63話 雪山救出作戦①
ゲートは街からは少し離れた場所にあった。
景色の奥には山岳地帯。ゲートを無視してこのまままっすぐ行けば登山道に入るのだろう。
そのために周囲は封鎖されており、監視員が目を光らせている。
「剛力の許可済みです。入りますよ」
「えっ、ちょっと!」
響は監視員にそれだけ告げると返事を待たずにゲートへと飛び込んだ。
「ここが……Bランクダンジョン……」
ゲートをくぐった先は、一面の銀世界だった。
そびえる木々達や地面にはどっさりと雪が積もり、空からは雪が振り視界を妨げている。
足跡があるのでは、と思ったが降り積もる雪のせいでそれもかき消されてしまっている。
「ミア、どこにいるんだ……!」
どこへ行けばいいのかも分からず、道らしい道もないのでとりあえず真っ直ぐに歩き始めた。
この寒さの中、ミアはどこかで一人ぼっちでいるのかと思うと胸が張り裂けそうになる。
なぜあの時、無理にでもついて行かなかったのだろう。
激しい後悔は苛立ちにかわり、自然と拳を握っていた。
しばらく歩き続けると白一色の景色が、少し揺らいだ気がした。
「なんだ?」
白光を構え戦闘態勢にはいり、その一点を見つめ警戒を強める。
徐々に近ずきその揺らぎの正体がわかった。
雪のように白い体毛の兎だった。
角が生え血のように赤い目をしている兎だ。
「兎……?」
【角兎Lv51】
・弱点 火属性 腹部
・特性 単体での戦闘力はあまり高くないが、集団で行動するため注意が必要。角には氷属性があり、刺されると凍傷になりやすい。食欲旺盛でなんでも食べる。
・スキル 大食らいLv3 以心伝心Lv6 速度上昇Lv5
目目連が情報を表示したその時、白の景色に大量の赤が現れた。
その数は20匹程。
「嘘だろ!? これ全部モンスターかよッ! 時間がねぇって時に……クソ!」
「サンダーボルトッ!」
雷撃が放たれ角兎の群れを撃つと、数匹の角兎を焼いたが、その程度でしかない。
同胞を焼かれ気が立ったのか、鋭利な角で貫こうと一斉に飛び跳ねた。
「わざわざ隙を見せてくれるなんてありがてぇな」
響はサンダーボルトを白光に纏わせ、隙だらけの角兎達目掛けて一閃。
空中では避けられる筈もなく、数匹が切り裂かれた。
鮮血が飛び散り銀世界を赤く染め上げていく。
斬り殺し損ねた敵が眼前に迫ると、身体をひねり後ろ回し蹴り。
足場は悪いが、戦闘に影響がでる程でもない。
次の兎には白光の返しの一閃。
なすすべもなく真っ二つに地に落ちる兎達。
再びサンダーボルトをぶっぱなすと、20程いた角兎はもう残り3匹にまで減っていた。
「悪いな。時間がねぇんだ」
駆け出し刃を切り上げ1匹を
旋回し横薙ぎに白光を振るい、もう2匹。
あっという間に角兎の群れの殲滅が完了した。
【レベルアップしました】
「お、レベルアップか……そういや、しばらくステータスも見てなかったな。今どれくらいのレベルなんだろ」
響が最後に確認したのは、連結ダンジョンをクリアした後。
それから何度かダンジョンに潜り、ディザスターゲートの件もあった。
それなりにレベルは上がっているはずだった。
ステータス】
F級覚醒者 佐藤響 Lv119
HP:3960MP:590
功績:ジャイアントキリング 単独踏破
称号:ドラゴンキラー
力227
防御力209
知能206
速度215
精神力238
スキル
・不屈の精神Lv6
・目目連Lv3
・弱点特攻Lv5
・ライトニングボルトLv3
ユニークスキル
・
振り分け可能ステータスポイント 19
表示されたステータスは、思ってたよりも上がっていた。
限界突破による上昇補正がかなりいい働きをしている。それに加え、まだ振り分けていないポイントが19もある。
「そろそろ振り分けもちゃんとやらないと……力に8速度に7防御力に4でいいな」
響の言葉に反応するようにステータスが変化した。
今や響のステータス値は全て200を超えた。
ミアを救うためほんの少しでも強くなる必要がある。
それにこのステータスでも剛力よりはまだ下だと、響は確信していた。
「ミアが待ってる。先を、急がなきゃ……!」
ステータス強化を終えた響は、角兎の魔石には目もくれず雪降る景色に消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます