57. ダメージエフェクトの要因
「バックスタブ!!」
「ガァアアッ!」
レキのマナシールドと、ギンジさんの手によってバグモンスターは徹底的に行動阻害される。そしてその隙に私はバグモンスターの影に入り、タイミングを見計らって敵の背後から出てバックスタブを叩き込んだ。
すると、先ほどと同じようにダメージエフェクトが発生する。
「やっぱり、ダメージ通りますね。理由は不明ですが」
「まぁ、分からねぇことは考えても時間の無駄だ。ダメージが通るなら徹底的に攻撃を加えて、その短剣の攻撃力を上げていけ」
ギンジさんの言葉にもっともだと納得した私は、茨の短剣で切り付けたり、影に入り込んで隙を見て背後からバックスタブで攻撃を仕掛けたりと攻撃を続けた。
そんな戦いを暫く続けていたのだが、ここでまた大きく状況が変わる。ダメージが突然通らなくなったのだ。
「えっ! どうして!? ギンジさん、ダメージが入らなくなりました!!」
「見りゃ分かる。けど、なんでだ? 俺の見る限り、お前さんには何の違いもないぞ」
そんなの私が聞きたい。ダメージが通っている時と通らない時で何の違いもない。本当に突然ダメージが通らなくなってしまったのだ。
ダメージは通らなくなってしまったが、これまで蓄えたヘイトが無くなる訳ではない。今まで散々切り付けられてきたバグモンスターはこれまで以上に勢いを増して私に襲い掛かって来た。
「こいつ、こっちが攻撃手段を失った事に気付いてやがる!! ナツはダメージが入らなくなった原因を考えろ。そのための時間は俺たちが死ぬ気で稼いでやる!!」
そんなことを言われても本当に突然で、何の兆しもなかったのだ。けれど、そんな事は言っていられない。打開策を見つけ出さなければ全滅だ。
私が原因を探している間にもバグモンスターは私を食らい付こうと迫ってくる。そしてその度にギンジさんやロコさん、そしてレキが守ってくれている。
「ナツよ、そろそろMPポーションが切れそうじゃ。すまぬがバフの重ね掛けはインカ―ネイションのみに制限して、行動阻害に専念する」
「分かりました!」
ロコさんからのバフ支援が無くなるのは心細いが、ダメージを与えられない今、私の強化にMPを割くより敵の行動阻害に専念した方がいい。
――……バフ支援?
私は自身のステータス画面を見た。そこには重ね掛けされてまだ効果が残っているロコさんのバフが表示されている。……そう、ロコさんのバフだけが。
「レキ、私に1度だけプロテクションをお願い」
「ワフッ!」
私に掛かっているバフ一覧にレキの物理耐性強化が追加される。
「ギンジさん、一度攻撃を試させて下さい!」
「何か分かったのか? 分かった。一瞬こいつの視界を奪う。その間にこいつの影に潜れ!」
「はい、よろしくお願いします!」
確証は無い。けれど、ダメージが通った時と通らなかった時の違いと言えばそれぐらいしかなかった。
そう、私はレキにプロテクションの重ね掛けをせずにマナシールドでの行動阻害に専念するように指示を出していた。そしてダメージを出せなくなる前にレキのプロテクションが切れていたのだ。
ギンジさんはインベントリから手投げナイフを取り出し、バグモンスターの目に向かって投擲する。バグモンスターはそれに反応し一瞬目を背け、私はその一瞬を狙ってバグモンスターの影の中に入り込んだ。
その後は先ほどまでの戦い方と一緒だ。ギンジさんが敵の注意を引き、隙を見て影から出た私がバックスタブを叩き込む。すると……予想通りダメージエフェクトがでた。
「ガァア˝ア˝ッ!」
「ダメージが入った! やっぱり、そういう事だったんだ。……でも何で!?」
自分で答えを導き出したはずだが、その答えに軽くパニックになる。
「ナツ、どういうことじゃ? 前後の行動から察するにレキのプロテクションかえ?」
「……そうみたいです。何故かは分かりませんが」
「どういう事だ? それなら俺もロコからプロテクションを受けてるぞ」
そうなのだ。常に前線で戦っていたギンジさんにもロコさんからプロテクションを受けていた。けれど、敵にダメージを与えることは出来なかったのだ。
――どういう事なの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます