79. 辻褄合わせの裏工作
「あ、あの~。どういう経緯で私が二つ名持ちでギルマスをすることになったんでしょうか?」
「ん~……ノリ?」
「ノリでそんな重荷を背負わせないでくださいよ!?」
「あははっ。冗談だって冗談♪ これには深い深~い理由があってだね。……まぁ簡単に言っちゃうとナツちゃんが二つ名を得やすくするためと、バグモンスター騒ぎのカモフラージュを両立するためなのさ♪」
それだけだと分からないので詳しい説明を要求すると、「心得た!」と胸をぽんっと叩き更に詳しい説明をしてくれた。
実は今、運営はバグモンスターによるデータ破損以外に重大な問題が起きているそうだ。その問題と言うのが『バグモンスター関連の問い合わせに対する回答』だ。
現状、バグモンスターの件は表沙汰にする予定はなく、出来るだけ秘密裏に解決したいと運営サイドは考えている。けれど、既にバグモンスターの目撃情報は多数出ており、掲示板などによってその情報は広く拡散してしまっている。運営はこれに対して何かしらプレイヤーへの対応をしなくてはならないのだが、今のところ有効な手段を打てていないのが現状なのだそうだ。
「それでね。その件についてさっき話し合って、『実はこれまでのバグモンスターは、これからやるイベントの事前告知でした』ってことにしようって事になったの」
イベント用に偽物のバグモンスターを作り、その討伐イベントを実際に作って行うらしい。
これまでの目撃情報はそれのデモンストレーション的な物だということにして、イベント期間中には偽バグモンスター討伐でプレイヤー達の目を逸らし、私達はそのどさくさに紛れて本物のバグモンスターを倒す。これで、今までのバグモンスター関連の言い訳と、これからの討伐がとてもやりやすくなるとのことだ。
そしてここに私達のギルドを絡ませる。
私達がこれから作るギルドを『今回のイベントで上位入賞を目指すために、一時的に二つ名持ちを集めた』という事にする。これで突然二つ名持ちプレイヤーが多数集まったギルドが出来た理由の完成だ。
けれど、ここで1つ問題が発生する。そう、私が二つ名を持っていないのだ。そこで、運営サイドと口裏を合わせて1つの仕掛けを行うことにする。
「プログレス・オンラインでは新しい二つ名持ちが生まれた時に、その二つ名が公式サイトにお知らせとして載る仕様になってるの。……そしてそこへ仮の二つ名を掲載するのさ♪」
通常は『他者によって異名が作られる』→『異名が多くのプレイヤーの中で定着する』→『神がその異名を認める』というプロセスになるが、これを『公式から異名をアナウンスする』→『異名が多くのプレイヤーの中で定着する』→『神がその異名を認める』という形で無理やり二つ名を作る作戦らしい。
「まぁ、ぶっちゃけ神様がその異名を認めるかどうかは、それにたる根拠を作れるかどうかに掛かってるから難しいらしいんだけどねぇ」
「……偽の二つ名ってバレる心配は無いんですか?」
「それがあるんだよねぇ、困ったことに。鑑定スキルってあるでしょ? あれでプレイヤーを鑑定しちゃうとね、鑑定スキル値と鑑定される側の総スキル数によってはステータスが丸っと見られちゃうんだよ。だから、バレない為にもスキルをどんどん上げていかないとだね♪」
前途多難だ。ちなみに私の二つ名は、これまでの私の行動やすでにある私へのイメージなどを神AIのリソースを使って調査し、根拠との結びつきが強い二つ名候補を探すらしい。
ということで今日はここでお開きとなり、色々進展があったらまた連絡をもらう事となった。
「あぁ、そう言えばナツよ。この後ギンジに連絡を入れてはもらえんか? 実は今日の打ち合わせにギンジを誘ったんじゃが、断られての。その時に、打ち合わせが終わったらナツからギンジに連絡を入れさせるようにと頼まれたんじゃ」
「えっと、何の要件かって言われてました?」
「確か、猿洞窟の卒業試験についてとか何とか言っておったのぅ」
「猿洞窟の……卒業試験?」
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