第18話 報奨金くれるってよ!②


「さあ、好きな物を選ぶといい。どれも貴重な品だが貴公にはそれを選ぶ権利がある。遠慮はいらない」

「ま、まじですか!?」


エレナに連れてこられたのは保管庫と書かれた部屋だ。

その中にはズラリと並んだ武具。そのどれもがショーケースの中に保管されており、かなり貴重な物だというのがわかる。


防具付けてない探索者も多いが、単純に機動力が落ちるのと高いからだ。

あれば役に立つが、自身の戦闘スタイルにもよるだろう。

そのため人気なのは身軽な装飾品だ。勿論、何かしらの効果が付与されたものに限るが。


「どれか1つだ。慎重に選ぶといい……って最早聞いてもないな」


子供のようにはしゃぎながらショーケースを眺める響を見て、エレナは再び微笑んだ。


「属性付与の剣!? こっちは自動防御オートガードの鎧まで!? 」

──こんなの買ったら数千万……いや、下手したら億まで行くぞ!? 本当に貰っていいのかよ!


ショーケースに飾られた品はどれも1級品だ。安くても1000万は下らない品物ばかり。

そして勿論、その値段に恥じない性能をしている。


「ええ、どうしよう全部欲しい! どれを選べば正解なんだろ」

【天運の指輪が最適です】


独り言のつもりだったが目目連がそれに反応した。

響は武具を選ぶ気満々だった所、目目連が告げたのはまさかの装飾品。


──ええ……本当に指輪が1番いいのかよ。絶対武器か防具の方が役に立つだろ。でも、目目連が今まで間違えた事ないしなあ。

【天運の指輪が最適です】

【天運の指輪が最適です】


やかましいくらいに自己主張の激しい目目連。どうやら譲る気はないようだ。


【天運の指輪が最適です】


「あーもう! うるさいなわかったよ!!!! あっ……」

「……」


ついつい声に出してしまった響。完全にエレナの存在を忘れていた。

不審者でも見るような視線に耐えられず、


「そう! これにしようと思います! うん、決めました!」


と、勢いで誤魔化し指輪を指定した。

するとエレナは不可解そうな顔で、


「……指輪か? 貴公なら武器や防具の類が必要だと思うが……あ、いやいいんだ。決めるのは私ではないからな。どうか役に立ててくれ」


ショーケースの中から取り出された指輪は、作りは質素だが純金でできているのか輝いている。


「ありがとうございます……」

──うう、これで大した効果なかったらまじで最悪だ。


かなりの後悔と少しの期待を胸に指輪の情報を見てみる事にした。


【天運の指輪:獲得経験値3倍。レアドロップ確率2倍】


響は指輪の効果を見て目を疑った。


──と、とんでもねえ。レベル上げに関して言えばこれ以上ないくらいの効果だ。でもなあ……レベル上げても俺の場合大してステータスが伸びないからなあ。


事実、この指輪はとんでもない代物であり今最も響に必要なアイテムなのだが、まだまだ目先の強さにすがる響には理解出来ないことだった。


「さて、報奨金だが既に君の口座に振り込まれてある。大した額ではないがある程度の武具は買えるだろう」

「はい、ありがとうございました」

──そうだ、報奨金があるのを忘れてた。武器とかはそれで買えばいいか。20万位は貰えるかな?


「さて、それでは外まで送ろう」


それから言う通り、エレナはわざわざ外まで見送ってくれた。執行部部長と言う肩書きを持っていながら、律儀な人だなと感心した。


「エレナさん、ありがとうございました」

「なに、貴公には迷惑をかけた。組合と私からの謝罪の意もある。気にするな」


そう言うとエレナは右手を差し出した。

響はその手を取る直前「手汗大丈夫かな」と、要らん心配をしながら握手。


「それでは、私はこれで失礼するよ。貴公の活躍を心より祈ってる」


それだけ言い残すと返事を聞く前に身を翻した。執行部部長ともなればやはり多忙極まりないのだろうか。

その後ろ姿を見て響は、


「あ、そうだ。覗き見みたいで申し訳ないけど、今後の参考までに──」


【A級覚醒者 エレナ・スカーレット Lv59】

HP: 7530/7530

MP: 900/900


力326

防御力312

知能339

速度498

精神力290


さすがはA級覚醒者と言ったステータスだ。

とんでもねぇなとボソリと呟いて響は帰路に向かった。


その後スマホで口座を確認した所、300万もの大金が入っている事に絶叫し隣人からクレームがきたとかこないとか。

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