第一章 27 「焦り」

「何?リア殿が戻って来ない?」

「ああ…日中に一人で買い物に行ったきりだ」

ルドルフの滞在する領事館の貴賓室で、アカリはルドルフにリアが帰らない事を相談していた。

時刻は既に夜の十一時を回っている。

「ふむ。ダンドルンは比較的治安が良いが、夜ともなれば女性が一人歩くにはやはり不安があるな」

そう言うとルドルフはそばに控えていた侍女に目配りをする。

「直ぐに捜索をさせよう」

「いいの?」

「構わんさ。お前の大切な友であろう。俺はお前に尽くすと決めたのだ」

ふっと笑うルドルフ。


- …愛が重いぞルドルフ様


「だが、アカリよ。お前はここに残れ」

「なぜ?」

「お前の事だ。直ぐに探しに行こうと思っているのだろうが、それは愚策だぞ?先ずは情報を待て」

言わんとしている事はアカリにも解る。

一週間程度滞在しているとはいえ、土地勘はないに等しい。アカリが動き回った所で非効率なのは確かだ。


- そんな事、頭じゃ解ってるんだよ…でもね…


ルドルフはアカリの考えている事を理解した上で、念を押す様に続ける。

「友を案ずる気持ちがお前を突き動かすのも解る。だが、だからこそだ。堪えよアカリ」

ルドルフのゴツゴツした手がアカリの頬を優しく触れた。

「‼︎」


- え⁉︎ちょ、ちょっとルドルフ様⁉︎


ルドルフの行動にアカリは顔を真っ赤に染める。

「お前は戦士だ。案ずるな、ここは帝国の属国だ。市中に張り巡らされた“眼”が必ずリア殿を見つけるさ。戦士の役目はその後であろう」

「…そ、そうだね」

完全に油断していたアカリは、そう一言頷くのがやっとだ。その様子にルドルフは「ふむ」と悪戯に笑う。

「お前もそういう表情をするのだな」

「…う、うっさいわ」

その夜はリアの心配とルドルフの行動によって、なかなか寝付けないアカリであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


次の話、キリが悪いので今回は短めです!

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