ダンジョン配信中に記憶が無くなりました
みかづき椛
一話 記憶喪失
僕は男で年齢は十八歳。家族と住んでて全く稼げてはいないが個人でゲーム配信を生業としている……つまり若いニート。
「って誰がニートじゃい! 洗濯物畳んでるわ!」
いや……自分で自分にツッコんでる場合じゃない……! とにかくそんな僕は今、家から徒歩一時間で辿り着く北海道にあるダンジョンと呼ばれる暗い洞窟の入口の前に来ていた。
「行くぞ……!」
魔法で左掌を光らせて洞窟内を照らした。
「これはすなわちシャイニング左ハンドだ!!」
まだ配信をスタートしていないのにも関わらず僕はおもしろワードを言う。
「シャイニング左ハンド……配信で言おう」
僕はスマホをポケットから取り出し、自撮り棒をスマホにセットした。
「配信行くぞ……ダンジョンは最初配信だから緊張してきた……」
許可の無い者が入ればただただ犯罪者になるだけで将来も危ないから……一人でダンジョン攻略するしかない!
「どれどれ……三人待機してるな……よし! 配信スタート! ポチッ!」
僕の持つスマホがダンジョン内を映し出し、配信スタートとなった。
「みなさんこんにちは! タンしおです!! さぁ、今日も配信始めるぞ! 今日はなんとー……ゲームのダンジョンではなく、ガチのダンジョンに来ましたーー!!」
イスのローラー
は? お前ダンジョンにいるの?
「そうだよ! ダンジョン配信!!」
ブラック林道
リアルなダンジョンって一般人立入禁止じゃなかったか?
裁ちバサミカッター
ダンジョンに入るって許可がいるはず
「いやだな〜裁ちバサミカッター君〜。僕なんかが許可取れないに決まってるじゃな〜い」
イスのローラー
そもそも宝なんてあるかどうかもあるか分からないのに行くなよ
この配信サイトでは、リスナーのコメントが音声となって流れる仕組みだ。だから画面を見なくても声が聞こえるから便利だ。
「いや、知らないけど宝は絶対にあるはず!」
僕は三人しかいないメンバーシップのリスナーにダンジョン捜索を止められながらでも、お宝はあると自信満々に言ってダンジョンと呼ばれる洞窟に入った。正直、危険な場所であることはめちゃくちゃ重々承知だ。それでも……リスナー三人止まりから脱出したい!!
裁ちバサミカッター
止めとけって!
ブラック林道
死ぬって……引き返すなら今の内だぞ!
ダンジョンはモンスターだらけと言う情報しかない。宝もあるのかも誰も判明していない。言わば未知の領域。その秘密を僕が暴いたら捕まっても富も名声も独り占めなんだ!
「ダンジョン攻略するぜー!!」
*
「ゴルアァァァ!!」
数分後、僕はダンジョン内でモンスターが叫ぶ声を耳にした。
「いやいや……平気ですよ」
裁ちバサミカッター
まじで帰れよ
イスのローラー
タヒるから!
ブラック林道
体震えてるぞ
「大丈夫!! 僕は死なん!!」
僕はリスナーの三人にそう宣言すると、曲がり角を曲がってきた体長2メートル程のドラゴンが僕の目の前に現れた。
「おぉ……きゅうに……」
僕はドラゴンから逃げる為にドラゴンから背を向けて一目散に走り始めた。
「ゴルアァァ!!」
ドラゴンの叫び声を消えて振り返ると、ドラゴンは僕を追っていた。
「うおおおお!! 死んでたまるかーー!!」
ブラック林道
逃げるんじゃねーか
「うるせーー!! あくまでロマンだからな!! ドラゴンを倒すことはロマンじゃねぇ!!」
裁ちバサミカッター
タンしお、足速いのか?
「100m20秒超えは伊達じゃねーよ!!」
ブラック林道
遅いじゃねーか!
イスのローラー
光の魔法は?
「そうだ魔法!! 思い出してくれてナイスイスのローラー!! って言いずらいな! 僕がユーザー名指示しといてなんだが!」
僕らツッコミを入れた直後に強い光をドラゴンに向けて放った。
「眩しい光くらえーー!!」
「ゴアァァァ!!」
ドラゴンは突然放たれた強い光にひるんだ様だった。
「良し! 今の内だ!」
僕はダッシュでドラゴンから離れた。
ブラック林道
もう帰れって
数分後、ドラゴンから逃げ切った僕はめっちゃ視聴者数上がってると期待しながら観覧数を見ると、再生数が一桁だった。
「なんで……!!」
イスのローラー
そもそも底辺だし
裁ちバサミカッター
何も成果も上げるまで俺は拡散希望しねぇよ
「そ……そうか……」
僕はショックで地面に膝を着いて顔を下に向けた。
「ドラゴンから逃げる姿……凄い撮れ高だったのに……」
裁ちバサミカッター
スクショしたが、モンスターからただ逃げるだけなら他の捕まった配信者でもいたしな
「まさか!! 低視聴のままあの世に行ってしまうのか!! それは嫌だぜ!! ブラック林道君!!」
イスのローラー
アーカイブ残せばちょい全然有名になれるよ。ただの犯罪者としてだけど
「確かに……こままだとただの犯罪者だな……」
ブラック林道
分かったならもう帰れ
「あっ! ヤバい!」
裁ちバサミカッター
どうした! 迷子になったのか!
