第41話 水禍佩びるドラゴニュート
目の前にはリザードマンとよく似たモンスターが三体。
堅固な鱗を身にまとい、その切れ長の両目は鋭く威圧感がある。
無駄のないしなやかな筋肉に、獰猛な牙が生えた口。
響は1度だけ、このモンスターを見た事があった。
ドラゴニュートだ。
あれは講習で馬渕翼とダンジョンに潜った時だったろうか。
あの時は翼が瞬殺していたが、記憶が正しければその個体の何倍もの圧を感じる。
「答えよ」
真ん中にいる一際体の小さいモンスターが、二人に問う。
この個体だけ明らかに違う。間違いなく、こいつがボスだ。
立派な装飾の施された一際大きな三叉槍。他の二体の武器には装飾など施されていない。
「なん、だって……?」
二人は自分の耳を疑った。
聞き間違いや勘違いでなければ、モンスターが人語を発したのだ。
「モンスターが……話した……こいつ、普通……じゃない……!」
ミアの心臓がバクンと大きく警報を鳴らした。
人語を話すモンスターなど、聞いたこともない。
ミアは杖を向け即座に鋭利な氷柱を放ち先手を取る。
氷柱がドラゴニュート達に触れる直前──
「ぇ……?」
真ん中のドラゴニュートが三叉槍を
すると全ての氷柱が跡形もなく砕け散った。
ただ槍を振るっただけ。たったそれだけの事で圧倒的な戦力差を脳に植え付けられた。
「馬鹿なッ! そんな簡単に……」
【
・弱点 火属性 雷属性 喉
・特性 ドラゴニュートの特異個体。通常のドラゴニュートよりも格段に強い。三叉槍で水流を操る。尾の先端には劇毒があるため注意。ブレスは極めて危険。この個体の操る水に触れると速度が減少するので要注意。
・スキル 槍術Lv6 龍鱗Lv5 重圧Lv4 水上歩法Lv5 怪力Lv3
・ユニークスキル 水禍Lv6
──な、なんだよこれ。特異個体だって……? スキルレベルが高すぎる! それにユニークスキルなんて……こんな奴に本当に……勝てるのか?
目目連により映し出された情報は、とんでもないものだった。
あの小さなドラゴニュートは特異個体であり、ユニークスキルを持っている。
ただのドラゴニュートにも勝てるかどうか分からないのに、その数段上の強さを持つ個体になどかなう訳がない。
「この程度、我が出でるまでもない」
小柄なドラゴニュートはつまらなそうに 吐き捨て、数歩下がった。
それと同時に二体のドラゴニュートが武器を構える。
この事は二人にとって僥倖とも言える。
あの小さなドラゴニュートとは戦力差がありすぎる。
「……あれからは……逃げられ、ない……」
「やるしか、ないってのか」
──でも、アイツじゃなければまだ勝算はあるかもしれない。
【ドラゴニュートLv35】
・弱点 水属性 雷属性 腹部 喉
・特性 火魔法を使い武芸に長けている。ブレスを放つが予備動作が大きく隙になりやすい。尾の先端の棘には毒があるため注意。
・スキル 槍術Lv3 火魔法Lv2 龍鱗Lv3 水上歩法Lv2 怪力Lv1
リザードマンと比べてレベルも高くスキルも多い。
決して楽に勝てる相手ではないのは百も承知だが、先程の特異個体と比べるとまだやれそうな感じはあった。
片方は顔に傷があり、念の為目目連を使ってみたが、特に変わった点はなかった。
逃げるにしてもきっとそれはあの個体が許さないだろう。
自分が時間を稼げばいいと思っていたが、どうにもそれすら出来そうにない。
生き残るには戦うしかないのだ。
──問題は二体って所だ。多分、コイツらだってかなり強い。些細なミスが命取りになる。ミアを守るためにも絶対にミスはできない。
白光を握る手に汗が滲む。
チラとミアを見ると、目はまだ死んでいない。
先程の特異個体の一振で戦意喪失したかと心配したが、そこまで脆くはないようだ。
二人の視線が交差し互いに頷く。
──まずは、コイツらを倒す。どの道逃げられないんだ。あの化け物の事はその時に考えればいい。集中しろ……怯むな、戦え。臆せば死ぬ。前だけを見ろ。
「──行くぞ」
キッとドラゴニュートを睨みつけ駆け出した。
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