第149話 狛の意外な弱点
「こいつ、
猫田が驚くのも無理はない。
ちなみに今、三人の前にいる個体は、通常の
「おおー、また大物が釣れたねぇ~。まさか、あの自来也の従えてた個体…ってことはないよね、流石に」
緊張感のない真の言葉は気にも留めず、
「おのれ、舐めた真似をしくさったのは、ぬしゃらどもか!?ようも儂の縄張りに、クチナワなんぞばら撒いてくれよったのう!許さんぞ!」
巨大で丸い蛙の瞳が、赤紫色に染まっている。どうやらかなりご立腹のようだ。横長の楕円形であるはずの瞳孔は、真一文字に絞られて相当な怒りを表現しているようだった。そんな
「クチナワって、蛇のこと?お父さん、なにしたの…?」
「いやぁ、この屋敷に来てから一度も、
「あるはずの、物?」
「ええい!儂を無視するでないわ、小童共がぁっ!」
「まぁまぁ、そう怒んなさんな。こんな大きな図体をして、あんなちっちゃい蛇を恐がって怒るなんて、可愛いもんじゃないの。そう悪い存在じゃないのかもねぇ」
煽るような物言いに、
「こ…殺すっっ!!」
「な、なにこれっ!?」
「ちぃっ!?」
咄嗟に猫田が巨大な猫に変化し、狛と真を咥えて距離を取る。さっきまで三人が立っていた場所には、大きな棍棒のようになった
「おお、あっぶない!いやいや、面白いなぁ。猫田クンもあの
「面白がって感心してる場合かよ、怒らせるだけ怒らせやがって…!どうすんだ?ここから」
「どうするってそりゃあね。俺達の仕事は退魔士なんだ、人に仇なす妖怪をどうするかなんて、答えは一つしかないよ。解るよね?狛」
「へ?あ、う、うん!」
猫田に咥えられているとはいえ、ずいぶんと久し振りに父に抱き締められて、狛は妙にソワソワしている。恥ずかしいような、でも、どこか嬉しいようなそんな気持ちのようである。
猫田が二人を地面に降ろすと、狛は気合を込めてイツを解き放ち、己の身に宿らせた。
「行くよっ!はあああああっ!!」
「おお、これが人狼化…狗神走狗の術か。ううーん、なるほどなるほど」
輝く尾と狼の耳を立てて、
真は興味深そうに変化した狛の動きを見つめていた。足の運びに身のこなし、そして、格闘の
「でやああああああぁっ!!」
飛び込みながらの強烈な右ストレートは、それを防いだ
「ぬぐっ!?なんという膂力…その姿といい、貴様、人間ではないのか!」
驚愕する
「ぐぉふ!げば?!ごぼぼぼぼっ!」
殴られる度に不気味な声を出す
もし仮に人狼化した狛が全力で人を殴れば、生身の人間の身体など一発で粉砕出来るだろう。文字通り、粉々にだ。しかし、
「このぉっ!!」
攻撃している狛もその異常さを感じているのだろう。渾身の力を込めて、更なる一撃を
「ごっ!ごっごごご!ごぉ、ゲェェェッ!」
今までで最も強烈な一撃を受けた
「ひっ!?い、いいいいいいい…!いやあああああああああああっっっっ!!」
もぞもぞと蠢くそれは、一つ一つが微量な妖気を放ち七色に輝くナメクジだったようだ。それを見てしまった狛の絶叫が荒野に木霊し、混沌とした戦場はより混迷を深めていくのであった。
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