第17話 報奨金くれるってよ①


「ぐあああッ!」


我妻は無様に転がると、失神したのか起き上がっては来なかった。

それを見て響は胸をなでおろし、


「ふぅ、これでやっと終わったかな? 武田さん、さっきは疑ってすみませんでした!!!!」


疑いたくもなる内容ではあったが、ここまで親切にしてくれた恩人にキチンと謝罪しない訳にもいかない。

響は90度まで腰を曲げて頭を下げた。


「なに気にするなよ響君。あれはアイツのやり口が上手かっただけだ。それにな、こんな事になったのもリーダーである俺の責任だ」


我妻を除いた7名の攻略隊の内、生存者は4名。3人は我妻の手により死亡した。

武田は唇をかみ締め、血が滲むほど拳を握った。


「武田さん……」


響はなんて声をかけたらいいのか分からなかった。

自分からすると、初対面の彼らだが武田からしたら苦楽を共にした仲間だ。その心中を推し量る事など到底出来やしない。


「ちゃんと弔ってやらないとな。こういう時に俺がしっかりしないと」


武田は涙を堪え気丈に振舞ったが、その姿がとても痛々しく見えた。


「そう、ですね……」

──俺は自分がちょっと強くなったからって浮かれてた。俺がもっと強ければ……他の人は死なずにすんだかもしれない。強く……強くなりたい。もう目の前で誰かが死ぬのを見たくなんてない。


────


──



「ステータス」


静かな自室でボソリと呟いた。


【ステータス】


Fランク覚醒者 佐藤響 Lv26

HP:250 MP:40


功績:ジャイアントキリング


力20

防御力16

知能18

速度18

精神力23


スキル

・不屈の精神Lv2

・目目連Lv2

・臨界点Lv2

・弱点特攻Lv1


ボーッと自身のステータスを眺めてため息をついた。


「やっぱり……強くはなってるけど、レベルアップのステータス上昇値が低過ぎるな。あの時は浮かれて気付かなかったけど、このままだとレベル99になっても2桁のステータスしか手に入れられないな」


思い浮かんだのは副会長クラッドの圧倒的なステータス。平均450程度はあったのではないだろうか。

しかし、それよりももっと強いのが馬渕翼。

今の響からは想像もできないようなステータスなのだろう。


F級やS級の等級地はどのようにして決まるのか。

それは初期ステータスも勿論そうだが、それよりも潜在能力に依存している。


潜在能力とは簡単に言ってしまえば、レベルアップした時の伸び幅。基本的にはそれが低い程等級も下になってしまう。


だが悪いことばかりではない。等級が低ければ低い程にレベルアップに必要な経験値も低いのだ。

つまりレベル上げだけで考えればF級は断トツだ。

もっとも、ステータスが伸びないのであまり意味は無いのだが。


「この等級は絶対だ。世界中どこを探しても途中で等級が上がった人はいないんだよな……かなりレベルアップしたから前よりマシだけど、やっぱり欲は出ちゃうよなあ。あ、そうだまた組合行かなきゃいけないんだ!」


ダンジョンを帰還した後、武田が探索者組合にダンジョン内での出来事を報告した。

それから2日後の今日、組合から通達がありお呼ばれしたという訳だ。


「うーん、本当はEランクダンジョンに行きたかったけど……報奨金なんて言われちゃ行くしかないよな!」


ゲヘヘ、と下品な笑みを浮かべながら響は組合に向かった。


────


──



「この度は本当にすまなかった!!!!」


と、全力で頭を下げているのは探索者組合執行部部長エレナだ。

水色の髪を伸ばし、ツンと伸びた耳からはエルフである事が伺える。

エルフと言う種族は揃って美形だが、エレナはその中でも群を抜いている。


ゲートの出現と同時に様々な種族がこの世界に紛れ込んできたのだ。総数こそ多くはないが、今ではあまり珍しくもない。


「あ、いや……そんな謝らないでくださいよ。クビになった人間なんですよね?」

「ああ、だが懲戒免職にしたとはいえ我妻良樹は元執行部の人間だ。ソレが悪事を働いたのだ。部長である私にも責任は大いにある! だから本当にすまなかった! 今後はこのような事ないよう、心して教育すると誓おう」


「は、はあ……お願いします……?」


堅物と言う言葉がこれ程似合う者も珍しい。

響はこの堅物が少しだけ苦手だった。悪い人間ではないと分かってはいるが、どうも取っ付きにくい。


「うむ、それで貴公を呼んだのは……」

「報奨金!! ですよね!!」


がっつく響を見て、エレナは少しだけ表情を曇らせた。


「そ、そうだが……まあいいか。着いてきてくれ。報奨金の他にも贈呈するものがある」

「え、他にも?」

「ああ、きっと君の役に立つだろう」


そう言ってエレナが微笑むと、ほんの一瞬響はエレナに見惚れてしまった。が、すぐに我に返り小走りで追いかけた。

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