第23話 スキルブックを手に入れろ!①


いかにレベルアップしたとしても、この大群と真正面からやり合うのは無理がある。

勿論響もそんな事は百も承知。

こんなこともあろうかと、残りの報奨金を使いアイテムを買ってあるのだ。


ポケットから取り出されたのは5センチ程の赤い石。なんとこれ一つで30万円もするのだから驚きだ。


「本当はボス戦で使うつもりだったけど、背に腹はかえられない。行ってこい30万!」


そう言って迫り来る大群に向け石を放り投げた。

石は放物線を描きながらコツン、と先頭にいたスケルトンの頭に命中。

その時だった。


ドォンッ!!!!


衝撃の加わった石は爆発し、多くのモンスターを吹き飛ばした。

廃病院の構造上、轟音が響き逃げ場の失くした爆風は投げた本人にすら襲いかかる。


吹き飛ばされまいと、脚に力を込めてなんとかふんばり切る。


「さ、さすが30万。後ちょっと近くで投げてたら俺も巻き込まれてたな……」


石の正体は火の魔石と呼ばれる貴重な代物。

一定の衝撃を加えると瞬時に爆発を巻き起こす危険なアイテムだが、正しく使えば強力な味方になる。


火力の低い響はボス戦でそれを補うために購入したが、命拾いしたのは間違いない。

現に半数程度のモンスターは爆発に巻き込まれて肉片となり果てている。


【レベルアップしました】


──このまま一気に片付ける!


グッと脚に力を込めて地面を蹴りつける。

モンスターの大群は爆発と爆風におされ、ドミノ倒し状態で隙だらけ。


屍を踏みつけ、白光の一閃。

一刀で3体を両断し、その勢いを利用し回転。


「おらァッ!」


先頭のグールを回し蹴りで吹っ飛す。

左右から他のアンデットナイトの剣撃。

即座にしゃがみこみ躱すが、前方からはメイジの放ったであろう火の玉が迫る。


──クソ、魔石を使ったのにそれでもまだ数が多すぎる! なんとか切り抜けないと。


火の玉を切り裂きそのまま突進。

モンスター達の脚を斬り体勢を崩していく。


「ぐッ! この……くそったれが!」


しかし数の暴力は凄まじく、グールの爪が背中を裂いた。

鋭い痛みが走り、どくどくと血液が流れ出る。

すぐさま白光を切り上げ倒すが、すぐにまた新しいモンスターが押し寄せる。

その時、空中に文字が浮かび上がってきた。目目連だ。


【アンデットメイジの中にスキルブックを所持している個体を確認しました】


──スキルブック!? このままじゃジリ貧だ。スキルの内容はわからないけど、一か八か掛けるしかない!


とは言ったもののそのメイジが何処にいるのかもわからないし、居たとしても奥の方なら状況はあまり変わらない。

今現在視界にいるメイジは2体。先程火の玉を放った個体と、その後ろにいる個体だ。


──いた! とりあえずアイツらからだ。

「がはッ……! どけえええぇぇぇッ!!!」


アンデットナイトから一撃を受けたが、怯むことなく剣を振るう。

その切っ先がメイジの顔面を貫くが、この個体はスキルブックを所持していない。


後ろのメイジが杖を振ると、雷撃が出現し一直線に飛んでくる。


「っぶね!」


ギリギリの所で回避したが、頬をかすり皮膚を焼いた。

あとほんの少しズレていたら響の顔面に直撃していた。

メイジを睨みつけると、杖の他にボロボロの本を持っているのが見えた。


──アイツだ!


響の放つ殺気に怖気付いたのか、メイジは後ずさる。

この機を逃したらまた振り出しだ。

多少の攻撃は受ける覚悟でメイジ目掛けて突っ込んだ。


渦巻く群衆の中ひたすらに刃を振るう。

目だけは確実にメイジを捉え、その他の一切を斬りつけ、遂には射程圏内に入った。

それと当時にメイジは雷撃を放つ。

響は回避せずに真っ向からそれに立ち向かった。


「らあああぁぁぁ──ッ!!!!」


白光の刃と雷撃が触れる。

が、白光はソレを斬り裂くと刃はそのままメイジの胴体にまで達した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る