第7話 第二次八王子危機
「黄昏戦闘団…ですね…Aランク「海原ナギ」様
にBランク「斎藤直人」様、「北島由美」様
…Aランクパーティーとして登録しますが、よろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
というわけで、冒険者協会のこの町の支部にてパーティ登録。
因みに全部、直人に丸投げだ…これぞ、言い出しっぺの法則!
「ところで、由美、お前らはどこまでスキルを使いこなせるんだ」
「うん?えーとね、私も直人もまあ、ふふふ、かなり戦えるよ!」
「へー」
「む、なにその態度」
「いや、費用ベースで考えるとだな、イージス艦が大体1000億円、戦闘ヘリが100億、戦車が10億…つまり俺が一番上だな!」
「おい、こら俺が一番ヒエラルキーが低いと言いたいのか」
と、ちょうど手続きが終わった直人が戻ってきた。
「…いや、だって実際、各国の軍隊の演習でな…戦闘ヘリと戦車のキルレシオは、まあ悲惨なものだろう」
戦闘ヘリは戦車を狩るための兵器だからな…。均質圧延装甲をゆうに1000mm以上は軽く貫徹できる誘導ミサイルを10km先からアウトレンジできる…まあ、そりゃあ一方的に狩られるよ…戦車単体じゃ。
「ふん、俺の近接信管付きheat弾の恐ろしさを知らないのか!」
せいぜい射程3kmぐらいだろ、それ…。
「…いやだからアウトレンジされたら終わりだろ」
「あれー、直人、もしかしてぶっちぎりで最弱?」
「く…お前ら言いたい放題しやがって」
直人が地団駄を踏む…おっといじめすぎたかな?
「それよりアレだろ、探索者って活躍すれば二つ名貰えるんだろ」
「いな、ナギお前、随分気が早いな…」
「ふはは、ちなみ、俺の二つ名は「トマホーク海原」だ」
「そんなに…僕たちの力が見たいのか……」
「あはは、直人、全く似てないねー」
「そうだぞ、本物のアスロック米〇さんはな、もっとこう」
そんな俺たちがどうでもいい話をしている時だった。
なんかいつの間にか探索者協会の人たちが慌ただしくしだした…。
「あれ、なんだろー?」
由美が疑問の声を上げたその時。
慌てた様子で、支部長が二階から降りてきた。
「…君たち、良かった、まだいたか」
「…俺たちに、なにか?」
「君たちは先ほどAランクパーティーになった、つまり緊急時には招集に応じる義務がある」
「…つまり、あれですか…なにか緊急事態が起きたと」
「ああ、場所は八王子特別区の中心部、スタンピードが発生した…報告によると危険度はSランク」
「Sランク…ですか」
Sランクスタンピード…つまり、国家の危機レベルの事象だ。
通報を受けスクランブルした航空自衛隊所属F35戦闘機2機は八王子特別区上空に到達。
そして、その異様な光景を目の当たりにした。
「…こ、これは」
そこには数百体はいるであろう、巨大な蜂型のモンスター。そして地上には巨大なワーム型の魔物百体以上。
第二次八王子危機、後に「八王子決戦」と呼ばれるスタンピードが発生したのであった。
翌日、八王子特別区庁舎内のスタンピード対策本部。
その大きな会議室では多くの探索者と職員や関係者が集っていた。
しかし、そこに萬栄するのはただひたすらの…焦り。
「Aランクダンジョンボス級モンスター「アルティメットビー」数百体にBランクダンジョンボス級モンスター「エルダーワーム」百体だって?」
「ふ、ふざけんな、そんなのSランク冒険者がダース単位でいたって対処できねぇよ」
「そ、そうよ、自衛隊は、なにをしているのよ!」
「…発生場所が都市の中心部だ…二次被害を懸念してか、政府の動きも鈍い」
「とりあえず、屋内に避難すれば安全な状況らしいが…いつなにが起きるか…」
前代未聞の規模のスタンピード、それは既存の探索者たちの対応能力の限界を超えたもの。
確実に自衛隊の介入が必要なレベル…しかし場所は市街地…大火力の兵器をそう簡単に使用はできない状況。
会議室には絶望感が漂う。これでは、八王子は…壊滅すると。
「たのもーう!」
とそこで、謎の掛け声とともに会議室のドアが勢いよく開かれる。
室内に一瞬沈黙が落ちる。
「おい、ナギ、空気読めよ」
「…全くねー」
入ってきたのは学生服に身を包んだ少年少女三人。
特に茶髪に碧眼の日本人離れした美しい少女が目立っている。
「…君たちは、なんだね?」
と、ここまで会議の様子を黙って見届けていた、八王子特別区区長がそう問いかける。
「俺たちはAランクパーティー「黄昏戦闘団」だ、俺はリーダーのナギ」
と、茶髪の少女が答える。
「待っていたよ、ナギ君!」
と、そこで、こちらも今まで黙っていたSランク冒険者「閃光の工藤」が声を上げる。
「あ、工藤さん、どうも、お元気そうでなによりです」
「ふむ、工藤君、この子たちは?」
「区長、このナギ君たちこそ…今回の事態を解決する鍵です」
「鍵…だと?」
会議室がにわかに騒がしくなる。
様々な言葉が飛び交う。
やれ、子供三人に何ができるのだの。
やれ、工藤さんがおかしくなったのだの。
「…アハハハハハっ!」
と、そこで茶髪の少女が大声で笑いだす。
「…なにがおかしい?」
一人の探索者、がそう少女に問いかける。
「いや?…ただ、まあ口が回る時代遅れの無能共だなぁって」
そう、少女、ナギは露骨に嘲りの表情を浮かべそう言ったのであった。
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