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百の桃

別れたこと

彼は過去を消した。

彼女は過去を背負った。



六月のある日。彼は別れを切り出した。

「別れてほしい」

そう言うだけなのに、少し心がしんどかったり。なんだかよくわからない。



別れを告げる彼の眉は顰んでいる。何かを隠している気がする。そこで初めて気づいた。まつ毛の長さに。そして悲しみが押し寄せた。波はなかなか引かなかった。



彼は三日後、SNSの今までの投稿を消した。


彼女はそれを見た。

彼女は消さなかった。



学校の昼休み。

「なんで投稿消さなかったの?」

「なんか消す必要もないかなって。そりゃ未練がましいとか言われるかもしれないけど、私の過去だから」

「ふーん」



「元カノまだ投稿消してないじゃん」

「そうなんやけど、なんでかわからへん」

「お前の元カノってレッテルが欲しいちゃう?」

「そんなわけないやん」

「モテモテなんやし」

「誰がモテモテや」



彼女によると、彼は過去を捨てたらしい。

彼の友達によれば、彼女は過去にしがみついているらしい。


彼によると…

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