第5話 目目連
前書き
新作、この身勝手な異世界に復讐を
投稿しましたので、よかったらみてやってください!
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バキッと木の割れる音が響き、宮田の剣により碁盤には大きな亀裂が入る。
しかし、亀裂が入っただけで他に大きな変化はない。
「こ、これで良かったのか……?」
訳も分からないまま響の言う通りにした宮田は恐る恐る尋ねる。
「なん、で? だって、碁打ちの魂! 碁盤しか……碁盤しかないじゃねぇか! なんで何も起きない! なんでだよッ」
その時、障子から叫び声が響いた。
まるで苦しんでいるような、酷く悲痛な声だ。
響達は思わず両手で耳を塞いだ。
四方からくる叫び声は、大気を振動させビリビリと肌を刺激する程に大きな叫び声だった。
「~ッ! 一体何が起きてるんだ!?」
「す、凄い声……耳が……」
響はこの爆音にも似た声を聞き、少しだけホッとした。
碁盤をみると、まだ完全には破壊されていない。剣が突き刺さり亀裂が入ってはいるが、その形をまだ保っている。
──あと少しだ。あれくらいなら俺でも……!
「ぐうっ! なんて馬鹿でかい声だ。頭が……でもやるしかないッ!」
手を離し決死の覚悟で剣を押し込む。
亀裂が広がるが中々割れてはくれない。
耳からどろりと血が垂れる。それでも痛みに耐え剣を押し込む。
「砕けろおおおォォォ──ッ!!」
ここで破壊できなければ後はない。何がなんでも破壊するという強い気持ちが伝わったのか、乾いた音を響かせ碁盤は見事に真っ二つ。
その瞬間、まるで時間が止まったかのように辺りを静寂が支配した。
違和感を覚え、鼻血を拭い周囲を見渡す。
「宮田さん? 吉見さんまで……」
2人は両耳を塞いでいる。そして何か叫んでいるのか大きく口を開けたままピクリとも動かない。
何かとんでもない事が起きている。
──どうなってんだ? まさか本当に時間が止まってる?
そんな事を考えていると、目の前の障子が独りでに開き始めた。
ドクンと心臓が高鳴るのを感じる。
ゆっくりと開き始める障子の奥は真っ暗闇。
まるで障子の先は世界がなくなってしまっているかのように、何処までもただ黒が広がっている。
──なんだ? なにが起きてんだ。
事の顛末をただ見守るしかできない響。
生唾を飲み込み、いつ何があっても動ける様に臨戦態勢に入る。
しかし、暗闇から顔を出したのは先程宮田が手を掛けた宝箱。
浮遊しているのかゆっくりとこちらに近付いてくる。
そして宝箱は響の前でピタリと止まった。
「あ、開けろってことか?」
恐る恐る近寄り手を掛けようとすると、先程の転移トラップが脳裏によぎる。
まさかここから更に転移なんてある訳ないよな?
心の中で3つ数え、意を決して宝箱を開けると──
「えっ、これだけ?」
中には古めかしい巻物が1つ。警戒していた反面、思わず気の抜けた声が出てしまった。
「えぇ……うーん、とりあえず見てみるか」
手に取ってみると、見た目よりもずっと古いのがわかる。紙は色あせ所々破れておりボロボロと言う言葉が相応しい。
巻物に書かれているのは1つの単語のみ。
「……
声に出して読んだその時、巻物が輝き出した。
そして目の前には半透明の文字列が浮かび上がる。
【ユニークスキル
【目目連の獲得により、あらゆるものの可視化が可能になりました】
「空中に文字!? なんだこれ──痛ッ! ああ、やばいこの痛みは……」
空中に文字が現れると同時に激しい頭痛に見舞われる。
──ぐぅぅぅ! 脳が焼けてるみたいだ! 痛い。痛いッ!!!!!
全身を痛みに支配され思わずうずくまり頭を抱え、のたうち回る。
脳みそを直接焼かれ、眼球を金槌でぶん殴られたかのような耐え難い痛みだ。
悶え苦しんでいた響だが、やがて痛みの許容範囲を超えるとプツリと意識が途絶えた。
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