第15話 レベルアップしました②
「ふぅ……やっとあと1個だ! あれ? なんかこの卵……ほかの卵と違ってちょっと黒い?」
響の言う通り他の卵は真っ白だったのに、最後の1つだけ少しだけ黒ずんでいる。
──どうせ幼体だし関係ないか。
容赦なく長剣を叩きつけ殻を割ると、中には殻とは正反対の真っ白で目が赤いブラックサーペントの幼体がうねうねと動いていた。
「うわ、なんだこいつ。目目連!」
予想外すぎる幼体に反射的に目目連を使い、正体を探る。
【ブラックサーペント希少種 幼体Lv99】
・弱点 全身
・特性 幸運の印。ブラックサーペント希少種。産後1日で進化するためレベルは上限に達している。幼体の戦闘能力はかなり低いが、成体は戦闘能力が高く極めて危険。
「産後1日で進化とかどうなってんだよ……でも、幼体なら関係ねぇな。俺の糧になってくれ! 南無三ッ」
と、即座に剣を振り下ろすと希少種は真っ二つになり絶命。
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
「うおおおい! なんで急に!? あっ、コイツがレベル99だからか? 幼体の癖してとんでもねぇなこいつ」
視界いっぱいにレベルアップの告知。よく見るとその中に紛れて別の文字も浮かんでいた。
【スキル:臨界点を獲得しました】
【臨界点Lv2:一定レベルで発動】
「なんだこれ、意味わかんねぇな……でもかなりレベルアップしたはず!」
新たなスキルだと言うのに、内容が曖昧でよく分からない。それに、どうやら今すぐ使える類でも無さそうだ。
とりあえず今はそれに構ってる時間はないので、ステータスの確認を優先した。
ゴクリと生唾を飲み込みステータスと脳内で唱える。
【ステータス】
Fランク覚醒者 佐藤響 Lv23
HP:210 MP:30
力16
防御力14
知能15
速度15
精神力20
スキル
・不屈の精神Lv2
・目目連Lv2
・臨界点Lv2
表示されたステータスは今までとは比べ物にならない程のものだった。
武田や我妻に比べればまだまだだが、E級程度のステータスにはなったはずだ。
「おお!! 強くなってる!! これなら多少はやれるな」
当初の軟弱極まるステータスでは、全力で攻撃したとしてもビクともしなかっただろう。だがそれが多少なり強化された今、ほんの少しくらいはダメージになるかもしれない。
──最終的にはアイツを倒さないといけない。それにはブラックサーペントの討伐は必須だ! 絶対失敗は出来ない。
響は高鳴る気持ちを抑え、冷静に我妻の戦いを観察した。
その端で武田が他の探索者を避難させ、何かを受け取りそれを握りしめた。
「くふふ、思ったよりも粘りましたがこの蛇もそろそろ終わりですかねェ」
ブラックサーペントの顔面を斬りつける。
紫色の体液が飛び散った。
よく見ればブラックサーペントの身体は多くの刀傷があり、動きも鈍い。つまりは満身創痍なのだ。
あの硬い鱗を短剣で斬り裂くとは、B級探索者は伊達ではなかった。
対する我妻も無傷とは言えない。だがボロボロかと言うとそうでもない。
多少の傷はあるが殆ど直撃はしていないのだろう。
まだまだ余裕があるのか、ニヤリと笑った。
──多分あと1回か2回でブラックサーペントは死ぬ。
「急がねぇと!」
大地を蹴りつけると、まるで羽が生えたかのように身体が軽く感じた。
ステータス上昇による恩恵だ。
「すっげぇ、これが俺!? これならやれるぞ!」
そのままグングンと距離を詰める。
我妻は今にもトドメを刺そうと短剣を振り上げている。
ブラックサーペントにはもう抗う余力もない。
全力で駆け、そして十分な距離に達すると跳躍し、
「弱点は……口か目玉あああああッ!!!!」
己を鼓舞するために叫び、必死に剣を振るう。
ザシュッ。
──浅い!?
「くふふ、横取りとは下品です、ねェッ!」
響の奇策に遅れを取った我妻だったが、短剣を構え恐ろしい速度で迫る。そしてブラックサーペントの顔面に着地したその時だった。
「ぐっ、熱ッ! あああああッ!!!!」
「チッ、面倒ですね……」
ブラックサーペントが小刻みに震えたかと思うと、身体が淡く光だした。それと同時に表面温度が一気に上昇。
我妻は危険と判断し瞬時に離れるが、響は剣を握った手を離そうとはしなかった。
──熱い熱い熱い熱い熱いッ!! くそ、なんだよこれ!
熱に感情が支配される。火あぶりでもされているようだ。
靴は溶け始め、チリチリと体毛が焼けて異臭を放つ。
しかしそれでも響は剣を手放さなかった。
「あぐっ!! くそォ! 負けてたまるか。あと少しなんだ……逃げてたまるかよォッ!」
身体が焼け始めているのをお構い無しで、剣を両手で掴み一気に体重を掛ける。
「おらああああああああァッ!!!!!」
裂帛の気合と共に剣を差し込む。
ズブリ。
嫌な感触だが確かな手応えを感じた。
柄の部分まで深く差し込まれ、ドロリと体液が流れている。
ブラックサーペントは一瞬痙攣し、その場に崩れ落ちた。
響は半ば投げ出されるように地べたへと転がった。
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【スキル:弱点特攻を獲得しました】
【弱点特攻Lv1:弱点部位攻撃時に与えるダメージが35%上昇】
【功績:ジャイアントキリングを達成しました】
【ジャイアントキリング:格上との戦闘時全ステータスが20%上昇】
目の前にはブラックサーペントを討伐した恩恵がずらり。
「がはッ! う、うぅ……痛ってぇ。でも、成果はあった」
目目連がどこまで見通していたかは定かではない。
だがその通りスキルを獲得し、功績まで達成した。
そしてそれらは、遙か格上のB級探索者を相手取るのに最適な内容。
──すげえ、本当にスキルが手に入った。俺、どんどん強くなってる……!
浮かれそうな自分にハッとして、パンパンと両頬を叩き気を引き締め、
「反撃開始だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます