10. 初めての戦闘
ロコさんに街の施設のことを説明してもらった次の日、遂にレキと一緒に戦うためのレクチャーをしてくれるということで、今私は森に来ていた。
「さて、今日は戦闘についての話になるのじゃが、今の段階でナツに教えることは特にない。危なくなったら支援魔法を送るので、レキと一緒に思いっきりぶつかってみるのじゃ」
「えっ! 戦いのイロハを教えてくれるんじゃないんですか!?」
「お主の調教スキルは10で戦闘スキルに関しては0じゃろう。そもそも使える技能が無いからナイフでつつくぐらいしか出来ぬし、ここら辺であれば早々危険なモンスターは出ぬから安全にレキのレベルを10までは上げられる」
「えっと、つまりレキのレベルが10になるまでは特に考えることなく、レキと一緒にモンスターへ突っ込めばいいってことですか?」
「危ない時にサモンリング化することと緊急脱出することは覚えねばならぬが、ここで戦うのであればそれぐらいじゃの。ほれ、丁度良い雑魚モンスターが出て来たのじゃ、わっちが見守っておるから思いっきり行ってくるのじゃ」
ロコさんと話しをしていると、そこに丁度小さなウサギのモンスターが出て来た。ロコさんに聞いたらレッサーラビットという名前らしい。めちゃ可愛い。出来ればテイムしたいけど、今の私の甲斐性だと2匹もペット飼えないし、どんどん倒していかないとレキも私も強くなれないから仕方がない。
私は人差し指にあるレキのサモンリングに念じて具現化させる。
「レキ、初戦闘だよ! 私も頑張るから一緒に強くなろうね!」
「ワフッ!」
レキと二人で気合を入れなおした所で、私の方へと向かってきたレッサーラビットに向かって私も走り出しナイフを振り下ろした……が、途中で小さなウサギにナイフを突き立てることに日和ってしまい、私が躊躇している間に足に噛みつかれてしまった。
「痛っ! う、この、この!!」
私は必至に足を振ってレッサーラビットを振りほどこうとするが、がっちりと足に噛みつかれてしまい外れない。
――まずい! どんどんHPが削られていく!?
私がテンパっていると、レキが横から現れてレッサーラビットの首元へと嚙みついた。そして私の足から引きはがし、ぽーんと投げ捨てる。レキの頼もしさと主人の不甲斐なさに色んな意味で泣きそうだ。
「ありがとう、レキ。……そうだよね、ちゃんと戦わないと駄目だよね」
私はグッとナイフを握り占めると、もう一度レッサーラビットへと走り向かってナイフで攻撃を仕掛けた。
攻撃は確実に当たったが、血は出ない。どうもナイフで切り付けても血は出ず、ノックバックするだけのようだ。この仕様は私の精神衛生上、凄く助かる。
その後は、レキの噛みつきと私の不格好なナイフ攻撃で危なげなく倒すことが出来た。
「ふぅ、焦った。本当に焦ったよ……」
「ここのウサギは可愛いからの。プレイヤーの中でもレッサーラビットを倒したくないと、ここに来ない者も多い。ナツ、レキ、良く頑張ったの」
そういってロコさんは私とレキの頭を撫でたあと回復魔法を掛けてくれた。キラキラとした光が私とレキに降り注いでとても暖かい。
「そういえば、足に噛みつかれた時はビックリしちゃったんですけど、攻撃されても意外と痛くないんですね」
「勿論じゃ、年齢制限があるようなゲームだと痛みが強い物もあるが、このゲームは全年齢対象。切られようと噛みつかれようと角で突かれようと、あるのはダメージに相応した衝撃だけじゃの。あとどんな攻撃をされようと切れたり血が出たりもせん」
「それは良かったです。もし私の足やレッサーラビットから血が出てたら、それこそ血の気が引いていたかもです。それに、見える形でレキに傷が出来たら戦闘なんて止めて速攻で逃げ出してました」
詳しく話を聞いたところ、昔フルダイブ型VRゲームが出だした頃には体の部位欠損や傷や血の演出に規制は無かったそうだ。けれど、モニターの前ではなくリアルに体感できるフルダイブ環境内での部位欠損や流血は刺激が強かったらしく、パニックを起こす人やその後トラウマになる人が出て問題になったそうだ。
そんな問題が多数出たため、フルダイブ型VRゲームでは傷の演出具合により年齢制限が設けられ、よりリアルな痛みや傷を伴うゲームは事前に承諾の意思確認が必須となった。
初戦の後も何度か弱いモンスターと戦って、戦闘中にレキをサモンリングする練習や逃げ出す練習なんかもして、今日の戦闘指導を無事終えることが出来た。
訓練後はどっと疲れてしまったので、ロコさんに今日の訓練のお礼を言って別れた後は、プライベートエリアに帰ってレキと二人で採取した木の実を食べたり、もふもふわきゃわきゃしながら過ごした。
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