第7話 パーリー?な日常
「イエーイ! 俺、優秀な勇者ぁ! イエーイ! 盛り上がっていこうぜぇーい!」
「え、えーと、どちらさまですか?」
お母様が冷静に尋ねた。
「あ、自分、斎藤一と申します。よろしくお願いします」
「はあ? サイト ウハジメ様ですね? サイト様とお呼びすればよろしいですか?」
「あ、なんでもいいです」
え?
いいの?
絶対ハジメで呼んだ方がいいよね?
ま、面白いからいいか。
勇者は意外な人物だった。
初めはパリピな人かと思っていたが、どうやら照れ隠しでパリピのフリをしてしまう陰キャだ。
僕みたいな真正陰キャモブとはまた違う人種が増えた。
地球からは陰キャしかこないのか?
しかし、スキル構成は完全に勇者のそれで、強そうだった。
『勇者』…剣と魔法を自由自在に操れる者。選ばれし者。パッシブスキル。
『剛剣』…力強い剣技を発揮できる。アクティブスキル。
『乱魔』…10回に1回の確率で普段の5倍の威力の魔法を使える。パッシブスキル。
『瞬光』…移動速度が一時的にとても速くなる。アクティブスキル。
全てレベルは1だが、全て強力だ。
今は、夕食に勇者を招こうということになり、顔合わせをしていたところだ。
「サイト様はなんという国から来られたのですか?」
「イエーイ! 黄金の国、ジパングだZEー!」
「え、えーと、ジンパッグ? ですか?」
「あ、いえ、日本という国です。すいません」
お母様と勇者のやり取りが微妙にかみ合わない。
「いえいえ、落ち着いて話してくださいね。ご年齢はおいくつですか?」
「はい。………ウェーイ!年齢はぁ~、トゥエンティーーワン!だぜーーー!」
「ん? とぅえんてぃわん??」
「あ、すいません。21歳です」
大学生かな?
あ、微妙に髪が暗い茶色なのは就活まだ終わってないんだな?
21で終わってないって……察し。
「こらこら。勇者様は召喚されてまだ慣れていないんだぞ。質問攻めに合えば疲れるだろう?」
「そうですね。失礼いたしました。シャルム様。サイト様も失礼いたしました。わたくしは、側室のイザベラと申します。これからよろしくお願いいたしますね。こちらは、息子のアーサーです。仲良くしてやってください」
「オーゥケェーイ!任してくれよ、ベイベー!」
「べいべー?」
「あ、いえ、よろしくお願いします。サイトです」
あ、サイトで行くのね?
押しに弱い人だな。
変な人だけど、僕みたいなクズ系ではないってことかな?
「よろしくお願いします。サイト様。アーサーです。第六王子です」
「テンキューゥ!フゥー!」
いちいちメンドクセーな。
まぁ、一緒に暮らす訳だし仲良くした方がいいんだろうな。
無視しよ。
その日は何もなく夜が更けた。
いや、お母様はこっそり抜けていたのでナニはあったのだろう。
僕はフランソワに見張られていたので、アイリスがベタベタしてくることはなく、眠った。
アイリスもかわいいんだけど、余計なことをしたらガーベラとストライク家のダブルパンチで殺されそうだ。
いや、そこに賢者であるサルビアまで加わると地獄だな。
おとなしくしておこう。
―――翌朝―――
「おはようございます。サイト様。よく眠れましたか?」
「グンモォーニン!アーサー!今朝も素敵な太陽だNEー!」
朝イチでこのノリはしんどいな。
やってる方もしんどいと思うんだけどな。
「そうですね」
・・・・・・会話が続かない。
僕も日常会話のスキルなんて持ってないし、向こうもそうなんだろうな。
困ったな。
「おはよう、アーサー。お城に泊まるのは久しぶりでしたね」
テッカテカのお母様が現れた。
朝まで頑張ったのだろうか?
まだ、31歳だからこれから女盛りなんだろうけど、自分の親ってのが引っかかるな。
いや、別にいいんだけどね?
「そうですね。サイト様もよく眠れたそうですよ」
「あら、それはよかったですね。今晩からは私たちの屋敷ですので、そちらでも安眠していただきたいですね」
「そうですね」
朝食をとったのち、屋敷へ帰ることになった。
馬車の中で、サイトはたまにテンションが上がるが、城よりは落ち着いているように見える。
やっぱり、城の雰囲気が合ってなかったのだろう。
屋敷につくとガーベラが待っていた。
あ、ヤベ、言うの忘れてた。
めっちゃ怒ってる。
「アーサー! どこ行ってたのですか?」
「いや、ちょっと、緊急で城に呼ばれてたんだよ。遅れるって言ってなくてごめんね。あ、そう、この勇者も剣の修行したいらしいから、一緒に鍛えてくれる?」
「え?……イエーイ!やろうZEーー!」
「勇者って、この前一緒に見た? ……うわ、本物ですね! すごい!」
ふぅ、なんとかごまかせた。
サイト、すまん。
帰宅直後に僕とサイトはお稽古に明け暮れるのであった。
その日のサイトは疲れすぎて快眠だったそうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます