ダンジョン配信中に記憶が無くなりました

みかづき椛

  一話 記憶喪失

 俺は身も心も男性で年齢は二十一歳。個人でゲーム配信を生業としている。全く稼げては無いが……つまりニート。


「って誰がニートじゃい! 洗濯物畳んでるわ!」


 いや……自分が自分にツッコんでる場合じゃない……! とにかくそんな俺は今、家から車で二時間で着く北海道にあるダンジョンと呼ばれる暗い洞窟の入口の前に来ていた。


「行くぞ……!」


 俺は魔法で点くランプに、自身の魔力を流して光を灯した。


「これはすなわちシャイニングランプだ!!」


 まだ配信をスタートしていないのにも関わらず俺はおもしろワードを言う。


「シャイニングランプ……配信で言おう」


 俺はスマホをポケットから取り出し、自撮り棒をスマホにセットした。


「配信行くぞ……」 


 将来も危ないしな……もう俺は最近噂のダンジョンで一獲千金するしかない……!!


「配信スタート!」


 俺の持つスマホがダンジョン内を映し出し、配信スタートとなった。


「みなさんこんにちは! タンしおです!! さぁ、今日も配信始めるぞ! 今日はなんとー……ゲームのダンジョンではなく、ガチのダンジョンに来ましたーー!!」


 イスのローラー

 は?お前ダンジョンにいるの?


「そうだよ! ダンジョン配信!!」


 ブラック林道

 リアルなダンジョンって一般人立入禁止じゃなかったか?


 裁ちバサミカッター

 ダンジョンに入るって許可がいるはず……まさかお前……無許可じゃないよな


「いやだな〜裁ちバサミカッター君〜。無許可に決まってるじゃな〜い」


 イスのローラー

 そもそも宝なんてあるかどうかもあるか分からないのに行くなよ


 この配信サイトては、リスナーのコメントが音声となって流れる仕組みだ。


「いや、宝は絶対にある!」


 俺は三人しかいないメンバーシップのリスナーにダンジョン捜索を止められながらでも、お宝はあると自信満々に言ってダンジョンと呼ばれる洞窟に入った。正直、危険な場所であることは重々承知だ。それでも……リスナー三人止まりから脱出したい!!


 裁ちバサミカッター

 止めとけって!


 ブラック林道

 死ぬって……引き返すなら今の内だぞ!


 ダンジョンはモンスターだらけと言う情報しかない。宝もあるのかも分からない。言わば未知の領域。その秘密を俺が暴いたら富も名声も独り占めなんだ!


「ダンジョン攻略するぜー!!」



「ゴルアァァァ!!」


 数分後、俺はダンジョン内でモンスターが叫ぶ声を耳にした。


「いやいや……平気ですよ」


 裁ちバサミカッター

 まじで帰れよ


 イスのローラー

 タヒるから!


 ブラック林道

 ビビってね?


「大丈夫!! 俺は死なん!!」


 俺はリスナーの三人にそう宣言すると、曲がり角を曲がってきた体長2メートル程のドラゴンが俺の目の前に現れた。


「おぉ……きゅうに……」


 俺はドラゴンから逃げる為にドラゴンから背を向けて一目散に走り始めた。


「ゴルアァァ!!」


 ドラゴンの叫び声を消えて振り返ると、ドラゴンは俺を追っていた。


「うおおおお!! 死んでたまるかーー!!」


 ブラック林道

 逃げるんじゃねーか


「うるせーー!! あくまでロマンだからな!! ドラゴンを倒すことはロマンじゃねぇ!!」


 裁ちバサミカッター

 タンしお、足速いのか?


「100m20秒超えは伊達じゃねぇよ!!」


 ブラック林道

 遅いじゃねーか!


 イスのローラー

 光の魔法は?


「そうだ魔法!! 思い出してくれてナイスイスのローラー!! って言いずらいな!」


 言い辛い言葉にツッコミを入れた俺は強い光をドラゴンに向けて放った。


「フラッシュくらえ!!」


「ゴアァァァ!!」


 ドラゴンは突然放たれた強い光にひるんだ様だった。


「良し! 今の内だ!」


 俺はダッシュでドラゴンから離れた。


 ブラック林道

 もう帰れって




 数分後、ドラゴンから逃げ切った俺はめっちゃ視聴者数上がってると期待しながら観覧数を見ると、再生数が一桁だった。


「なんで……!!」


 イスのローラー

 #ハッシュタグダンジョン配信してないからな


「し……しまったーー!!」


 俺はショックで地面に膝を着いて顔を下に向けた。


「ドラゴンから逃げる姿……凄い撮れ高だったのに……」


 裁ちバサミカッター

 いやいや、俺達が見守ったぜ


 ブラック林道

 まじで帰れって


「まさか!! 低視聴のままあの世に行ってしまうのか!! それは嫌だぜ!! ブラック林道君!!」


 イスのローラー

 アーカイブ残せば。それでも全然有名になれるよ


「……確かに。後でたくさんの人達にアーカイブで見せれば良いんだけど……垢BANされそうだしな」


 裁ちバサミカッター

 じゃあやんなよ


「あっ! ヤバい!」


 裁ちバサミカッター

 どうした!迷子になったのか!


