12. 初めてのお料理
中央市場を出て次に向かうのは生産者組合だ。所持金400Gで買えるとは思ってないけど、料理に使うアイテムを買い揃えるのにいくら掛かるかぐらいはリサーチしておく必要はあるだろう。
という訳で、生産者組合の建物に入ってすぐに受付で料理道具について聞き、料理関係の道具を売っている場所を教えてもらった。
「一先ず初期料理に使うのはフライパンと包丁ぐらいか。あとは料理スキルの技能『調理』も合わせると……2,300G」
買えないとは思っていたけど、やっぱり買えなかった。レキに手料理を振る舞うのはもう少し後になっちゃったけど、まずは森へ行ってモンスター討伐でドロップアイテムをかき集めて、レキのレベル上げ&金策に勤しむことにしよう。
それからは森でひたすら狩りをし続けた。途中、レッサーラットが3匹同時に襲ってくるというハプニングにも見舞われたが、それ以外は順調に戦闘を継続出来、2日掛けて集めたアイテムをクエスト納品と不用品の売却でやっと目標金額を稼ぎ出すことが出来た。
無心で狩り続けたおかげもあって今のレキのレベルは7になり、私の短剣スキルや基礎スキルも少しずつ上がっていった。ロコさんの課題ももうすぐ完遂だ。
私はすぐに生産者組合へと向かってフライパンと包丁、そして料理スキル技能『調理』を購入。その後、プライベートエリアへと戻った。
「レキ、もうちょっと待っててね! 今美味しいご飯作るから」
「ワフッ♪」
レキの返事にテンションを上げて、プライベートエリアにあるコンロにフライパンを置き、いざ参るとばかりに料理スキル技能である調理を発動させる……が、何も起こらない。
――何も起きない、なんで!?
レキがこちらを見て首を傾げている。そしてそれを見ている私の首も傾げている。
数秒程そのまま止まっていると、「いやいや、このままじゃ埒が明かないよ!」と本日2度目の生産者組合へと訪れた。
「あの、すみません。料理について教えて欲しいのですが、調理器具と食材の両方が揃っているのに調理を発動しても何も起きないんです」
「もしかすると、持っている調理器具と食材に対応したレシピをお持ちでないのでは無いでしょうか?」
「……レシピですか?」
しまった。また私の癖『先走り』を発動させてしまっていたらしい。
調理とは事前に購入しておいたレシピか、一度自らの手で1から作った料理を食材を消費して自動生成する技能とのことだった。
私は調理器具と技能しか買っておらず、レシピを購入していなかったので調理を発動しても何も起きない訳である。
それから今度はちゃんと最後まで聞こうと色々料理について聞いてみることにした。すると、やはり聞いておいた方が良かった情報がボロボロ出てくる。
例えば、レシピを使わず1から作る場合の自由度はかなり高く、自分のアイディア次第で色んなものを作れるらしい。
ただし、その料理のバフ効果や満腹度の回復量は元となった食材やその使用量に依存するので、美味しい物が出来たからといってその効果が高くなる訳ではないようだ。
私は売っているレシピのラインナップを眺めて、持っている肉類や森で採取した木の実やキノコなどで作れるレシピを探し出し、またもやお金が足りないという事実に打ちひしがれることとなった。
――うん、これは愛情増し増しの手作り料理をレキに振る舞えっていう神の思し召しだ!
そう自分に言い聞かせると、プライベートエリアに戻りインベントリからいくつかの食材を取り出して適当に小さく切り分け、全てフライパンに突っ込んで焼いた。
出来た物をお皿によそってまずは毒見と自分で食べる……うん、予想は出来てたけどやっぱり不味い。
全部一度に焼き始めたため、キノコは焦げて肉は生焼け、いつも食べてる木の実だけは他の食材と分けて単体に食べると美味しかった。
「レキ、ごめんね。明日、ロコさんに相談してみるから今日はまた木の実で我慢してね」
「クゥ~ン」
レキの悲しい鳴き声に押し潰されそうになりながら、その日はそのままログアウトすることにした。
ちなみに調理には履歴機能があり、過去に作った料理を選択して自動生成することも出来れば、その料理に名前を付けてお気に入り登録しておくことも出来るようだ。まぁ、今の私には無用の機能だということは間違いないだろう。
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