第36話 不運の連結ダンジョン①
ボスであるミノタウロスを倒したのに関わらずゲートが出現しない。
ダンジョンはまだ続いているという事だ。
そして今回、響達が入ったこのダンジョンは高確率で連結ダンジョン。
1階層の次により難易度の高い2階層をクリアしなければゲートは現れない。
第1階層がDランクダンジョンなら、次はCランク。
連結ダンジョンは滅多にあるものではなく、通常のダンジョンに比べると死傷率は跳ね上がる。
救助を待とうにも時間が過ぎれば、2階層から上位のモンスターが湧き出てきてしまう。
「嘘、だろ……」
思わず声に出た。Dランクダンジョンを攻略したと思い、緩みきっていたところにこれだ。
精神的にかなりキツイ。
「……運が……なかった。でも、ミア……響となら、大丈夫……な気がする。ミア強い……響も、強い……!」
「ミア……」
響の右手を包むように小さな手が握った。
口では前向きな事を言っているミアだが、その小さな手が少し震えている。
怖いのを我慢して、前を向いているのだ。
──女の子に何言わせてんだよ俺。本当に情けない。俺がもっとしっかりしなくちゃならないんだ!
「ありがとうミア。そうだよなて弱気になったって何も変わらない。俺たち二人ならきっと大丈夫だ!」
響の精神的な変化が嬉しかったのか、ミアは天使のような笑顔でコクリと頷いた。
連結ダンジョン2階層は、言わずもがなミノタウロスの守っていた洞窟の先だ。
これより先はCランクダンジョン。ミアはともかく、響にとっては未知の領域だ。
今まで以上に何が起こるかわからない。
──絶対にミアと二人でクリアしてやる。何があっても、必ずだ。
響は強い意志を抱き、魔境である洞窟エリアへと足を踏み込んだ。
「……響、なにか……いる……!」
仄暗い洞窟でミアが響の裾をクイっと引っ張り呟いた。
洞窟の壁は、ヒカリゴケという文字通り光るコケのおかげで辛うじて視界を確保している状況。
多少慣れたとはいえ、戦闘の際には大きなハンデになってしまうのは間違いない。
「ああ、わかってる」
二人の視線は数メートル先の天井。
辛うじて何かいる程度には見えるが、それが何かまでは分からない。
ミアが杖をトンと、地面に打ち付けると杖の先端に光の玉が現れ辺りを照らした。
「ん……これで……ッ!」
「えっ?」
照らしたのとほぼ同時にミアは、さささっと響の後ろに隠れた。
ふにゃりと柔らかい感触を背中に感じ、一瞬アホ面をかます。が、すぐにブルブルと首を振り我に返った。
そして天井の何かを見た瞬間、全身の毛が逆立つのを感じた。鳥肌全開だ。
「こ、これは中々強烈だな……」
放射状に広がる縦糸と螺旋状の横糸。
その中央で無音でジッとこちらを見ているのは、八つ足で毛むくじゃらの生物。蜘蛛だ。
真っ黒で大きい2つの主眼の周りに、小さないくつかの複眼がある。
ずっしりとした胴体とはアンバランスな細長い脚。
この生物を蜘蛛たらしめる全ての要素が苦手だった。
ついでに言うと、大きさも2メートル程ある。
──これじゃあミアが怖がるのもわかる気がする。俺がやるしかないか……目目連。
【吸血蜘蛛Lv26】
・弱点 眼 腹部
・特性 吸血スキル持ち。敵の血液を吸いHPを回復する。蜘蛛糸には麻痺性の毒が混ざっているので触れると麻痺する可能性がある。
【目目連の熟練度が一定に達しました。可視化範囲が増加します】
【吸血蜘蛛Lv26】
・弱点 眼 腹部
・特性 吸血スキル持ち。敵の血液を吸いHPを回復する。蜘蛛糸には麻痺性の毒が混ざっているため、触れると短時間麻痺する可能性有り。
・スキル 吸血Lv2 麻痺糸生成Lv2 産卵Lv1 麻痺耐性Lv4
目目連の熟練度が上がり更に多くの情報を得られる事になった。
敵のスキルを看破できるとすると、戦術の幅はグッと広がり逆にそれを利用する事もできる。
──あの牙と糸に気をつければいいのか。眼は小さいけど腹なら狙いやすい。勝機は充分!
「あとはアイツをぶっ飛ばすだけだ!」
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