「いや……迷子は迷子なんだけど……」
裁ちバサミカッター
迷子かい!
「なんか……光ってね……」
僕の視界に入っている壁が、隣の部屋から光が少し漏れ出ていた。僕は光っている壁をリスナーに見せた。
裁ちバサミカッター
おいおいお宝あるのか!
「あるかもーー!?」
ブラック林道
大丈夫か?
イスのローラー
壁壊したら音でドラゴンにバレるかも
僕は壁をくまなく調べ始める。すると、ボタンのような出っ張りがあった。
「これ押したら壁動くんじゃね。ポチッと押してみる」
僕は出っ張っている壁を押した。すると壁が動き出した。
「来た!」
壁が開いたその先には金色に輝く物がたくさん……そう……宝の山だ!! 僕はリスナーに宝箱の山を見せた。
イスのローラー
えええええ
裁ちバサミカッター
マジか
ブラック林道
やばいやばい
「っしゃーー!! 見つけたぜーー!! おたからぁーー!!」
僕はそう叫びなが宝の山がある部屋に入って行った。
「よっしゃー! これで僕は人生バラ色だぜー!」
ブラック林道
すげぇぇぇ
イスのローラー
本当にあった……宝が
裁ちバサミカッター
お前なら行けると思ってたぜ!
「嘘つけー! 思ってなかっただろ!」
僕は裁ちばさみカッターにツッコミを入れた時、視界に宝箱が目に入った。
「おっ! 見て! 宝箱発見!」
裁ちバサミカッター
宝箱か!
ブラック林道
宝箱ってすげぇな
イスのローラー
開けてみて!
「開けるぞお前ら!」
僕はリスナーに宝箱を見せながら、宝箱の蓋を開けた。
裁ちバサミカッター
え? 空だ
ブラック林道
中身が入ってねぇな
イスのローラー
あれ? 画面が……
裁ちバサミカッター
おい、スマホ落としたぞ
ブラック林道
タンしおどした
「……ここはどこ?」
裁ちバサミカッター
は
「……私は誰?」
ブラック林道
まさか記憶喪失か?
裁ちバサミカッター
いやいや冗談だろ
イスのローラー
ガチ?
ブラック林道
嘘だろ……
イスのローラー
まさかトラップ!?
裁ちバサミカッター
やべーじゃんつまり罠じゃん
ブラック林道
とにかく画面見ろタンしお!
「うぅ……」
裁ちバサミカッター
駄目だ……うなされてる声しか聞こえねぇ
「ゴルアァァ!!」
イスのローラー
やばい……ドラゴンの鳴き声がする……
ブラック林道
今ドラゴンが来たら終わりだ!
裁ちバサミカッター
早く見ろ画面!
ブラック林道
そうだ! 誰かタンしおに連絡しろ!
イスのローラー
僕はタンしおの連絡先知らない
裁ちバサミカッター
僕も知らない
ブラック林道
くそ! タンしお! 画面を見やがれ!
「なんだこれは……」
僕はわけも分からず、目の前にあった喋る物に手を伸ばした。
イスのローラー
タンしお画面見た!
「顔が映ってる……」
ブラック林道
おい! タンしお! お前はダンジョン配信中に記憶喪失になったんだ!
どうやら私は……何かをしている時に記憶を失ってしまったらしい……
「私の名前は……?」
ブラック林道
お前はタンしおだろ。本名は知らん
「う〜ん……」
イスのローラー
一人称変わってるし
ブラック林道
とりあえず軽いお宝1個持って外に出ろ
「……分かりました」
裁ちバサミカッター
敬語じゃなくていいぞ。あと一人称僕な
「僕……」
ブラック林道
今はそんなことどうでもいいだろ裁ちバサミカッター
「あ……」
イスのローラー
どうした
僕は、持っている機械に部屋に入って来たものを映した。
イスのローラー
なんで
ブラック林道
来ちまったよドラゴンが
裁ちバサミカッター
くそが!!
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