3. キャラメイキング

 なんと、お父さんが機材一式とゲームを注文した日の翌日にはもう配達されてきた。

 こういう高価な機械は受注生産とかで、注文してから届くまでに少し間が空くと勝手に思い込んでいたから驚きだ。


「なんか凄い技術のゲームって聞いてたけど、意外と必要なハードって小さいんだね」

「物は小さいけど、あまりこういうのに慣れてない身からすると、設置だけで一苦労だけどな。えっと、この箱がメインの処理装置か……いや、補助処理装置? それとこれを頭に装着するのか」


 お父さんが説明書を読みながら設置していってるけど、なかなか難しそう。

 横でぶつぶつ言ってる説明を聞いてみた所、このフルフェイスのヘルメットみたいな機械は脳への信号を入出力する為の物で、その隣りのタワー型PCみたいなのがゲームサーバーとヘルメットとのやり取りを補助したり必要なデータを退避させる為の物らしい。

 ……うん、よく分からないや。元々ゲームとか機械関係には疎いから、頑張って説明書とにらめっこしてるお父さんに任せよう。

 それから2時間の奮闘の結果、ようやくお父さんは私の部屋にプログレス・オンラインをプレイ出来る環境を作り上げた。


「よし、これでいけるはずだ。夕飯までにはまだ4時間もあるから、ちょっと遊んでみるといい」


 それから私はお父さんにお礼を言って、早速ゲームをプレイしてみる事にした。

 まずはこのヘルメットを被って右耳の所の起動パネルに触れて、寝そべるっと……あ、はい、まずはヘルメット被って立った状態で規定の動きをしなくちゃなんですね。

 ヘルメットのディスプレイに表示された指示に従っていくつかの初期設定を済ませると、やっとベッドに寝そべってゲーム開始だ。


 ……


 …………


 ………………

 

「ようこそプログレス・オンラインへ。このゲームが貴女にとって最良の世界である事をお祈りしております」


 ゲームへログインすると、目の前に居るピカピカと光る球体が私に話しかけて来た。どうもこの球体がこのゲームのナビゲーターらしい。


「まずは動作チェックを致します。指示の通り体を動かし、違和感なく動くかお確かめ下さい。……大丈夫そうですね、では次にアバターの調整を致します。マニュアル、セミオート、オートから調整方法をお選び下さい」


 目の前に全身鏡が現れ、今の自分が映し出された。というかリアルの私だ。最初の初期設定で体の情報をスキャンしているって聞いたけど、まさかここまで精巧にスキャン出来てるとは思わなかった。

 マニュアルは各種見た目のパラメーターを1つ1つ手動で微調整する物で、セミオートはナビゲーターに要望を出しながら最適と思われる内容に調整してもらえる機能。そしてオートは完全にナビゲーター任せでアバターが出来上がるとのこと。

 どれも共通するのがリアルへの影響を最小限にする為、身長などリアルとゲームで体を動かす感覚が大きくずれてしまいそうな所は弄れないようになっている。

 

 私はセミオートでナビゲーターに要望を出しながら、基本的にはリアルと大きく見た目を変えずに髪型や髪色を変えて、あとは顔のパーツをちょっとだけ微調整して……胸を少し膨らませた。

 最終的に顔はほぼそのままで、髪型がショートボブの黒髪、まさに何処にでも居そうな中2女子って感じに出来た。リアルではセミロングで結構濃いめの茶毛なんだけど、それがちょっとコンプレックスで前から皆と同じ綺麗な黒髪に憧れていたのだ。

 顔ももっと弄っても良かったんだけど、いつか両親もこのゲームをやるって決まった時、願望増し増しで大規模工事を終えた顔を見られるのが恥ずかしかったので、あまり顔は弄れなかった。


「よし、見た目はこれでOKです。もうゲームを始められますか?」

「次はプログレス・オンラインの世界を快適に過ごす為に、適性検査と簡単なチュートリアルとなっております」


 まだまだ先は長そうだ。

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