第23話 進級試験・魔術研究 初等部5年生
魔術の研究は奥が深い。
杖に術式を付与するときは、幾何学模様を描いた魔法陣を使う。
魔法のように簡単に魔術を使える図形だから魔法陣である。
図形もルールがあり、基本ルールは、始点と終点を同じにしなければならない。
つまり、書き始めたところから図形を描き、元の点に戻ると言うことだ。
その図形一つで一節という計算となる。
ちなみに「節」と数えるのは、詠唱時に、言葉を区切るポイントまでを一つの図形で表すからである。
昔はポエムのような詠唱魔術も使われていたようだが、色々イジるうちに、ワケのなからない文字列になったから使われなくなったそうだ。
それくらい、現代の魔術は進化している。
術式だけで言えば、数えきれない魔法陣が開発され、流行り廃りを繰り返し、洗練されていった。
そこで、俺は一つの魔術に興味を持った。
時魔術に並ぶ、夢の魔術、重力魔術である。
本当は時魔術の方が魅力的だが、倫理に反すると、一般公開はされていない。
一説によると、理論上の術式はあっても、その魔術を発動させられるだけの魔力の持ち主がおらず、実験すらされていないとか。
あと、魅力的なのは、光のマナを使う精霊魔術だが、魔力量的に実用的ではなかったので、今回は見送った。
今後の自分の成長に期待したい。
しかし、無いものには拘らず、まずは、重力魔術の研究を進める。
今回はダンジョンクリアが目的であるが、上級ダンジョンのマスターは魔闘法だけでは倒せないらしい。
魔闘士が束になって、足止めをしたところに強力な魔術で攻撃し続けることで倒せるらしい。
つまり、今回タンク役の俺は足止め係となる。
もちろん魔闘士であるオリビアも足止めとなり、フォール、アネモネの2人が攻撃担当となる。
フォールは冰剣で近接、アネモネが後衛から巨大魔術を放つという大まかな作戦は考えてある。
オリビア、フォールの2人も魔闘士としては一人前の域に達しているようで、ラースのお墨付きだ。
しかし、あくまで、タンク役は俺だ。
だから、杖に土魔術の盾を装備し、モンスターを重力魔術で釘付けにする。
これができて初めて少人数パーティのタンク役ができる。
理想としては、モンスターハウスに突っ込んでも、範囲で重力をかけられるようになりたい。
もちろん、味方を巻き込まない形で。
そのために、64節全てを活用したい。
まず、味方を巻き込まない術式を調べると、これは簡単だった。
巨大魔術を発動する際によく使うらしい。
簡単な図形の4節で済んだ。残り60節。
次に、重力魔術について調べる。
こちらは、予想通り複雑で、かつ、条件付けが多数あった。
図形同士を繋げるための図形や、一見必要なさそうだが、無いと魔術が発動しない図形など、難解であった。
だから、魔術を2つに分けて使うことにする。
1つ目は、任意の方向に5m×1m×1mの直方体の範囲内に触れる物体全てに、重力を10倍にするという魔術。
範囲は狭いが、重力が強力である。
マスター戦で使う予定である。
魔法陣はかなり描き込んだので、18節も使った。
必要な魔力はおよそ魔速400mpで発動する。
2つ目は、自身の右手を中心とする半径10m高さ1mの円柱の範囲に、5倍の重力を発生させる魔術。
範囲は広いが、重力は5倍に抑えた。
5倍では、強力なモンスターは足止め程度で、攻撃してくる。
10倍では、通常モンスターは圧死するレベルで、マスタークラスでは、完全に足止めできる。
効果範囲を広げる術式に容量を取られ、24節となった。
必要魔力は450mpと高い。
闇属性で魔速450mpを出すには、土と水を両方900mpずつ合成する必要があるので、かなりの重労働と言える。
測ったわけでは無いのではっきりとはわからないが、俺の魔力は国を水没させるだけの瞬発力がある。
それだけの出力があるなら、さほど疲れることなく、連発できると考えている。
ちなみに、魔力の使いすぎによる疲労は肉体疲労と似ている。
疲労が溜まると、全身がダルくなり、心拍数が上がる。
限界まで魔術を使うと、ゲートのブレーキが効かずにマナ暴走を起こす。
その際、魔力が大きいほど、被害は大きくなる。
アネモネの両親の事故現場は20mの球形に空間が無くなるというものであった。
マナ暴走としては、珍しいケースで、使用した術式が空間系であることを示していた。
20mの球形という範囲が広いのか狭いのかはわからない。
俺の暴走はジンパッグ全土ということなので、とんでもない効果範囲だと言える。
単純に比較できるわけでは無いが、特級であるアネモネの両親より、神殺しである俺の方が魔力が高いと予想している。
ダンジョンは竜脈にできるので、マナの心配は無用だ。
これらの魔術と、大治癒ラージヒールと、解毒魔術を杖に付与した。
次に、ダンジョンについて調べる必要がある。
これは、みんなでやろう。
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