第20話 ガンガン行こうぜ!②

「ふぅ、ある程度強くなると何となく相手の強さも分かるもんだな。さっきの監視員の人は多分レベル低いんだろうな」


天運の指輪のおかげもあって、この2週間でかなりレベルアップする事が出来た。

それに目目連のおかげで普通なら見逃してしまうような隠し要素に近いものも、殆ど見つけたのではないだろうか。


今の響のレベルは41。D級下位に近いステータスだ。


先程の監視員もF級と油断していなかったら結果は違っていたかもしれない。


「それにしてもこのダンジョン……」


辺りを見回すと、どうにも見覚えのある風景だ。

と言うのも響がいるのは病院の一室のような場所。

そこら辺の病院と違うのは廃病院らしい事だけ。


──建造物系のダンジョンは特に珍しくもないけど……

「病院ってのが皮肉だよなあ」


響にとって病院はかなり縁がある場所だ。

廃病院で怪我をすれば、そとでもまた病院に行かなければならない。病院で怪我をして病院とはなんとも皮肉な話だ。


独特な薬品の臭いはなく、チリチリ点滅するライトがそれっぽい雰囲気を醸し出している。


点滅しているせいで視界はあまり良くないが、通路の奥の方で何かが動いた気がした。


「なんだ? 今なにかいたような……?」


異様な雰囲気のせいか、いつもより心臓が煩い。

幸い通路は一本道で、すぐ後ろは行き止まりになっている。前だけ気を付けていれば不意打ちをくらうこともない。


響は警戒を強めながらゆっくりと歩き出す。

その時だった。

10数メートル先から何かがゆっくりと近づいてくるのに気がついた。


──なんだ? 人……じゃないな。モンスターだ。


【グールLv5】

・弱点 光属性

・特性 不死属性。動きは鈍いが、光属性以外で倒すと何度でも蘇る。


「グールってことは、ここはアンデット系モンスターのダンジョンか。光属性なんてないけど、まあ何とかなるか」


ボロボロの布切れを纏い腐敗した人型モンスター、グール。

動く骸ワイトと並んでアンデット系の最弱に位置する強さだ。

動きも遅く特に危険な攻撃はないが、常に強烈な腐敗臭を漂わせている。


「早速コイツの出番か。本当はグールとかあんまり斬りたくないけど、そうも言ってられないしな」


響は腰に下げている剣に手をかけた。

この2週間、ボロボロの長剣を使い続けていたが先日、やっとお気に入りの武器を見つけた。


それが白銀の鞘に納まっているこの剣、白光。

金額は250万と一般的にはかなり高いが、探索者の武器としてはどちらかと言えば安めだろう。


【白光】

・攻撃力180

・特性 斬れ味がかなり落ちにくい。


──前の長剣が攻撃力40だったから、かるく4倍はあるな。


既に3メートル先には、呻き声のようなものをあげながらよろよろと歩いてくるグール。

響はキッと睨みつけ白光を構えた。


「動きもとろいし試し斬りにはもってこいだな。先手必勝ッ」


たん、と地を蹴り距離を詰める。

グールはそれに合わせ両腕を振り上げる。が、もう遅い。

白光の一閃は既に、グールを捉えていた。

呻くうめく暇もなくグールは横に両断された。


「おお、すげえ斬れ味だ!豆腐でも斬ってんのかと思った。こんなにも違うもんなのか」


白く輝く刀身を見つめ思わず感嘆の声が盛れた。

以前使っていた剣は粗悪品なので、比べる事すらおこがましいレベルではあるはずだ。

なんせ250万だ。斬れ味が悪いならそれこそ大問題だろう。


──これなら思ってよりグッと楽な攻略になるぞ! 報奨金のほとんどを持ってかれたけどまじで買ってよかった。


そんなことを思っていると、通路の奥からワラワラとグールの群れがこちらへ向かってきているのが見えた。

響は再び白光を構え、


「よっしゃ! ガンガン行こうぜだ!」

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