【書籍試し読み増量版】最低キャラに転生した俺は生き残りたい1/霜月雹花
MFブックス
第一章 ゲーム世界(1)
聖剣勇者と七人の戦女。
魔王を討つため聖剣に選ばれた勇者と、勇者と共に戦うために力を与えられた七人の少女が戦うゲーム。
ギャルゲーなのにストーリーがかなり作り込まれており、悪役キャラでさえも一人一人個性のある物語。
「なのに何で俺は、悪役キャラの中で一番人気のない最低キャラに転生してんだよ……」
俺、
交通事故で意識が飛ぶと、生前にかなりやり込んでいたゲームの世界のキャラに転生していた。
正直、まだ
ここが〝聖剣勇者と七人の戦女〟の世界だと気付いた時は、ベッドから飛び跳ねるほどに興奮した。
しかし、その次に自分の姿を見て気絶するほど、俺はショックを受けた。
ジン・フォン・ラージニア。
金髪
前世の名と同じ名前のキャラだが、こいつはこのゲームの悪役キャラの中で断トツで人気がなく、最低なキャラとして知られていた。
ラージニア侯爵家の長男として生まれたこいつだが、色々と問題を詰め込まれたキャラだ。
「って待て、今の俺は何歳だ? そこはかなり重要だぞっ」
急いで俺は、この世界がゲームならと思い、「ステータス」と小声を発した。
すると、俺の前には透明のボードが現れ、俺の情報が詳細に書かれていた。
◆
名 前:ジン・フォン・ラージニア
年 齢:12
種 族:ヒューマン
身 分:ラージニア侯爵家・長男
性 別:男
属 性:火・水・風・土・光
レベル:28
筋 力:442
魔 力:1036
運 :76
スキル:【鑑定:2】【状態異常耐性:2】【剣術:3】
【魔力強化:3】【火属性魔法:3】【水属性魔法:3】
【風属性魔法:3】【土属性魔法:2】【光属性魔法:4】
【魔力探知:4】
固 有:【成長促進】【異空間ボックス】
能 力
称 号:神童 加護持ち
加 護:魔法神の加護 武神の加護 剣神の加護
◆
十二歳! ってことは、まだ悪に
ジンというこのキャラは、最低キャラとして有名だが、こいつが悪役に堕ちてしまうイベントが十五歳頃に起きる。
「ってか、
ゲームキャラには、いくつか特殊なスキルを持ったキャラが何人かいる。
その中でも、このジンというキャラは最強のチートキャラ。
生まれた時点で今持っているほとんどのスキルを持っており、神の加護も複数あった。
そんなキャラがなぜ、悪の道に堕ちたのか? それはこいつの環境がそうさせたからだ。
ジンの生まれはラージニア家ではあるが、現当主が酔った勢いでメイドに手を付けてできた子供。
そのため、生まれた時から疎まれた存在だった。
ジンは自分の過ちで作った父親から嫌われていた。
そんなジンは成長するにつれ、精神がおかしくなっていった。
ジンが悪に完全に堕ちたのは、ストーリー上では序盤の十五歳。
婚約者であり、七人の戦女の一人、フローラから婚約を破棄され、主人公に倒されたのがキッカケだった。
この時、正直俺は二人の問題なのに勇者が入るのはおかしいだろとは思ったが、それが物語だから仕方ないと思いながら俺は主人公である勇者を操作していた。
勇者に倒され、フローラを失い、家族からも捨てられた。
それにより、ジンは悪の道へと進んでいった。
その後、勇者は戦女
元の強さが高いジンは勇者達を圧倒し、魔王以上に世界に混乱を招いた。
非道な行いはあたりまえで、女子供でも容赦しない。
時には何の罪もない相手だろうと、
その結果、ジンはこのゲームで〝最低最悪のキャラ〟として攻略サイトなどに書かれることとなった。
「でも、俺はまだその悪役に堕ちる前に転生できた。これは、今からでも物語を変えることができるぞ……」
そう思った俺は気合を入れ、行動に移すことにした。
まずは自分の能力を再確認するべきだと思い、部屋着から着替え、外に出た。
使用人が一人も付けられていない俺は、離れでほぼ一人暮らしの状態。
母親もすでに数年前に亡くなっている。
「母親が居なくなったのも、こいつにとっては大きい傷だったみたいだしな……」
家族から疎まれるなか、母親だけがジンに優しく接していた。
しかし、
実はこの話には裏があり、本当はジンの母親は流行り病ではなく毒薬によって殺された。
後にこの話を知ったジンが、ラージニア家を潰したのは言うまでもない。
「さてと、それじゃあ色々と実験をするか。まずは、体の動きから確認しよう」
ジンは魔法系のスキルが多いが、作中屈指のチートキャラのため、魔法と剣術のどちらも訓練さえすれば最強クラスになれただろうと考察サイトに書かれていた。
実際、勇者と剣で勝負した場面でもほとんど魔法しか使ってなかったくせに、勇者と互角に戦っていた。
勇者とジン、二人の違いは聖剣に選ばれているかいないか、仲間がいるかいないかの二点。この二つがなかったらジンは勇者以上の強さを持っていると、開発元の会社が後に明かしていた。
その後、体を動かして色々と確認した俺は離れの家に戻り、飯を食べながら今後について考えることにした。
正直、このままここに居たら俺としても色々と嫌なことが起こるのはわかっている。
「確かジンに対しての扱いが
そう思っているとこの家の呼び鈴が鳴り、玄関に向かった。
玄関の扉を開けると、そこには本館の執事長が立っていた。
「ジン様、旦那様がお呼びです」
「……わかった」
そうだ! 確か、十二歳の誕生日を迎えた次の日にジンは当主に呼び出されていた。
その時、ジンは家を出るか次男のストレス発散用の動く的になるかの二択を迫られていた。
この時、まだ外で生きていけないと思ったジンは苦渋の決断で次男の的になることを選択して、それから三年間次男の的として生きることになった。
いやでも、本当にそう言われるか心配だな……ゲーム世界だったらそうだけど、ここはゲームの世界であってもリアルな現実……。
「ジン、お前に選ばせてやる。家を出るか、アルフォンスの遊び相手になるかどっちがいい」
心配は
よかった! ちゃんと、言ってくれた!
心の中でそう喜んだ俺は、
その後、本当にお前は家を出るんだぞ? と念を押されたが、理解していると言った。
すでに婚約者がいる身なので、その場ですぐに出されるということにはならず、婚約者の家に使いの者を出して事の
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