第二章 BLUE MIRAGE

 一行は火星軍基地へと無事到着した。

が、やけに人が集まっている。今日は不死の指導者の実体化の日だった。


「おお、諸君みてくれ、反逆者のご帰還じゃ」

不死の指導者はそう言った。


「なぜ僕らが反逆者なのですか?」


「君たちは、我々の意思決定を管理する人工知能を破壊した、此では戦争も人間社会も働かない」


「あれは、まさか」


「そうあれが父なるものコスモス2だ…あれは私が1世紀前、研究者たちと作ったものなんだ…全てを計画通りに進め、今あるものの殆どを設計し、あの人工知能に学習させた…もちろん人間に関しての情報だってそうだ」


「だから、3世紀も前の人間の情報を与えたのか」


「そうだ、そして君もここを立ち去ることも、既に設計されたものの内なのだよ」


「君たちには着いた許りで申し訳ないが、特にジョン…君には極刑を言い渡す」


「いきなり極刑とは、知性の欠片もないのか」


「指導者様になんたる口の利き方」

長官は叫んだ。


「船を用意してある…使いたまえ」

ジョンは従うしか無かった。


「繰り返さなければ」

最後に不死の指導者は言った。


「いや、思い出すんだよ、やり直すのさ」

僕はそう言い捨てて、船に乗った。


流刑地は、ケプラー1649c、あの地球型惑星に設定されていた。


    ケプラーの使者サロ


 僕は独りケプラーに来た。名前があの人工知能のいた衛星と同じなのが気に入らなかった。僕は一緒に連れてきたスティーブの抜け殻をその地に埋葬した。

丁度、船が降り立った近くの青い花の咲く場所に。

船は片道切符だった。着いた途端壊れて仕舞った。


数日間船の中で過ごした。飲食物を用意してあったとは、此が尽きればサバイバルだ。僕はロビンソン・クルーソーの気分になった。

ある朝、僕の船の扉を叩く音がした。

僕はとっさに目を覚まし、武器が無いので、バゲットを持って扉を開けた。

すると、そこには身長70センチほどの耳も足も丸い生物がいた。


「なんだお前は、食料は遣れないぞ」


「いらないよ」


「何でお前話せるんだ」

僕は驚いた。


「君も宇宙のさすらい人かい?」

その生物は訊いた。


「まあ、今はそんな感じかな」


「前にも、と言っても200年前だけど、宇宙のさすらい人と会ったよ、君はどうしてここへ?」


「流刑さ」


「その人も流刑だったよ」


「そうなのか」

僕は興味が湧いてしまっていた。


「僕はサロだよ…よろしく」


「ジョンだ…よろしく」


此が、僕と余生を共にする仲間サロとの出会いだった。彼は何兆年も宇宙を旅していた。一時期から地球に興味が湧き、彫刻を作っていたらしい。


僕はサロと家をつくり、人類の歴史について聞かせてもらった。

例えばアポロの陰謀論は今でもあるが、1969年に確かに月に行ったと、サロは言った。


そして、そうこうしている内に、僕は歳をとった。もう長くない。サロは僕のベットに来た。


「ねえジョン…気分はどう?」


「悪くない…」


「なら良かった」


「しばらく寝ててね、飲み物を持ってくるよ」


「ありがとう、そうするよ」


ジョンは深い眠りについた。深い深い眠りに…。


「ここは、何処だろう」


「ねえ…」


「え…誰だ」

そこには一人の女性が立っていた。


「君は誰なんだい?どこかであったかな?」


「あったわ…遠い昔に…」


「ここは、何処なんだ?」


「天国への入り口だよ」


「天国…僕なんかが天国になんていけるのかい?」


「行けるわよ、一緒に行きましょ!」


「又、逢えたわね」


「僕には記憶がないんだ」


「ゆっくりで良いわ…ゆっくりで良い」

彼女の横顔は、どこか懐かしく、美しいかった。












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BLUE MIRAGE ToKi @Tk1985

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