恋愛

 最近、ネットフリックスで「ラブ・オン・スペクトラム」という自閉症の人がデートをする番組を見ている。


 海外だと人と目を見て話すのが普通だから、視線が合わないということもないし、みな笑顔で話しているから、ぱっと見では自閉症というのがわからない人たちばかりだ。俺が彼らから見て外国人だから気が付かないだけかもしれないが。


 番組の中には、数人の男女が出てくるのだけど、初デートの様子を見ていて、微笑ましくていいなぁと思う。一緒にピクニックに行くシーンがあった。女性は母親に連れられて来る。正直言って、ちょっとぽっちゃりで美人ではない人だ。普通の男だったら、ちょっとがっかりするかもしれない。

 でも、喋ると優しく、かわいい感じだった。


 女性がしきりにビューティフルと言っている。


 二人の間に穏やかで優しい空気が流れている。俺みたいな雑な人間には絶対に出せない平和で温かい空気感。素敵だった。


 しかし、自閉症の人は自閉症の人としか付き合えないのか…。ちょっと疑問に思ったけど、交際相手を一般に募集したら、やっぱり上手くいかないだろうと後から気が付いた。金目当てか、猥褻目的の人しか来ないかもしれない。普通は障害のある人と付き合いたいとは思わないだろう。知らずに出会って、徐々に親しくなって…というのでないと、難しいのかもしれない。


 こんな風に上から目線で見てても、自分自身、恋愛をしたことがない。恋愛なんて、ひたすら面倒臭いし、ドラマや映画でも見たくないし、人の話も聞きたくない。しかし、普通は恋愛の先に結婚がある。


 番組出演者の若い男が恋愛アドバイザーのような人を家に呼んでレクチャーを受けていた。その人は中年の女性だった。母親と同じくらいの年齢で優し気だった。


 異性の友達(もし、いれば)に相談とかでもいいだろうけど、ああいうプロの人と会ってみるのもいいかもしれないと思った。単にモテるということより、会話の進め方とか、相手の気持ちを理解する方法とか、距離の詰め方などアドバイスをもらったら結構変わるかもしれない。


 俺ももっとスムーズに人と付き合えたらよかったなと思う。日本人は察する文化だから、余計に複雑だ。もし、自分がもっと改善しようとしていたら、若い頃に苦労しなくて済んだかもしれない。若い頃は職場で同世代に嫌われて疲れた。俺は人といる時はできるだけ聞き役に回るようにしている。間を持たせるにはそれしかない。何か言うと上から目線、マウントと言われる気がする。今もパートナーに言われている。


 ASDで結婚している人の割合はわずかに一割しかいないらしい。そのうちの大部分は女性のような気がする。女性は本人が望めば(基本的に)誰でも結婚できる。顔や体型は関係ない。持病などがある場合は、選択肢が減るかもしれないが、若いうちはどんな人でも男に誘われるのが普通らしい。寝たきりの人や知的障害の人も結婚していた。男は異性に対して、女性ほど多くを求めないのかもしれない。


 問題はASDの男。自分の場合は、付き合えても相手が離れて行くから、ずっと一人だった。だから、どうすればいいかなんて俺にはコメントできない。


 結婚できてる人のアドバイスや意見を参考にしたらいいのかもしれない。Noteとかで、ADSで既婚の人が記事を書いていた。または、女性の気持ちを理解するために、女性と仕事で話すのがいいのかもしれない。俺の知っている人で、前はコミュ障だったのに、人材紹介会社のコーディネーターになってから、女性と話せるようになったという人がいた。もともと見た目は普通だし、彼女がいそうでいない人だったが、数年後に、結婚相談所で知り合った人と結婚していた。


 会話は重要だ。女性と男性は本質的に違うから、男らしさを打ち出して自分らしくあるより、女性に寄り添った方がより建設的な関係を築けるんじゃないかと思う。少なくとも、女性受けは狙える。


 俺自身は今は相手がいるから、出会いを求めているわけじゃないけど、その人との関係についても、本でも読んで改善して行った方がいい気がして来た。


 その人からは、俺はいつも否定ばかりで肯定してくれないと言われている。俺とその人は結構かけ離れた境遇にあるから、なかなか折り合わない。俺は大卒だけど、あちらは違う。趣味も価値観も違う。基本的には合わない気がするけど、せっかく一緒にいるんだから、俺も変わらなくてはいけないと思う。


 人生で後悔していることはあまりないのだが、若い頃に恋愛できなかったというのだけは、心残りである。

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