第二章 BLUE MIRAGE

     Into the blue mirage


 今ではどんな人間も、自分がどう生きるべきかを見付けだそうとしている。

しかし、人間がいつも運が良かった訳では無い。あらゆるシステム管理を、行動管理を外に求め、人間の心のについての考慮も侭ならず、その為に多くを犠牲にしてきた。繰り返すだけではいけないということは、今では多くの人が自覚している。訂正し思い出さなくては…。

でも、今からする話は、そう遠い過去のものではない。何故ならその性質は、我々がアプリオリに宿しているものだからである。この物語は、人間の過度なシステム依存とカテゴライズが成した暗黒時代の実話である。




「こちら探索機103…ステーション聞こえるか…」


「こちらステーション、探索機1 0 3どうぞ…」


「此から、PZ区域に於いて通信妨害対策を行う」


「こちらステーション、了解」




 月と火星は戦争をしていた。なぜ戦争なんてし出したのかは、分からない。偉大なる不死の指導者の命令だ。彼の命令は絶対だ。今夜は、不死の指導者の実体化が起こる。彼は地球や月、火星など人類が基地を置いている惑星には、現れるのだ。火星の白い地面の光る軍基地では、火星軍の軍歌が流れている。


イー・ブシッテファイ ドゥヌ テッヘメーン…

イー・ブシッテファイ ドゥヌ テッヘメーン…

アル・ティソーナ メーン インへメーン レイヤーロ


これは、80年ほど前の火星のスラングで、主に地下酒場での取引に用いられていたものだ。軍人たちは飲酒を禁止されていたため、このような言語を使用した。このヘンテコな言語を、現代語訳をすると…

火星よ火星 白き衣の下に流るる者よ


火星よ火星 白き衣の下に流るる者よ


お前は尽きない 不死の指導者の様に

                 」

何てみっともない歌詞なんだろうと僕は思った。それは、隣で共に操縦桿を握るスティーブも同じだろう。

火星軍基地では、軍隊が歌に合わせて行進している。


「ねえ、船長…オーディオシステムを壊しても良いですか」

スティーブは言った。

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ」

船長は声を挙げた。

なんせ20分毎に、この不愉快極まる振動が船内に響くのである。皆、この遣り取りにも飽きを来していた。しかも、流れている軍歌を止めることは、許されていなかった。いや、そもそも止めることなど出来なかった。

僕らは月側が放った通信妨害衛星を無効化し、撤去する。戦争が始まる前は、僕らはデブリを回収していた。この戦争は、いつ終わるのやら。不死の指導者の気が変わるまでは終わることは無いのだ。


 すると突然僕らの船にSOS信号が送られてきた。


「発信源は何処だ」

船長は言った。


「発信源は…bzx1649 衛星ユビ・イグニス・アルデットです」

僕は応えた。


「何…bzxだとサルガッソーじゃないか」

船長は動揺していた。


「ジョン…位置は確かなのか」


「ええ、確かです。」

僕は驚いたが、矢張り座標は正しかった。


「どうします…救助に行きますか?」

エンジニアのイケダが訊いた。


「行こう」

船長はしばらくして、そう言った。

僕らは船を出した。


「あれじゃないですか?」


「ああ、そうだ」


「ひえー、惑星をデブリが包んでやがる」


ユビ・イグニス・アルデットは、ケプラーという通称を持っていた。


「よし、あの赤い機体があるところを狙え」


「はい」

僕とスティーブは、小型探索機に乗り換え、赤い機体があるところを目指して進んだ。道は狭かった。


「よし、アームをだそう」

僕はアームを出し、赤い機体とその周辺のデブリを退かした。 


「船長…完了です」


「よし、後は任せた俺たちはデブリの外で待機している」


「どうだ…少し磁力があるな」

僕は言った。


「ああ、よくあのデブリを留めておけるバランスを持ってるよと思うよ」


ケプラーは実際の惑星では無く、人工の衛星だった。よく、ケプラー1649という地球型惑星と間違える人がいるが、それとは違う。


「おい、彼処から這入れそうだ」


「そうだな」

そこは、収納ボックスのような場所だ。

僕らはそこに、小型船を置いた。


「エレベーターだ…気を付けろ」

僕はスティーブに言った。

僕らは銃を構え、エレベーターの両脇に立った。

エレベーターは徐々に近づいてくる。

そして止まった。扉が開き、スティーブと共に3秒数えた。僕から順番にエレベーターの正面に出たが、誰も乗ってはいなかった。僕らはエレベーターに乗った。


「こんな場所から救難進行を出すなんて、どんな人間なんだろうな」

スティーブは言った。


「それより、どうやって来たかだ」

僕は少し怪しい思いがしつずけていた。


エレベーターの扉が開いた。

そこには、大豪邸の様な空間が広がっていた。


「なんだ、ここは…」


「ジョン触ってみろよ、本物だぜ」


「確かに本物だ」

そこにあったのは本物の大理石の柱だった。


僕らは幾つもある部屋を見て回った。

















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