永続するキャラクターへの揶揄
暗黒後光
水をさすだけの頭の悪い揶揄
「昔は凄かったのに、今は落ちぶれてしまった」という造形のキャラクターは珍しくありません。ただ、その変化の過程が作中で描かれたキャラクターは(私の無識もあって)あまり思い浮かばないのです。でも、それも当然のことでしょう。評価の転落、失望、落胆ほど、価値を損なわせるものはありませんからね。
特に注目したいのは、「有能」という太鼓判を押されたキャラクターが作中で著しい活躍をして、その「有能さ」から消費者の人気を得たパターンです。そういったキャラクターは、いかに時勢や環境が変動しようとも、一定の成果を残し、結末がどうあれその評価を保持し続ける。
でも、現実はもっと厳しいです。「有能」と品評された人が、数週間ほどで名誉を返上することなんか珍しくありません。そういうのって、たまたま冴えていたり、思考と時勢が噛み合ったり、運が良かっただけの人が多いでしょう。
だから、「有能」とされるキャラを見ると、少し複雑な気持ちになります。その人の「有能さ」は、物語という舞台を構成する盤石のプロットに補強されているからで、現実でも有能と呼ばれる人が犯すような、些細なミスとは無縁ですから。
もちろん、そういうリアリティを描いたからといって、魅力的なキャラクターになったり、作品が面白くなったりするとは限りません。仮に再現しても不評となるでしょうし、「有能な人間がいつまでも有能な事例などありますか?」などと言っても、水をさすだけの頭の悪い揶揄にしかならないでしょう。
本当は「キャラクターの変化」について色々と書きたいと思ったのですが、私には荷が重いと、上の文章を書いているときに気づきました。たとえば、「キャラクターの肉体的な変化よりも、思想の変化が受け入れ難いのはなぜか」といったテーマで悪役の改心を例に挙げて考察したり、「性的魅力を売りにしたキャラクターが老人になっても、同一のキャラクターといえるのか」という考えから書いてみたりすることを企てていました。しかし、私の頭では、どうも面白い読み物にはならない。
結果的に、私の所感は水をさすだけの頭の悪い揶揄に近いものとなってしまいました。本当は、読者に水を向けるような考察にするつもりだったのに。
永続するキャラクターへの揶揄 暗黒後光 @blacknaito
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