森田療法(書籍を追加)

 このエッセイが地味に読まれているので、続きを書いてみる。


 十代の頃、神経症に悩まされていて、心理学の本を何冊か読んだのだが、その中に森田療法をやっている精神科医の本が混じっていた。この本が俺にとっては画期的だった。人生を変えた一冊と言えばその本で、それがなかったら今どうしているかわからないくらいだ。


 自分の場合は、十代の頃、視線恐怖症があり、人前だけでなく、常に何か発言することに困難を感じていた。神経症の人というのはそもそも自意識過剰だから、人のために何かするという視点が欠けているそうだ。数十年前に読んだから、かなりあいまいなのだが、基本的に自己中という訳だ。


 だから、人のために何かするということで、自己中の状態から脱却できるらしい。会社や家を掃除したりすると、人から感謝され、自分も精神的にすっきりするという話が書いてあった。それから、俺は家を掃除したりした気がする。


 そして、苦手なことからは逃げない。例えば、どうしても固定電話の受話器を取ることができない人がいたら、無理矢理でもやること。これを”あるがまま”と言うのだが、森田療法を象徴する言葉だと思う。


 それから大切なのは、規則正しい生活をすること。


 不眠症で苦しんでいる人も多いと思うが、眠れなくても横になっていれば、体は休んでいるということなので、俺の場合は決まった時間に寝起きしている。


 元々、対人恐怖症があったが、大学に入ってからは接客のバイトをするようになった。そのおかげで仕事用の人格というのを作り上げることができた。入学当初はファストフードなどでもバイトをした。人の目を見て話す。明るく笑顔で。マニュアルがあるから、何を話せばいいか困ることはない。その後は大学生のくせに、営業もやっていた。相手に買う気がなくても、空気が読めないから一方的に話して、その気になって買ってくれる人もいた。成績はよかった。仕事熱心だから社員にならないかと言われたけど、当然、断った。


 気が付いたら、視線恐怖などは自然に治って行った。


 でも、真のコミュニケーションは苦手だから、仕事以外で人と接するとストレスがたまる。だから、今は極力人には会わないし、関わらない。自分に合う人は多分いないと思うが、全く寂しくない。以前は恋人や友達を作ろうと腐心していて、実際付き合いがあったけど、今は全くなくなった。俺は人から見たらかわいそうかもしれないが、自分ではそうは思っていない。


 森田療法は本を読んで実践できるから、普通の人でも生活に取り入れるのは悪くないと思う。森田療法の適用は下記の通り。不安症には効果があるようだが、他の精神疾患には合わない可能性がある。


 強迫症(強迫性障害)、社交不安症(社交不安障害)、パニック症(パニック障害)、広場恐怖症(広場恐怖)、全般性不安症(全般性不安障害)、身体症状症(身体表現性障害)、病気不安症(心気症)、長引くうつ病、不登校・ひきこもり

「東京慈恵医大HPより」


 基本的には俺と同じように対人恐怖症などがある人に向いているのかもしれない。


***


 2024年 加筆


 さっき書いた本は、「心が強くなるクスリ: 「森田式健康法」ノ-ト」というタイトルで、大原健士郎という医学博士が書いた本だ。2010年に亡くなってしまったそうだけど、森田療法を通じて多くの人を救ったに違いないと思う。自〇研究と森田療法で知られた人だったようだ。


 他には「心配症をなおす本」という本もよかった。あるがままを受け入れるという内容なのだが、心の不安や緊張をはねのけることはできないから、感じるままに受け入れるというものだ。これにより、開き直るという境地に達することができた。


 いろいろな本を読んだと思うけど、上記の本に出会ってから、他の本は読まなくなったと思う。


 あとはカソリックの神父が書いた本も読んでいた時期があった。


 あれから三十年近く経っている。人生早かった。今、心穏やかに暮らせていることを考えると、わずか数冊の本が人生を変えてくれた気がしている。変わるきっかけは色々あるだろうけど、本も読んでみた方がいいと思う。たくさん読んでいるうちにというのが見つかるかもしれない。

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