第44話
*
エクスが修復されたその晩、カリバーは俺をベッドに押し倒し悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あっ! その前に……、、、」
唇を近づけてきたかと思いきや、
──ガチャリ。
「エクスに邪魔されると困りますからねっ!」
俺から視線を外さず後ろに回した手だけで扉の鍵をしめると、再び、俺にのしかかる。
コイントスによる、まさかのシフト制。
どうしてこーなる?
今夜のカリバーはいつもより激しかった。
エクスの存在がカリバーを駆り立てている。
燃え盛るような女性の情念が俺の身体を
俺はどうしていいのか分からなかった。
普段ならば負けじと応戦する展開にも
「どうしたんですかっ? ご主人様っ?」
カリバーの問いに「ああ、何でもない」と生返事を返す。
愛する二人の女性。それを纏め上げるだけの力が今の俺にはない。不甲斐ない自分に憤るのを堪えて目を瞑った。
──翌朝、エクスが失踪した。
はっ⁉ はああああぁぁーーーー!
なんでそうなるっ?
コイントスで負けたエクスは、カリバーに俺を独り占めされ、その晩を一人で過ごすことになった。目を覚ますとエクスの姿はすでにない。ベッドに寝ていた形跡もない。昨晩のうちにどこかへ行ってしまったというのか?
もう、一体なんなんだよっ!
青天の霹靂のような失踪事件に気が動転した。
全部俺が悪い。込み上げる葛藤も、今はそれと向き合っている暇はない。とにかく早くエクスを探し出さないと──。暗殺者の件もある。一人にさせるのは危険だ。俺たちはすぐにエクスを捜索した。
思い当たる場所を一日中這いずり回ったが、見つけることが出来ず夜になった。
ソファーに座り、
「ひょっとして、家の中に隠れてたりして」
カリバーは陰鬱な空気を打破するテンションで家の棚をバタバタと開け出した。
こんな時にふざけるな──。
彼女なりの気遣いなのだろうが、場違いな、幼稚な態度に舌打ちを堪えた。かくれんぼでもしているかのような子供じみたカリバーを尻目に、俺は
「ぎゃああぁぁーーーー‼」
すると突然、カリバーが悲鳴を上げた。
首を傾けると、ゴロンと、大きな物体が、棚から転がり落ちてきた。
思わぬ事態に目を見開く。
──げっ? なんだこれ? ──氷塊?
人の型をした氷塊。ま、まさかエクス? なんでこんな姿に?
頭が真っ白になり、すぐさま悪寒が走る。
氷属性の魔力。双剣の暗殺者の顔が脳裏をよぎった。ついに来たか? 俺は胸騒ぎに突き動かされ、瞬時にオリハルコンソードを握り周囲を警戒した。
セイライさんが目配せをすると、ラブリュスさんは戦斧姿になり、それを身構えた。
突如として部屋の中に張り詰めた空気が流れる。
ギィー、静まり返った室内に、扉が開く乾いた音が響いた──。
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