64. 気分転換のアミューズメントダンジョン
運営スタッフのファイさんから衝撃的な情報の波状攻撃を受けた翌日、今日もロコさんはファイさんとの打ち合わせで訓練は延期になった。
「はぁ~、レキ、パル、今日は何しよっか? 訓練する気分にもならないし……」
昨日1人帰ったあとは、自身のプライベートエリアでレキやパルと遊んだり、料理をしたりして過ごした。けれど、流石に部屋から一歩も出ずに2日過ごす気にもなれず、だからと言って何処か行く当てがある訳でもないので途方に暮れてしまう。今はとことんモチベーションが上がらず頭も回らないのだ。
――そうだ! こんな時こそ攻略サイトを見よう!
プログレス・オンラインの非公式攻略サイトには実に様々な情報が掲載されている。装備情報、ペット情報、お勧めのスキル構成……そして、観光情報だ。
私は一度ゲームからログアウトし、インターネットで攻略サイトのお勧め観光地を調べた。
「ふむふむ、暑い所はパルが苦手だし人気過ぎる所は人が多そうだしなぁ……デートスポットはペットと行くところじゃないよね……」
いくつもあるお勧め観光地を眺めてレキ達と行く場所を探していく。すると1つ面白そうな場所を見つけた。
「テイマーの為のアミューズメントダンジョン。手持ちのペットに合わせて難易度や趣向が変わるダンジョンで、謎解きや宝探し、ボスモンスターとの戦いが楽しめる、か」
そこはテイマーがペット達と遊ぶためのダンジョンで、どのレベル帯のペットを連れても楽しめるように趣向を凝らせた施設らしい。ただし、手持ちペットに合わせた強さのモンスターは出て来るが、そのモンスターと戦ってもペットに経験値が入らないという完全に遊び目的の為の施設なのだ。
「よし、決めた。今日はここへ遊びに行こう!」
……
…………
………………
「パルゥ……」
「うぅ、ごめんね。今ほど自分の馬鹿さ加減に嫌気が差したことは無かったよ」
今私は強大な敵と戦っている……謎解きという強大な敵と。
「えっと、10個のうち正解の台座が3つあって、レキとパルと私でそれぞれの正解の台座に乗ればクリア。そして間違う度に2つの台座がランダムに入れ替わる。そして、さっき失敗した時には2つの台座が正解って表示されたから……つまりこれだ!!」
「(ブー)」
「なんでぇ!?」
「ワフゥ……」
さっきからここの謎解きが解けずに一向に先に進めない。何度も間違えて、台座以外なにもないフロアに閉じ込められている所為か、先ほどからレキ達のテンションが見るからに下がっている。
――このままじゃヤバい! テイマーとしての私の威厳が!!
そんな物が元々あったかは知らないが、このままでは折角遊びに来たのにテンションがご臨終した状態で帰ることになってしまう。それだけは何としても阻止しなければ。
「えぇ、でも本当に何で? さっき2つ正解だったから多分レキの場所が違ったんだよね……で、あと調べてないのがそこしか……」
「ワフッ!」
「どうしたの? え、私がそっちに行くの?」
私がうんうん唸りながら悩んでいると、レキが私の服を引っ張り別の台座へと誘導される。私はそれに抵抗することなく誘導された台座に乗る。そしてレキは元々乗っていた台座へと戻っていった。
「(ピンポーン)」
「……開いちゃった」
「ワフッ♪」
何度やっても上手く行かず開かれなかった扉がゴゴゴと音を立てて開いた。私達のIQヒエラルキーが今決定してしまったようだ。
「よ、よ~し。レキ、パル、次のフロアに行こう! 確か次は宝探しのはずだよ!」
「パルゥ……」
「ワフゥ……」
レキとパルはやれやれといった様子で私の頭と肩に乗り、早く次へ行くぞとばかりに扉の向こうに視線をやる。
――うぅ、私の威厳が……威厳がぁ……。
……
…………
………………
次は広い迷路フロアで次のフロアへ行くための鍵探しだった。元来方向音痴であった私は、何度も一度通った道を通ろうとしてしまったが、その度にレキやパルに止められて迷路攻略を進めていく。
そして無事鍵を見つけて次の最終フロアへと進む。……探索中に見つけたペット用おやつを上げるから、私をそんな呆れた目で見ないで!
最終フロアでは私達の強さに合わせたボスモンスターが出てきて、そのボスを倒すとダンジョンクリアだ。ちなみにペットのHPが一定以下になるとゲームオーバーになり、ダンジョンから強制退去させられるらしい。
そしてそんな最終フロアで出現したボスモンスターは……大きな牛だった。
「的は大きいね。パルは後方待機で合図したらアイスブリッドをお願い。レキは前線には出ずにマナシールドでの行動阻害で」
「パル!」
「ワフッ!」
「よし、行くよ! ここで私の威厳を取り戻す!!」
それからのボス戦は本当に楽しかった。最近は『猛威の樹海』でロコさんに動きを封じられた大型モンスターに安全に攻撃するか、ロコさんとの訓練でしか戦ってしなかったのだ。こうやって全員で連携しての戦いは、何だかんだ初めてかもしれない。
何度かミスを犯したりと危ない部分はあったが、私達は何とかボスモンスターとの戦いに勝利した。
「訓練ばかりで実感なかったけど、私達確実に強くなってる!」
「ワフッ♪」
最初の頃はレキのマナシールドによる行動阻害のタイミングが合わなかったり、パルとの息が合わずに何度も後頭部にアイスブリッドを受けたりしたのだが、今日の戦いはしっかりと連携が取れて満足が行く物だった。ロコさんとの訓練は確実に私達の力になっていたのだ。
「……よし」
私の考えは固まった。次にロコさんやギンジさんと会えた時に、私の考えをしっかり伝えよう。
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