なんだ!?
⊆¿∈⁇∈⊅:
巨人の悲鳴か!?
「お前にもう提案する資格は無い」
「よくも俺の右目を!! 許さねぇ!!」
四方八方から巨人によるパンチが襲ってきた。
「騙さなければ良かったな」
リュウは迫りくるパンチを連続でよけ巨人に近付き、僕はリュウから飛び降りた。
「バカめ! 本当に飛び降りやがって!」
リュウは一瞬で僕の手元に剣として移動した。
「お前に期待してないからもう殺るわ」
僕は空中で思いっ切り剣を縦に振るった。剣から金色の炎の斬撃を飛ばしてボスの巨人に当て、ボスの巨人を金色の炎で包んだ。
「これでダンジョンクリア……」
燃える巨人を見ていると突然、僕は頭が痛くなった。
「頭が……なんだ……!?」
何か……思い出すのか……!?
*
僕が小学二年生の頃のとある日、僕は姫様が通う中学校の校門の近くに立っていた。
「誰かの弟?」
近くを歩く下校中の人が僕を見てそう言う。
「椛か!?」
僕の名を呼んで僕の前に現れたのは当時中学一年生の姫様だった。
「……姫様!」
「お前と言うやつは……学校が変わっても私と下校しないと気がすまないのか……」
「はい。気が済みません」
「小学校から中学校、それから私の家に寄って自宅に帰るのは大変ではないのか?」
僕は姫様の質問を聞いて首を横に振った。
「一番大変なのは姫様に会わないことです!」
「お前と言うやつは……私と何度も会っているだろう……」
「姫様は何度でも会いたいです!」
僕は姫様にそう言うと、一人の女子中学生が姫様の元に近付いた。
「あれ? 姫に弟いたの?」
「いや……勝手についてくる小学二年生の男子だ」
「え!? こんな小さい子でもストーカーしてるの!?」
「ストーカーなら私は追い払う。こいつは小学一年生の頃、友達にお金を渡して色々な指示を出していたんだ」
「え……すごー」
「私はこいつのことが気に入ってな……」
「姫様……僕のことが忘れられないってことですか……?」
「うわー……小二は純粋なはずなのにロマンティックゥ……」
「手を繋いて帰ろう」
僕は姫様にそう言って右手を差し出した。
「もう恋人じゃん!」
「私は親から恋愛する許可を得てないのだが……」
「恋愛なんて親から許可もらうものじゃないんだよ! お金持ちでも!!」
「お前が政略結婚が嫌いなのは何度も聞いたから……」
「……私がいたら邪魔だね! さようなら!」
姫様に話しかけて来た女子中学生は走り始めた。
「椛……あいつのことは気にするな」
「分かりました」
僕は右手を姫様に向かって差し出した。
「はいはい、今日も一緒に下校しよう」
僕と姫様は手を繋ぎ、二人共に歩き始めた。
「さっきの女子中学生って……姫様の友達ですか?」
「知り合ったばかりだが馴れ馴れしく話してくれるが……また私は一人になるのだろうな……」
「友達作るのも駄目だなんて意味不明ですよね」
「冷酷な女になれってことなのだろうが……」
「姫様は友達欲しい?」
「友達欲しいと言うよりも……周りに嫌われて孤立したくない……」
「僕が姫様の親に言っておきます?」
「無意味だ。親は北海道を救うことしか頭にないのだろうからな」
姫様はそう言うと立ち止まって僕と手を繋ぐのを止めた。
「だからいずれお前とも別れなければならない」
「姫様……僕のことは嫌いですか?」
「いいや……椛は好きだ」
「本当ですか!?」
「今のは恋愛的な意味ではないぞ」
「分かってます! 片想いなことは!」
「恋愛感情になっているのか……小学二年生のお前が……」
「僕もいつか調査隊になるので今から仲良くなっても良いと思います!」
「お前には別に目指せる道があるだろう……」
僕は勝手に姫様の右手を握った。
「何を……している」
この時、姫様はすぐに手を離そうとしなかった。
「そこまで私と手を繋いで帰りたいのか……しょうがない奴だ」
その後、僕と姫様は姫様の自宅の近くの道まで手を繋いだまま共に歩いた。そしてこの数時間後、とある事件が起きた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます