第5話 トマホーク海原
俺が動こうとした瞬間。
「閃光」
工藤さんが強烈な光を発する。
「…ぐっ!」
一時的に俺の目は使い物にならなくなる。
…なるほど、閃光ってそういう意味だったのね。いやせこっ!
だが…甘い。
イージス艦は高性能な索敵センサーの塊、視力に頼れなくなったところで問題ない。
工藤さんの位置を探知、真後ろか!
一気に振り返り腕を伸ばし。
―ドンッ!
25mm機関砲を一発放つ。
「ぐえっ!」
「…ん?」
今なんかカエルがつぶれるような悲鳴が聞こえたような…いやまさかね。
とりあえず後続射撃を。
「ナギ君!そこまでだ!やめたまえ!!!」
「…へ?」
と同時に視力が回復する。
そして目の前には、仰向けに倒れピクピクしている工藤さん。
…え?
「医務班急げ!」
…えええ?
そのまま運ばれていく工藤さん。
「…」
「…」
無言の俺と支部長。
どうすんだよ…この空気、いや、まあ、25mm機関砲直撃して五体満足なだけですごいけどさ…
「ワハハ、まさか一撃とはな」
とそこで近づいてくる人影。
いや、またなんか変な人が増えたよ…。
それは長身の爺さん。
「協会長!」
…うん、どうやら偉い人っぽい。
「小娘、やるなぁ!」
「は、はぁ」
なん、なんだ、この爺さん。
「…というわけで、次の相手はわしじゃ!」
「いや、どういういわけ!?」
「…さすがにこのままでは、日本支部の名が地に落ちるからな、「鉄壁の斎藤」、ユニークスキル保有者のこのわしが相手になる!」
あ、斎藤さんっていうのですね…。
「…支部長さん?」
「…すまない」
あー、これ逃げられない奴だなぁ…。
「準備はいいか、ナギよ!」
「はい、いいですよ…」
というわけで急遽始まった二回戦。
「では…はじめ!」
あーあ、始まっちゃったよ、これ…。
「ふんぬ!」
と斎藤さんは大きな二つの大盾を構える。
えーと…うん、撃ち込んで来いということか。
「25mm機関砲」
―ドンッ、ドンッ、ドンッ
海賊船程度なら粉砕できる25mm機関砲を連射するが…。
―ガキンッ、ガキンッ
なんと、防がれた…あの盾、普通の素材じゃない…ダンジョン産の装備かな?
「…次はこちらからゆくぞ!」
そう言って盾を構え突撃してくる斎藤さん。
それに対して俺は10万馬力から繰り出される雑な蹴りを盾に叩きつける。
「…ぬっ!」
少し後ずさるがそれを受け止める、斎藤さん。
…おお、この人も大概人間をやめているなぁ。なら
「ファイア」
不意打ち気味に127ミリ砲を至近距離でぶっ放す。
「ぐわっ…つ」
5インチ砲弾の直撃を受けて吹き飛ぶ斎藤さん。
だが空中で姿勢を整え、着地する。
「…わはは、凄まじいな、戦闘技術では覆しようがないほどの単純なパワー差がある!」
まあ、そうだ、俺のスキルが強力すぎて、素人のはずの俺に戦闘のプロであるSランク冒険者が何もできていない。
さてここからどうしよう?このまま127mmを速射してサクッと制圧するか…いや。
まあもうどうせなら、派手に行こうじゃあないか。
「斎藤さん」
「む、なんだ?」
「最後は派手に行こうと思うのだけど…どうですかね?」
「…くはは、最後、だと!?良い、良いぞ、こい小娘!全力で」
いやまあ、全力となるとアレを使うから無理だけど。
「…トマホーク!」
そう唱える、すると横から巨大な巡行ミサイルが出現する。
ふふふ、「トマホーク海原」とは俺のこと!
すでにエンジン全開の状態で、このまま放てば瞬時に亜音速に達する。
「待て!ナギ君!流石にそれは人に使うものではない!!」
「いいや、いいわしが許可する、こい!」
…なら遠慮なく。
「総員、退避するんだ!」
支部長がそう叫ぶ。
まあ、この演習場、かなり広いからいくら巡航ミサイルでも他の人が加害範囲にはいることないだろう。
では…
「ファイア」
トマホークが放たれ、斎藤さんに直撃し爆発する。
「…くっ!」
数十メートル離れているのに爆風が中々だ。まあ多分、普通に加害範囲だろうしね。
暫くして視界が晴れる。
そこには…仰向けになった、満身創痍で、しかし五体満足の斎藤さん。大盾は衝撃で粉々となったようだ。
「…ふ、は、は、な、何とかうけきった、ぞ!」
おいおい…マジかよ…。
「…人が…巡行ミサイルを受け止めるんですね…」
…あれだ、正直、探索者というものを舐めていた。
Sランクの中でおそらく上位陣なら現用主力戦車に単独で渡り合えるかもしれないね。
「支部長」
「…なんだ、ナギ君」
「俺、もうぷいったーで探索者煽ってバズるのやめようと思います」
「…いや、君、そんなことしていたのか!?」
というわけで、なんか2回することになったSランク冒険者との模擬戦は終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます