109. みんなで住む部屋

 ミシャさんの城住まいが決まった翌日、私はミシャさんと待ち合わせをして家具探しのショッピングへと出かけていた。


「はい、と~ちゃ~く♪ ここが1つ目のお勧めの場所だよ。このお店はオーダーメイド受付はしてないんだけど、置いているジャンルが幅広くて比較的安価なんだ♪」


 そのお店はかなり広い店舗になっており、中に入ると実に様々なデザインの家具が取り揃えられていた。更には、店舗に置き切れない家具情報をまとめたバインダーがあり、気になった家具があれば店員に頼むと実物を出して見せてくれるシステムになっているそうだ。


「凄いですね。でも、ここまで色んな家具があると逆に悩んじゃいそうです」

「そうだねぇ。どんな部屋にしたいってコンセプトがしっかり出来上がっていれば悩む時間も少ないんだろうけど、1から色々見て考えるのなら大変だね。……ちなみにナツちゃんはどんな雰囲気の部屋にしたいかとか希望はある?」

「いえ、まだ正直全然考えてないですね。どんな家具があるのかも分からなかったので、今日見て回ってから考えようと思ってて」

「うんうん、情報が不足している時はそういうのもありだね♪ そこで取り出したるは私秘蔵のインテリア集! 趣味と実益を兼ねて作った力作達をナツちゃんに見せてあげよう!」


 ミシャさんが取り出したのは1冊の写真アルバムだった。どうもミシャさんは部屋の模様替えが趣味らしく、それで完成した力作をこうやってアルバムに収めているらしい。

 アルバムを開くとそこには色んなコンセプトでコーディネートされた部屋の写真が沢山貼られており、どれもこれも凄くクオリティが高かった。


「それにしても凄いですね! こんな部屋が自分でも作れるなら楽しそうです。リアルでも模様替えとかよくされるんですか?」

「もち、リアルでも大好きさ♪ 大好き過ぎて理想のマンションを1から建築して、その日の気分で色んな部屋で過ごせるようにしてるしね♪」


 ――……流石に冗談だよね?


 その本当とも冗談ともとれる発言は、完全に私のキャパオーバーなため一先ずスルーして、私はミシャさんから受け取ったアルバムをペラペラとめくっていく。

 そこでふとレキ達の顔を思い浮かべる。プライベートエリアは私だけの部屋ではなく、レキ達と過ごす部屋でもあるのだ。であれば、皆の意見も聞いた方がいいだろう。

 そう思った私はサモンリングからレキとパルとモカさんを呼び出した。

 

「ねぇ、みんな。もしこの中で住むとしたら、どれが1番いいかな?」


 私は屈んでレキ達に見えるようにアルバムのページをめくる。レキとモカさんは真剣にアルバムを覗いているが、どうもパルはよく分かっていないようで、小首を傾げながらアルバムを見ていた。

 そしてペラペラとページをめくっていると、1つの写真にモカさんとレキが反応する。それは木を基調としたデザインの部屋だった。


「そう言えばレキは森を生息地にしてるピクシーウルフだもんね。モカさんもクマ型のペットだし、木の家具に囲まれた方が落ち着くのかな。……ミシャさん、お城の部屋をこんな感じのモダンなデザインにするのってありだと思いますか?」

「全然ありだと思うよ? 別に城の一室だからって絢爛豪華な内装にしないといけないなんて決まりはないしね。インテリアは自由なのさ♪ ちなみに木のタイルを床に敷いたり壁紙を貼ればかなり雰囲気を変えることも出来るよ」


 それはいいかもしれない。部屋もかなり広いからみんなの専用寝床も作って休める様にしたり、ちょっと可愛い感じの木の椅子とテーブルを用意して、みんなでお菓子パーティーなんかも楽しそう。

 それから私はミシャさんに今思い描いた理想の部屋イメージを伝えて、どうやってそんな部屋を作ったらいいかアドバイスを貰うことにした。


「うんうん。ナツちゃんらしい部屋だね♪ 雰囲気的にはロコっちの家に似た感じだから、基本的な家具はここで揃うと思うよ。ただ、テーブルと椅子は別のお店で特注かな。あと、部屋の広さを測って床のタイルや壁紙を用意しないといけないね」

「……全部揃えると結構お金掛かりそうですか?」

「そうだにゃ~。……大体3Mぐらい?」


 払えなくはない。払えなくはないのだが、3Mは私からしたらかなり高額だ。以前貰ったバグモンスター討伐の報酬の残りが8M程あるので、内装費に使えば残りは5M程……元々あった20Mが瞬く間に尽きてゆく。

 自身の浪費性を目の当たりにし、将来私が働き出してお金を得るようになったとしても、安易に散財せず堅実に貯蓄していくようにしようと心に決めた。


 それからはミシャさんの協力を受けて、必要な家具や床タイルや壁紙を購入。そしてオーダーメイドが出来る別のお店でみんなの寝床と、みんなで使うテーブルと椅子の製作依頼を出した。

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