2章
49話 高鳴る鼓動
時刻は20時。
響はとある総合病院の一室でボケっと天井を眺めていた。
連結ダンジョン攻略から丸1日が経過していた。
満身創痍だった二人はゲートを潜ると、監視員により直ぐさま救急車を呼ぼれそのまま搬送された。
幸い、どちらも命に別状はなく後遺症などもないと言う。
ミアは別室にて入院しており、明日の朝には二人とも退院出来るそうだ。
それもこれも組合員による計らいのおかげだ。
付き添いで病院まできた監視員に、中での出来事を話すと詳しく知る必要があるからと、午前中に別の組合員が派遣されてきた。
組合の管理課に身を置くリリアと言う名の聖女のような美しい女性だ。金の糸のようにサラサラな金髪に、翡翠の瞳は思わず魅了されそうになる。
色白で華奢な体つきだが、しっかり出る所は出ている。
女性が羨む女性とはこう言うのを指すのだろう。
リリアはA級覚醒者の資格を持ちヒーラーとして、ときおりダンジョンに潜っているらしい。
粗方報告を終えると「あなた達が無事で何よりです」と、天使のような微笑みを向け回復魔法を行使してくれたのだ。
そのおかげもあって傷は全快したので、後は念の為検査を受けて晴れて退院という流れだ。
ただ、後日組合から連絡が来るとの事。
恐らくまた本部に呼ばれるだろう。
D級とF級でDランクの連結ダンジョンをクリアしたのだ。それも当然の流れである。
「そう言えばあれからステータス確認してないな。どんくらい上がってるんだろ」
【ステータス】
F級覚醒者 佐藤響 Lv107
HP:3650MP:490
功績:ジャイアントキリング 単独踏破
称号:ドラゴンキラー
力198
防御力180
知能177
速度186
精神力209
スキル
・不屈の精神Lv6
・目目連Lv3
・弱点特攻Lv5
・ライトニングボルトLv3
ユニークスキル
・
振り分け可能ステータスポイント7
「ん? なんだ? 俺どっかおかしいのか?」
表示されたステータスはとんでもない数値になっていた。
まさかそんな訳ないと思い、ゴシゴシと強めに目を擦りもう一度見てみる。
「……ああ! そっか、これ夢だ。焦ったー……こんな数値になる訳ないもんな。夢なら痛みで覚めるはず!」
これは間違いなく現実なのだが、どうにも信じられない響は自分の頬を思い切りつねってみた。
「いってえええっ! ……痛い? てことはこれは夢じゃない……? これが、俺のステータス。そうか。これが俺のねえ……」
強くつねりすぎたのか、ジンジンと頬が痛む。
その後虚ろな表情でボソボソと独り言を呟く響だが、はっと我に返り、
「ええええええええええええ!?」
あまりの変化に響は大声で叫んだ。因みにここは病院だ。とてつもなく迷惑な行為である。
その瞬間、勢いよくドアが開き、
「あんたうるさいよ!」
「はいすみませぇん!!!!」
そしてまた乱暴にドアは閉まった。
今のは看護師長である菅野さんだ。響ともそこそこ長い付き合いであり、口はあまり良くないがとても親切なおばちゃんだ。
流れるように謝罪をして、改めてステータスに目を通した。
「これが本当に……やべぇ、なんか目から変な液体で出てきそう」
言わずもがな涙である。
潤んだ目を誤魔化すようにゴシゴシと強く擦る。
臨界点やその他の功績などのおかげで響のステータスは、本人も驚く程に飛躍した。
これはB級のベテラン探索者と同等の数値だ。
もう響の事を弱いと蔑む人間はいないだろう。
覚醒等級は変化しようがない。だがあの日、幸運にも手に入れた臨界点のおかげでレベル上限がなくなったF級にとっては逆に都合がいい。
ぽんぽんレベルが上がり、功績のおかげでその度にステータスが伸びる。
普通とは違った成長の仕方だが、そんな事は関係がない。
佐藤響は報われたのだ。
そして、これからは更なる高みへと向かって走り出す事だろう。
「ダンジョンに、行こう。きっとこの気持ちはそこでしか鎮まらない。俺は──誰よりも強くなりたい」
高鳴る鼓動を抑えることはせず、響は病院を飛び出し一人でダンジョンに向かった。
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