「いや……迷子は迷子なんだけど……」


 裁ちバサミカッター

 迷子かい!


「なんか……光ってね……」


 俺の視界に入っている壁が、隣の部屋から光が少し漏れ出ていた。俺は光っている壁をリスナーに見せた。


 裁ちバサミカッター

 おいおいお宝あるのか!


「あるかも」


 ブラック林道

 大丈夫か?


 イスのローラー

 壁壊した音でドラゴンにバレるかも


 俺は壁をくまなく調べ始める。すると、ボタンのような出っ張りがあった。


「これ押したら壁動くんじゃね」


 俺は出っ張っている壁を押した。すると壁が動き出した。


「来た!」


 壁が開いたその先には金色に輝く物がたくさん……そう……宝の山だ!! 俺はリスナーに宝箱の山を見せた。


 イスのローラー

 えええええ


 裁ちバサミカッター

 マジか


 ブラック林道

 やばいやばい


「っしゃーー!! 見つけたぜーー!! おたからぁーー!!」


 俺はそう叫びなが宝の山がある部屋に入って行った。


「よっしゃー! これで俺は人生バラ色だぜー!」


 ブラック林道

 すげぇぇぇ


 イスのローラー

 本当にあった……宝が


 裁ちバサミカッター

 お前なら行けると思ってたぜ!


「嘘つけー! 思ってなかっただろ!」


 俺は裁ちばさみカッターにツッコミを入れた時、視界に宝箱が目に入った。


「おっ! 見て! 宝箱発見!」


 裁ちバサミカッター

 宝箱か!


 ブラック林道

 宝箱ってすげぇな


 イスのローラー

 なに入ってんの?


「中身は何かな〜」


 俺はリスナーに宝箱を見せながら、宝箱の蓋を開けた。


「オープン!!」


 裁ちバサミカッター

 え?空だ


 ブラック林道

 中身が入ってねぇな


 イスのローラー

 あれ?画面が……


 裁ちバサミカッター

 おい、スマホ落としたぞ


 ブラック林道

 タンしおどした


「……ここはどこ?」


 裁ちバサミカッター

 は


「……私は誰?」


 ブラック林道

 まさか記憶喪失か?


 裁ちバサミカッター 

 いやいや冗談だろ


 イスのローラー

 ガチ?


 ブラック林道

 嘘だろ……


 イスのローラー

 まさかトラップ宝箱か


 裁ちバサミカッター

 やべーじゃんつまり罠じゃん


 ブラック林道

 とにかく画面見ろタンしお!


「うぅ……」


 裁ちバサミカッター

 駄目だ……うなされてる声しか聞こえねぇ


「ゴルアァァ!!」


 イスのローラー

 やばい……ドラゴンの鳴き声がする……


 ブラック林道

 今ドラゴンが来たら終わりだ!


 裁ちバサミカッター

 早く見ろ画面!


 ブラック林道

 そうだ!誰かタンしおに連絡しろ!


 イスのローラー

 僕はタンしおの連絡先知らない


 裁ちバサミカッター

 俺も知らない


 ブラック林道

 くそ!タンしお!画面を見やがれ!


「なんだこれは……」


 俺はわけも分からず、目の前にあった機械に手を伸ばした。


 イスのローラー

 タンしお画面見た!


 ブラック林道

 おい!タンしお!お前はダンジョン配信中に記憶喪失になったんだ!


 どうやら私は……何かをしている時に記憶を失ってしまったらしい……


「私の名前は……?」


 ブラック林道

 お前はタンしおだろ。本名は知らん


「う〜ん……」


 イスのローラー

 記憶喪失って言っても会話は出来る……


 裁ちバサミカッター

 悲鳴を上げれる程の知能は残しておくってか趣味悪いな。そのトラップ仕掛けたやつ


 ブラック林道

 とりあえず軽いお宝1個持って外に出ろ


 イスのローラー

 そうだね。とりあえず落ち着こう


「……分かりました」


 裁ちバサミカッター

 敬語じゃなくていいぞ。あと一人称俺な


「俺……」


 ブラック林道

 今はそんなことどうでもいいだろ裁ちバサミカッター


「あ……」


 イスのローラー

 どうした


 俺は、持っている機械に俺が見ているものを映した。


 イスのローラー

 なんで


 ブラック林道

 来ちまった


 裁ちバサミカッター

 嘘だろ


 記憶を失ってもこの状況は簡単に理解出来る。俺はここで命を落とすと――

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